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女性に対する暴力をなくそう!

殴られた傷

11月25日は女性に対する暴力撤廃の国際デーです。オレンジ・ザ・ワールドは、国連事務総長の「Unite to end violence against women」(団結し女性への暴力を終わりにしよう)の一環で、暴力根絶への行動と啓発を促すため『オレンジを身に着けよう』というキャンペーンです(11月25日から世界人権デーまでの16日間)。

女性に対する暴力、と聞くと、みなさんはどんなことが思い浮かぶでしょうか。レイプ、DV、痴漢、ハラスメント、などでしょうか。

世界にはまだこんな慣習が・・・

児童婚アフガン

電車の広告で「13歳で結婚、14歳で出産。恋はまだ知らない」というコピーを見たことはありませんか。国の慣習などによりいまだに続く児童婚です。今も世界で毎日3万3000件報告されています(世界人口白書2020より)。そしてUNICEF(国連児童基金)によると、約7億5000万人の女の子が18歳未満で結婚し、うち3人に1人以上(約2億5000万人)が15歳未満で結婚しているそうです。

FGM刃

※写真はFGMで使用された刃

そしてFGM=女性性器切除。医療目的以外で性器の一部もしくは全体を切除したり、その他の損傷を与えたりすることで、今も2億人がその被害を受けています(世界人口白書2020より)。主に結婚時に処女だと証明するため、また女性が性的な快楽を得られないようにするため、写真のような刃で、幼少期から15歳くらいまでの女の子が麻酔もないまま、”施術”されます。FGMを受けるとひどい生理痛に悩まされたり性交のときに激痛を伴ったりするそうです。命を奪うこともありうるこの慣習は、法律で禁止する国も多い中、スーダンやエチオピアなどアフリカや中東の国々で水面下で残っています。

男児選好、というのもあります。これは日本でも昔は普通の考え方だったかもしれません。一部の国で続くこの慣習により、強制中絶のほか、女の子を出産した女性を追い出したり、生まれてきた女の子に教育を受けさせなかったり十分な栄養を与えなかったり、という実態があるそうです。また、男児選好が広がったことで、国によっては人口の男女比がゆがむといった結果につながっています。

こういった慣習をなくそうという努力は進んでいるものの、ここでも新型コロナウイルスが影を落としています。たとえば、FGM予防プログラムは本来より2年遅れると、今後10年のうちに避けられたはずのFGMが200万件生じるとUNFPA(国連人口基金)は試算しています。児童婚に関しても、撲滅プログラムの1年遅れや、コロナによる経済の低迷など、コロナの影響で2030年までに増えると推計される児童婚は1300万件にのぼると見込まれています。日本の人口で言うと10人に1人以上の計算です。

日本の「性暴力」の現状は

内閣府の男女共同参画局によると平成29年度の調査(20歳以上の男女、有効回答3,376人)では、日本国内で20人に1人(4.9%)が、さらに女性だけでいうと13人に1人(7.8%)が、「無理やり(暴力や脅迫を用いられたものに限らず)性交等をされた」と答えました。もちろん男性の被害者もありますが、ここでは女性への暴力について書きたいと思います。

性被害を受けたら

被害にあった人のうち、女性は6割以上、男性は4割が「だれにも相談しなかった」そうです。被害を受けた人のための「ワンストップ支援センターは各都道府県に設置されています。全国共通の短縮ダイヤル「#8891」(はやくワンストップ)で最寄りの支援センターにつながります。相談のほか、産婦人科や警察への同行、精神科医や弁護士などの紹介といった支援を受けられます。また、電話や対面での相談を避けたい人のために、チャットによる相談も一部のセンターで始まっています。

コロナ禍で増える性被害相談

橋本聖子男女共同参画担当相は11月6日、性暴力に関する全国のワンストップ支援センターに寄せられた相談件数が、4~9月に前年同期比15.5%増の2万3050件にのぼったと明らかにしました。背景にあるのは新型コロナの感染拡大による外出自粛。マッチングアプリやSNSなどを利用して、そこで出会った相手から被害を受けたケースなどがあるということです。

オンライン・ハラスメントの脅威

オンライン・ハラスメントとは、インターネットやモバイルテクノロジーを利用して、ストーキング(付きまとい)、いじめ、ハラスメント、名誉棄損、ヘイトスピーチ、搾取、迷惑行為のことなどを言います。プラン・インターナショナルのユースグループが15歳から24歳を対象に行った調査では、「侮辱的で虐待的な言葉」「セクハラ」を受けたという回答がそれぞれ6割以上だったということです。また頻繁に被害を受けると答えた人も約5割でした。オンライン・ハラスメントを受けたことがある人からは「被害を受けたあとはコメントやツイッターのリプ欄を見るのが怖くなった」といった声が上がるなど、被害者は精神的ストレスを受けます。そして被害者のための対策が少ないのが現状です。仮に、ハラスメントを受けたり、自分の載せられたくない写真が自分以外の誰かによってSNSに投稿されたりして、”通報”ボタンを押したとしても、SNSの運営会社から返信が来るのは遅く、その返答の多くは「規約に違反していません」という対応だと言い、「被害者に寄り添う対応を」とプラン・インターナショナル側は提言しています。特に若い世代にとってSNSは簡単に他人とつながることができる、切っても切れない存在です。世の中が便利になり、いろんな人とシェアできる一方で、オンラインでの目に見えない被害も増えています。クリックひとつ、Enterひとつでだれかを傷つけることがあるのです。

報道局デジタル編集部 遠藤弥生

FGMのくだりは書きながら、心がえぐられる思いがしました。世界では弱い立場の人たちが暴力を受け、搾取されています。そして新型コロナウイルスの感染拡大で状況は悪化しています。日本でも日々、暴力を受けている人がたくさんいます。女性への暴力撤廃デー啓発のためのキャンペーン「オレンジ・ザ・ワールド」は終わりましたが、私たち個人個人が他人事だと思わずに、現状を知ろうとすること、暴力のない未来について考えること、心に留めておく意識を持つことが撤廃への第一歩になるのかもしれません。

※上記イベントは、主催のUNFPAプランインターナショナルのHPでも  詳しく報告されています。ぜひご覧ください。