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with workという切り口で考えるこれからのライフスタイル

おはようございます!本日の投稿は、TCPアドベントカレンダーイベント対談企画、第二弾です!

WeWorkの頃から情報交換などをさせていただいていた立岩さん。不動産にもワークプレイスにもデザインにも造詣が深く、ライフスタイルとワークスタイルを切り分けずに、将来の場づくりや不動産のあり方についてお伺いしました。

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立岩宏章 Tateiwa Hiroaki
株式会社ツクルバ
不動産企画デザイン事業部 空間ソリューション部 部長

京都工芸繊維大学大学院を修了後、株式会社イリアにてオフィスの空間設計と、調査・研究業務に従事。2016年6月より株式会社ツクルバへ参画し、現在は不動産と建築を軸とした自社事業のマネジメントを行なっています。


ニューノーマルは「住まい」からやってくる

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ニューノーマルについて考えると、マクロな視点では日常の住まいのアップデートがまず先にあり、それに追随する形でオフィスが変わると考えています。リモートワークの本格化により自宅勤務が普通になった一方で、住宅の間取りは、まだそれに対応してるとはいえません。
これからは、住まいの3~4割近くがオフィスという間取りがあってよいと思います。例えば、ホワイトボードや昇降デスクが自宅に置かれ、キッチンとダイニングは家族や親しい友人との場であったものが、これからはパートナーやクライアントを交えた社交の場となったりと。
「働く」ということがライフスタイルの中に溶け込み、オンオフという言葉で分離せず、「with work」という考えが自分にはあります。


田舎出身の私からすると、都内って限られた居住空間ですよね。今後、書斎や応接エリアが必要となったときに、希望要件と投資できる面積が合わないんじゃないか…って感じてしまいます。

増える面積もあれば、減る面積もある、と考えています。物件購入が前提となりますが、内訳が変わるだけで、合計の面積は変わらなくても、ニューノーマルに合わせた住まいは十分に創る事が出来るのではと思います。リビングとダイニングは分けずに家具や仕切りの工夫で一つする事は昔からやってますし、これからでいうと「日中は応接スペース、夜はリビング」と兼用できる空間とすれば良いので。
この辺りは、「寝室さえ分離すれば如何様にも」といったテーマで弊社のnoteで書かせてもらいました。

一方で、住宅を手に入れる手段については、レガシーな部分がまだ多く残っています。例えば単身者は、浴槽が無いマンションは居住用途とはみなされず、購入しづらくなるのですが、現代では「浴槽は不要、シャワー室で十分」と思う単身者も多いはずです。「年収が予算に見合わない」や「旧耐震基準」といった理由以外にも様々な制約がある事が現状です。
中古物件は新築状態を100点とした減点方式でしか評価されない実情がありますので、例えば工事履歴をしっかり記録し、「リノベーションによって物件価値が向上した」と評価される様な仕組みがあって欲しいです。
住まいについては他にも色々と取り組むべきテーマが幾つもありますので、これからはオフィスに分野を限定せず、オフィスも住宅も人生を謳歌するメインステージと総合的に捉えて、色々な事を仕掛けていきたいと思っています。

ちなみに、弊社が運営する中古・リノベーション住宅の流通プラットフォームの「cowcamo(カウカモ)」では、これから「家を買うかも?」しれない方に寄り添い、厳選した中古リノベ物件を紹介したり、ライフステージに沿って住み替え(売却)をお手伝いするサービスを提供しています。ニューノーマルな働き方をサポートするには、オフィスだけではなく最も身近な自宅もアップデートが必要です。もしご興味がある方は、是非我々と一緒に理想の住まいを妄想させてもらえればと、この場をお借りして宣伝させて頂きます。笑


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場所を選択しながら働くことが当然に

話題を変え、オフィスについては、必要とする面積の総量は変わらないとは思いますが、賃借オフィスの執務スペースに必要な面積は減少し、代わりに自宅やサードプレイスに置き換わっていくだろうと考えています。
また、10年程前からコワーキングスペースが増え始め、今は都市部の至るところにあります。従来、コワーキングは、働き方の新しい形態として語られてきましたが、これからはカフェや公園のベンチと同じく働く場所の選択肢のひとつとして、当然のもののように認識されていくでしょう。

ツクルバさんは元々自由な働き方をされていた企業だと思いますが、今回のコロナ禍を経て、変わったことなどありましたか?

