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「ただいま」SFショートショート

少年は考える。
宇宙は何から生まれたのか。
地球が始まる前にはビックバンがどう、とか言うが、宇宙の始まりはなんだったのか。

宇宙の始まりは「無」があったと言うが、「無がある」ということは、すでに「無というものが存在してしまう」という事になるのではないか。

しかし、それは現代の人々の持っている思考が形作っているだけで、本当に「無」だったのかもしれない。

しかし「無」からなぜ宇宙が…
少年は考えていた。

少年はこの謎を解くために考えた。
そして学んだ。

宇宙に関する書物を読み漁り、知識をつけた。知識をつければつけるほど、少年の中のある想いが大きくなっていった。

「宇宙に行かなければ、何もわからないのではないか」と。

少年はすぐさま行動に移した。
今までサボっていた勉強も集中して向き合い、
苦手だった運動もした。

宇宙飛行士になるためには、頭も、体力も、そして人格も良くなければならない。

少年は何度も心が折れそうになりながらも、折れなかった。

明くる日も勉強に励み、常に成績は上位。
たとえ風邪をひいてもトレーニングは欠かさず行う。
自分以外の全ての人に優しくして、ゴミも拾えるだけ拾ってきた。

そんな少年は、ついに宇宙飛行士になった。
もう少年ではなく、青年だった。


青年が待ちに待った宇宙がすぐそこにある。

次のロケットが、青年の乗るロケットだ。

青年は興奮していた。
ついに、ついに憧れ、そして永遠の悩みの種であった宇宙に行ける。

青年の乗るロケットが出発準備に入る。

各スイッチがオンにされ、目の前の画面にはさまざまな情報が交差している。

出発まで後3.2.1...

その時、空に空間が開いた。

まるでドアのように空が開く。


そこには大きな人がいた。

地球の人々は恐れたが、大きな男はお構いなしに言う。

「ただいま。やっと帰って来れたよ。元気にしてたかい?やっと僕たちと同じくらい成長したね。まぁ、ちっちゃいけど」

話し続ける大きな人を目の前に地球の人々は悟る。

人間は、いや、地球はこの空から現れた大きな人のペットだったらしい。

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