海をあげる 


(※途中作中の文の引用があります。)

上間陽子さんの「海をあげる」という本を読んだ。
図書館で表紙に惹かれ手に取った。借りたその一冊から、叫ぶような声と針金の上を歩いてるような痛みを感じた。

小説ではないと読み始めて2行ほどで気づいたので一旦、どんな本なのだろう…と思ってネットで調べてみた。

現役の書店員の投票によって選ばれるノンフィクション本の賞「Yahoo!ニュース 本屋大賞2021 ノンフィクション本大賞2021」に、上間陽子氏の『海をあげる』(筑摩書房)が選ばれた。全国の書店員による「これはなんとしても読んでほしい」という願いが込められた、納得の受賞だった。
ダ・ヴィンチweb

作者の上間陽子さんが沖縄に在住し、若年出産した女性たちへインタビューした言葉たちから自身の娘さんとのほっこりするエピソードから、沖縄が抱える問題などが分かりやすく、丁寧に書かれていた。

正直読み始めた瞬間から、ずっと心が痛かった。
元気がないとこれは読めないかもしれない…と思うほど残酷な世界も描かれていたし、目を背けていた問題にも触れていた。でもなぜか、ページを捲る手が止まらなかった。

個人的に、沖縄には2回ほど行ったことがある。
初めて行った時は高校の修学旅行だったが、修学旅行なだけあって沖縄の歴史について旅行中や事前に勉強する時間があった。ただ、高校生の頃の私は初めて飛行機に乗る高揚感や、行ったことない場所への想像を膨らませたり、とにかく“楽しいこと“だけに着目して、戦争の話や基地の話は二の次だった。
その後回しにしたツケが、今回自分の心に雪崩れる様に覆い被さってきた。

12個のエピソードが綴られている中で、1番印象に残ったのが「沖縄の基地問題」だ。

作中に

甘い甘いケーキは、基地の隣で育った私の子ども時代の味である。私のなじみとなった食べものに、基地との共存させられてきた時間は刻印されている
海をあげる

という一文がある。
子どもの頃の味がなじみになってしまった。ということは、それほど長く隣り合わせの生活が続いてるって意味を帯びていることを感じで、自分の知らない世界に強烈な痛みを感じた。

思わぬ形で読むこととなり、知らない内情に触れるたびに不意をつかれ動けず、その本と私が何か見えない物で縛られている様な、何より同じ日本でありながら沖縄という場所を全然知れていなかった自分に、綺麗な海で街並みが素敵でとしか思わず、いや、沖縄が直面している問題から目を背けようとしていた自分に心底腹が立った。

無知に近いレベルでの知識の私がこのタイミングでこの本に出会って、手に取った自分を褒めてやりたい。無知よりも知ろうとしないことのが残酷だ。

心には残る一冊の一方で、
この本の感想を深く述べれば述べるほどに、私なんかが知った気になって書いていいのだろうか…と思ったりもするし、何を言っても受け取り手の人はいい気持ちにならない人もいるのかな…とかは沖縄の人へ失礼なのかな…と思ったりもした。

何より読書感想文なんぞ、一生書けない!と思っていた自分がこの本読み終えたこの感覚を、何かに残しておきたかったし1人の人間として、頭の何処かにちゃんと置いておくべき話だと思った。(ので頭を捻くり回して書き上げてます)そして、この本を目にする方が1人でも増えたらとも思った。

ぜひこのタイトルの「海をあげる」の意味を回収して欲しい。

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