トランスフォーム
いきなり発言
「お母さん、女子の制服着てみようと思うねん」
いきなり次男が言い出した。
あんなに嫌だと言っていた女子の制服を着ようと言い出した8月最後の夜。
いったいどういう心境の変化があったのか。
結局女子の制服は着たものの、2年前のサイズの制服は今の彼には小さすぎたらしく入らなかったようだ。
そのあとは中学時代の男子制服を着て私に見せに来た。
「これはまだ、ぶかぶかやなぁー」
この制服は中3だったか、中2の終わりだったかにあつらえたものだ。
大きいサイズのものを作ったような。
改めて見るとまだまだはける。
そのあとはスカートが履きたいといい、私の着ているジェラピケの水色のネグリジェを着だした。
びっくりするくらい似合わない…。
元々女子のはずなのに、びっくりするほど似合わない。
いいのか悪いのか。
いや、いいも悪いもないんだろうが、とにかく似合わなかった。
心境の変化
最近、ピンクの服が着たいと言い出した。
今までは女子っぽい色は嫌だったのに、ピンクが着たいと言ったので、私は彼にピンクのラコステのポロシャツを買ってきた。
その前にはミュベールとコンバースがコラボしたデザインのイチゴ柄の靴が欲しいといっていた。
これは売り切れで買えなかったがまだ未練はあるようだ。
なぜこんな事を言い出したのか。
ここ数日で色んな心境の変化があったようだ。
自分の中でこれは男っぽい、女っぽいと思っているものがあった。それを極端に避けていた。
でもよく考えたら、男子でもピンクも着れば花柄も着る。スカートだって男子も着るデザインがある。
これは男っぽい、女っぽいと自分の中で勝手に決めていたのではないか。
女子男子の垣根をなくしたいと思っていた当事者である自分自身が一番こだわりと偏見を持っていたのではないかと思ったらしい。
男だから水色や青、女だからピンクや赤というのはおかしいと疑問に思いつつ、一番固執していたのは自分自身だ。
そんな話をしだした。
そこから今日、いきなりあんなに嫌がっていた女子の制服を着たり、私のネグリジェを着だしたりしたんだろう。
似合わん!と笑いながら着ていた次男。
もしかしたら儀式なのかもしれない。
一番の偏見を持っているのは当事者?
「当事者が一番偏見持ってるんちゃうかって思うねん。でもこれに気づくのは辛いことを経験してそれを乗り越えた状態の人でないと分からへんと思うねんな。」
そんな話をしていた昨日。
そして8月最後の夜である今日。
彼の中で8月は大きな節目の月になったのではないだろうか。
私はトランスジェンダーではないから、彼の心境はわからない。
でも毎日のように自分の思いを弾丸で語る彼をみていると色んな事を思い、感じ、考え、生きているんだと思う。
正直熱意がありすぎる次男の話を1時間ほど集中して聞くのはかなりの体力を消耗する。
私は途中四次元の世界に旅立ちながら、次男に声をかけられハッとし、現実に戻る。
こうやって日々私に自分の考えをアウトプットとアタマノセイリをしているのであろう。
忘れられない夜
8月最後の夜。
ここから次男の本格的な夏休みがはじまる。
今色んな事に興味がありすぎる次男。
宿題はなく夏休みの時間を満喫できるこの時期に、色んな社会を見てみたいらしい。
自分とは違う価値観や生活をしている人にインタビューをしたり街の見学に行き、視野を広げていきたい。
そんな話を今日もしてくれた。
高校生になっても毎日こんな語らいの時間がある事は、親としても嬉しいことだと思っている。
明日はいよいよ性転換に向けての病院の診察にいく。
本人がずっと希望していた事だ。
これから実際、工事をするのかしないのかはわからないが、事におよぶとしても一年はかかるようだ。
そして、どんな事があるのか起こるのか未知の世界だ。
次男が私のところに来なかったら決して経験しないし、想像も出来ない事だったと思う。
そんな意味でも私の視野を広げてくれた次男に感謝している。
2020年、8月最後の夜。
私にとっては忘れられない夜になりそうだ。
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