実は最近、本社リニューアルが完了しました。オフィスのアップデートはコロナ以前から行なっていたのですが、今回はwithコロナ時代へ向けて働き方を再定義する事が目的でした。具体的には、出社率を50%以下に抑え、使用面積を半分近く減らし、リモート会議用のブースを増設して機能面を強化しつつ、出社が必要な時に行く場所として何が必要か?を念頭に計画しています。詳細はリンクを御覧ください。


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最近の関心ごとは「企業文化」を育む場づくり

最近、企業文化と空間との関係に興味があります。
仕事に情熱を注いで大きな目標を成し遂げるという点において、共通の価値観を持ち、日々の行動の規範となるものが育まれることが重要なのは言うまでも有りません。
その企業文化は、オンラインでのコミュニケーションよりも、対面での雑談や交流、活動によって醸成されると実感しています。コロナ禍もありここ数ヶ月の間に便利なオンラインツールやサービスが充実してきましたが、趣味の活動や友達作りには相性が良いと思う一方で、特定の目的をもって長期的に何かを共に成し遂げる、という組織の性質においては、「目的」の共有や「長期的」な人間関係構築という点から、オンラインに置き換え難い部分がまだまだあるように思います。
働き方のデジタル化が進むと、オフィスに求めていた機能の殆どは代替されるとして、これからのオフィス空間が果たすべき役割は、企業文化の醸成がメインになってくるのではないか、と考えています。その時、執務や打合せのための面積は減り、人との寄り合いや心のゆとりを生む場になるだろうと。例えがイケてないですが、町のイケてる公民館のような場所へとオフィスは変わっていくでしょう。

私もコンサルティングを行なっている中で、オフィスの目的の変化がそちらに切り替わっていると感じます。人間関係の構築や帰属意識の醸成というのは、今まさに企業が求めている課題ですよね。

そうですね。もとよりミッション・ビジョン・バリューといったものを本気で作って浸透させている組織は、従業員の当事者意識や帰属意識が強いです。コロナ禍によって、出社が減り、従業員同士の接触機会が減った結果、「仲間と久しぶりに会えるだけで何か楽しい」というような声も見られることになりました。
感覚は分かる一方で、私は疑問を感じます。会おうと思えば会えるのに、誰かがアクションしないと会わないような状況になっているのです。オフィスは、「行け」と言われたから行くのではなく、良い仕事をしたいから自然と足を運ぶ場所であるべきではないでしょうか。
なのでやはり、町のイケてる公民館ですね。例えがイケてないですが。


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テクノロジーツールの導入とリテラシーの向上が課題

リモートミーティングは、議論やチームワークにも未だハードルがあるように感じます。トランシーバーのように相手の反応を待たないといけなかったり、ちょっとした表情の切り替わりを察知できなかったり、という支障はあります。リモートワークで、対面と遜色なくコミュニケーションを取るには、相当のレベルで人間関係が構築されているか、オンラインでのコミュニケーションやコラボレーションに長けている集団でないと難易度が高いでしょう。現状はやはり、対面の方が早いし、キャッチボールしやすいので「やっぱりオフラインがいいよね」と思う人が多いと思います。
それには企業ができる工夫もあります。以前は、ツールが変わっても人が変わらないと意味がない、と思っていましたが、今のテクノロジーツールはユーザビリティが高いものが多いです。例えば、打合せの際に、液晶タブレット上で何か書くと、全員にもその内容が共有される、といったことは特別なトレーニングや装置は不要で、簡単に導入が出来るようになりました。コロナの影響もあり、人生で初めてZOOMを使用した方は、今現在はリモートミーティングはごく普通に行なっているはずです。
ですので、「やっぱり対面じゃないとできないよね」と言われていることも、割とすぐに遠隔で出来るようになるのではと感じます。
また、リモートワークにおけるビジネスマナーや、常識といったものも未確定の部分が多いですよね。例えば、出社と在宅とを自由に選ぶことが可能な会社の場合、文字通り「在宅勤務をしてもいいし、出社してもいい」と思う人もいれば、「基本的には在宅で、どうしても必要な場合のみ出社する」もいれば、その逆の人もいます。
すると、例えば会議は、以前は参加人数と内容によってあまり深く考えずに会議室を予約すればよかったものが、今では内容によって自席で良いのか、個室にしないとマズイか、相手はその日在宅か出社しているのかといった変数が増え、これらはキチンとルール化しておかないと、「本当はセンシティブな相談をしたかったが、相手がオープンな場所にいるからやめておこう」といった事が起きてしまいます。

日本において新しい活動であるリモートワークには、適正なツールの導入とリテラシーのアップデートの優先順位が高いと思います。

おわりに

私は「余談が過ぎる」とよく社内で言われまして、今回もつい脱線しがちでしたので、なるべくお題に沿う様に後から整理をさせて頂きました。笑
住宅、不動産、ワークプレイス、オンラインコミュニケーションと、領域や視点を限定せずに話してみましたが、"with work"を軸に今後もオフィス業界を盛り上げていきたいです!