読書記録【オリックスはなぜ優勝できたのか】

こんにちは。初めまして。
読書日記として、今更ながらノートを始めさせていただきました。

記念すべき1冊目は、、
「オリックスはなぜ優勝できたのか」(喜瀬雅紀、光文社新書)
パリーグ2連覇を成し遂げ、今季は26年ぶりの日本一を達成したオリックス。
かくいう私も中学生ぐらいからオリックスファン。
今季現役引退をした坂口智隆選手のファンになったところから
オリックスを見ていました。

かっこいい選手はいる。カリスマ性のあるエースも、野手もいる。
なのに勝ちきれない。
華やかなプロ野球にぽつんと灰色なチームがあるのが逆に魅力的でした。

かつてのエース金子千尋がいなくなっても、山岡・山本などタイトルを取る選手も出てきた。吉田正尚も圧倒的なバッティングでタイトルホルダーになっていた。
でも勝てない。
明らかに輝く選手が常にいるのに勝てない。

そんなもどかしい時代を乗り越えて遂に達成した2連覇と日本一。
そこに至るまでの歴史と要因を
仰木監督時代の日本一から歴史を遡りつつ、豊富な取材から紐解いているのが、
「オリックスはなぜ優勝できたのか」という本です。

ただその要因を探って、「すごい!」となるような本ではなく、
歴史を紡ぎ、その歴史の中で原因を探り変革を表現しようと努力する。
そんな奮闘と哀愁の歴史の中から優勝の要因を探っている本だと感じました。

以下、個人的なハイライトを書き殴りたいと思います。
素人の意見も含まれているので、暖かい目で読んでいただけると幸いです。

①2連覇の要因

データの徹底活用・育成中心のドラフト・施設の充実。
要素としてはこの簡単な言葉に収束してしまう。
この端的な言葉の裏に存在した立役者たちがいかに奮闘したのか、
その道筋が本書には記されている。

印象的だったのは、チームの年齢編成の方程式。
選手の年齢を、
「18-20」「21-24」「25-28」「29-31」「32-」
このように分けた時、勝つチームの編成は「25-28」のボリュームが大きい。
これが1つの方程式とのことだった。
暗黒期のオリックスは「29-31」「32-」のボリュームが大きく、
ドラフトも即戦力の「25-28」を取ることが多かった。
そうすると、どうしてもオリックスというチームの考え方やカラーが
引き継がれず、チームとして一体感のないチームになってしまう。

この「負のスパイラル」に歯止めをかけ、ベテランから若手、若手からルーキーに
伝統や考え方を伝える「勝のスパイラル」を作るべく、
「育成中心」という目標を掲げてスカウト陣が奮闘する様子が記録されている。

②避けては通れない球団合併と暗黒時代

「オリックス」という球団を語る上で避けて通れないのが、
近鉄との球団合併だろう。
子供の頃はなんとなくニュースを見ていただけだったが、
本書を読んでそれが選手にとっていかに重大なことだったかというのが伺えた。

本書には、オリックス側からの視点だけでなく、近鉄からの視点も多く絡めて記述されている。当時の近鉄監督・梨田昌孝氏の視点から、近鉄における哀愁と思い入れが伝わってくる。
梨田氏は解説の際オリックスのことを決して「バファローズ」とは言わない。
それは彼にとって「バファローズ」は「近鉄」のことだからだ。
「球団合併」という荒波に飲み込まれた人々が当時のことをどう感じたのか、
様々な観点から色濃く表現されているのが印象的だった。

もう1つ。
そこから始まった「オリックス」の長き暗黒時代。
球団合併、仰木監督の死。
様々な要素が絡まってオリックスは「暗黒時代」と呼ばれる時代に突入していく。
岡田彰布監督と森脇浩二監督。
2人がどのようにオリックスを立て直そうとしたのか。
岡田氏は厳しく頭で考えさせる野球。森脇氏は機動力を中心にした野球。
この取り組みがなぜ志なかばで崩れ、2人がシーズン途中で事実上
解任となってしまったのか。
選手・フロント・オーナー。様々な考えが絡まって、ほどけない。
そんなオリックスの暗黒時代が悲哀とともに伝わってくる。

③「終章T-岡田」

本書には優勝のキーパーソン(21年シーズン時)についても言及されている。
山本・吉田・宗・杉本・紅林。
そんな選手の最後、この本の最後の章として「T-岡田」に関して記されている。

私はここに筆者のオリックスに対する思いが表現されていると感じた。
「オリックス・バファローズ」が誕生してからの生え抜き選手。
本塁打王としての栄冠と不調。それに伴う「暗黒期」という時間軸。
オリックスという今のチームで栄冠と苦悩を最も語れる選手。
それががT-岡田という選手なのではないか。

2014年CSのホームランと2021年9月30日ロッテ戦の9回の逆転3ラン。
ファンの記憶には光り輝く彼が確実に記憶されている。
どんなに打てなくても、次のスター選手が出てきても
「オリックス・バファローズ」というチームは彼のチームなのではないか。

そのような気持ちが「終章 T-岡田」という部分に表現されているのではないか。

④まとめ

野球が好きな人はもちろん、組織を変えるにはどうすればいいかという視点で見ればビジネス書にもなるかと思いました。
様々な野球人が出てきて歴史を語ってもいますので、
大河ドラマのような重厚感もあると思います。

ぜひ気になった方は読んでいただき、感想を共有できたら嬉しいです。



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