見出し画像

そのトレーニング、無意味かも? WEBデザイン初学者向け練習の罠

元WEBデザイナーが、noteで目にして気になった事をつらつらと書いていきます。今回はWEBデザイン初学者がやりがちな練習の無意味さについて語ります。職業訓練・スクールで学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。


お手本をなぞる、お手本ありきのクリエイティブは実戦で役に立つのか?

例えばバナーのトレース練習、「〇〇な表現をしたい」「〇〇といった目的のバナーを作りたい」だから、XXのバナーをトレースして△△を学ぶ、という明確な意図があれば良いですが、漫然とお手本をなぞるだけでは大した学習効果を得られないと筆者は考えます。これは「コーディング模写」も同様です。お手本を再現するのは「デザイナー」の仕事ではなく「オペレーター」の仕事です。

「引き出しを増やす」ために練習するのは大事ですが、引き出しからモノを取り出して使う、使い方を考えるのは自分の意志です。その「意志を養う事=表現力を高める事」も同時に行わなければ、どんなに引き出しを増やして物を詰め込んでも、使いこなせなければタンスの肥やしとなってしまいます。お手本をなぞる事ばかり繰り返していても意志=表現力が養われることはありません。

技術習得の練習をするのであれば、「トレース→課題にチャレンジ」ではなく、「課題にチャレンジ→不足していると思える技術、表現を学ぶためにトレース」の順序で練習すると、「漠然と模写する」機械的学習から「意図して技術・表現を学ぶ」能動的学習へとシフトできます。

クリエイティブの実際の仕事では、答えもお手本も用意されていません。実案件でそのような状況に直面しても行動できるように、ゼロ→イチの発想力、抽象的な概念・思考→具体的なカタチに落とし込む意志・能力を養う事を心がけましょう。


デザインの言語化練習の落とし穴

デザインの勉強の一環として、既存のクリエイティブを見て分析、言語化を行うという練習をしている人も多く見かけます。デザインの仕事においても、課題の分析と仮説の構築は重要ではあります。ただし、デザイナーの場合、それで終わってしまってはいけません。

既存のクリエイティブの分析→言語化はマーケッター、アナリスト、批評家の仕事であり、抽象的な思考、概念、構想を論理的に言語化→視覚化するのがデザイナーの仕事です。クリエイティブの練習をするなら、分析の結果を元に、自身の考えるカタチで再構成するところまで踏み込んでやるべきでしょう。

なお、デザインの言語化=デザイン的手法の分析と説明に終始している人も多いようですが、実案件でクライアントが欲するものは分析結果やデザイン技法説明ではなく、結果を出すためにどのような施策を立てるのか?どのような効果が見込まれるのか?についての提案と説明です。


職人デザイナーの時代はデジタル化で終わっている

かつて、デザインの現場は職人の手仕事に支えられていました。デザイナーも手先の器用さ、職人的な技術の修練が必要とされており、習得には長い時間と多大な労力を要していました。

現代ではそういった職人的技術はデジタル技術(DTP、3DCG、CAD等)に置き換えられ、習得も短期間で容易に行えるようになりました。デザインの現場では「職人的なデザイナーの仕事」はデジタル化によって終焉を迎えたわけです。(製造の現場ではまだまだ職人の手仕事は必要ですが。)

今後は生成AIの進化によって、「モノをつくる」ことはより簡単になっていくことが予想されます。デザイナーの仕事も「モノを作る事」から「意図し、設計し、判断する事」がより一層求められるようになるでしょう。


動機、意図、目的のない技術だけのモノづくりはデザインではない

「技術」とはそもそも「手段」であり、「目的」ではありません。日本人の悪癖とでもいうのか、「技術」が「目的」になってしまう人が多いようです。技術があってもそれを使う目的・意図がなければ「技を売るだけの職人」になってしまいます。それはもはや「デザイナー」ではありません。

デザインとは目的そのものの設定と、目的に沿って具体的なカタチに落とし込むまでのプロセスを設計、実行する事です。


「デザイン」を学びたいなら、WEB以外の領域を知るのも大事

「WEBデザイン」を学びたいからとネットにかじりつく、「WEBデザイン」しか知らない、見ようとしない人も結構います。ですが、そういった視野の狭い人は実際の仕事では役に立たない人が多い傾向にあります。逆に「デザイン」を学び、WEB以外の領域にも興味、関心を持っている人は、実案件で発生する課題への取り組み方、解決へ向けての発想に幅があり、柔軟に物事に対処できる傾向にあります。

デザインに対する学びは日常生活の中に常にあります。街を歩けば製品や広告、サービス等、デザインされたもので溢れています。そういったモノ、コトに対して意識を向け、「なぜ?」を考える事がデザインを学ぶことにつながります。


「意志」と「表現」と「手の仕事」を連動させよう

武道で言うところの心技体の一致と同じく、アート、デザインは作り手の意志と表現と技術が一致して初めてカタチになるのです。

技の追求も必要ですが、デジタル技術、AIの進化で技の価値、重要性は変わりつつあります。作る事の「動機」や「意志」といった、機械にとってかわられることのない、人間にしか務まらない部分を深めていきましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?