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海外で育つ子どもたち

「家の中では日本だけど、家の外に出たら、100%はわからないってどんな気持ち?」
幾度となく息子に尋ねてきた疑問である。
最初の反応は「は?」だったと思う。

子どもが小さいときから、周りの人が話していることがわからないとは、どんな気持ちなんだろう、と考えていた。
私はずっと不思議で、興味があった。
「私とは違う感覚を持って生きていくんだろうな」と漠然と思っていた。

それから数年経って、この子たちを「サードカルチャーキッズ(Third Culter Kids=TCK)」と呼ぶことを知った。

 第三文化の子ども(TCK)とは発達段階のかなりの年数を両親の属する文化圏の外で過ごした子どものことである。TCKはあらゆる文化と関係を結ぶが、どの文化も完全に自分のものではない。TCKの人生経験は彼らがかかわったそれぞれの文化から取り入れた要素で成り立っているが、彼らが帰属意識を覚えるのは同じような体験を持つ人々とのかかわりにおいてである。
デビット・C.ポロック、ルース=ヴァン・リーケン
『サードカルチャーキッズ 多文化の間で生きる子どもたち』,2010 p.34


私が知りたかったことはこれなんだ、と電撃が走った。

「帰国子女」という言葉もあるけれど、タイで生まれ育っている我が子たちにはなんとなくしっくりこなかった。帰国もなにも、日本に住んだことがないのだから。

それから、私は夢中になってサードカルチャーキッズを調べた。
情報は多くはなかった。
知れば知るほど、「なんという深い領域に興味を持ってしまったのだろう」と思った。

一文化一言語で育った私が、多文化多言語で育つ子どもたちを本当に理解できるのか、支えていけるのか。何かあったときに、頼ってもらえるのか、心配だった。
だからこそ、私は知らなければいけなかった。
それからは、勉強の機会を探した。
こちらもまた、そんなに多くはなかった。

そんな中で、ドイツ在住のリヒター恵子さんのFacebookのコミュニティ、 TCK親のグローバルコミュニティに出会った。当時コミュニティは立ち上がったばかりで、すぐに入れてもらった。
定期的に行われる交流会や勉強会で、世界中のTCKを育てる親たちと出会うことができた。

コミュニティのタイ部としてお手伝いもさせてもらった。

それから、恵子さんのコミュニティを通して、一般社団法人 育ちネット多文化CROSSの初田美紀子先生による「年齢別TCK講座」で勉強した。

今は、初田先生の「TCK Podcast」でナビゲーターを努めさせていただいている。


この数年、私の頭の中はサードカルチャーキッズでいっぱいである。
ただ漠然と不安を抱いていた頃より、夢中になって勉強して知ったことで、たくさんのお守りのような知識を得ることができた。
いつでも頭の中はTCKでいっぱいだから、子どもたちの発言や行動をTCKを育てる母として、気づいたり感じたりすることができる。

サードカルチャーキッズについて知っていたら、多感な時期に海外で過ごす、という貴重な経験に寄り添い、効果的に過ごすことができるのではないか。
何か不安があった時には、知識がお守りのような存在になるのではないか。
「サードカルチャーキッズについて、親は知らなかった」と悲しそうに言うTCKがいなくなるのではないか。


海外で生活する親にもっと知ってほしい、
サードカルチャーキッズのこと。
大きな可能性を秘めた、大切な子どもたちのこと。


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