道を究めること(芸術とコンサル)

最近、とある劇を見た。昔、よくテレビで見かけていた女優さん(今では相当ご高齢)が主演の、生と死を考えさせる劇だった。観劇は久しぶりで、そもそもコロナ禍になってから、生の人間のパフォーマンスを観る・聞くこともなかったが、役者さんたちを見て、この人たちはプロであり、演劇が好きなんだな、だと思った。
演劇と言えば、この方のNoteが注目されている。この方も、若い時に演劇を見てそれに命を救われ、制作というかたちで演劇界に入った。構造的に儲かりにくく、やりがいが搾取されるあまりにもブラックな世界がコロナ禍でとどめを刺されかけている。ブラックなだけでなく、道を真摯に究めようとする人と、そうでない人(親のコネ・アイドルを使った金儲け等々)、両方がいる。必ずしも道を真摯に究めようとする人が報われる訳ではない。
https://note.com/uzune

どの世界にも、道を究める人はいる。この方もその一人であり、ジャズ界でそのような真摯さに欠ける人たちのyoutube動画が初心者向けにまかり通っていることに危機感を持たれている。「演奏するためには歴史を知らないといけない(He knows the historyみたいなふうにいう)」、「プロは聞いたら5秒でその音楽が歴史を踏まえているか否以下が分かる」「ジャズとクラシックは何が違うのか、という問いは、日本とアメリカは何が違うのか、という問いと同じく愚問」、「うまくなる方法は名演奏家の耳コピ」、「演奏家として演奏できないと教えられない」など、道を究めようとしてらっしゃる非常に真摯な方だと思う。
https://www.youtube.com/channel/UCHtIPPczIPeXnuaY4w46kLg

私も、ジャズはまったく詳しくなく、学生の時にアマチュアのオーケストラを(才能がないながらそこそこ真面目に)やってクラシックを少し知っている程度だが(アマチュアでもマニアは本当にマニアであり、その人たちほどマニアではない)、それでも、
・バッハの音楽が如何に完璧な構成であり(平均律のプレリュードの1番は世界の事象が最も凝縮して完成された箱庭・ミニチュアのような音楽だと思う)
・モーツァルトの音楽があれほど流麗でシンプルに聞こえるのに、如何にインスピレーションが爆発しているか・複雑であるか・天国的であるか(ピアノ協奏曲27番の1楽章の展開部とか2楽章とか、ジュピターとか)
・ベートーヴェンのような革新的な人間がこの世にいたのか(エロイカの第一楽章の展開部の革新性・やってやろう・やってやった感は異常、他の楽章もですけど)、深い悲しみと孤独を昇華させる巨大な精神を持った人間がこの世の中に存在したのか(ミサ・ソレムニスは、人類の最高到達地点だと思っている、第九よりぶっ飛んでいる)
みたいなふうに、芸術に人生観(人生も?)を変えられてきた。それぞれ、一言で「誰々の音楽は」と書くのもおこがましいのですけど。

なので、「道を究めようとしている人」たちにリスペクトを持っているし、それを装って適当にお金稼ぎをする人たちには、普通の人以上には敵意を持つ。ちなみに、ジャズのことはわからないが、諸々見ていると、この人はヤバいらしい ↓
https://www.youtube.com/channel/UC9Avo0LAnwU0ZF05fWdoR7g


今、私はコンサルタントの端くれである。プロとは何かとよく問われるし、よく考えざるを得ない環境である。そういえば、世の中には「問題解決スキル」、「プログラミング」等々、スキルへの偏重がある。私自身も山のようにその手の本を読んだ。しかし、自分も昔やっていた音楽を通じて、「道を究める」、そのために正しいアプローチをする、ということが、結局正しいと思った。
楽器がうまくなるアプローチは、音楽を愛して感動し、謙虚に、既に実証されたアプローチ(基礎練習・PDCA)を行い、他の人の技も盗む、ということ。守・破・離。
コンサルタントも同じ。クライアントに対して価値を出すことを使命、喜びとし、謙虚に、既に実証されたアプローチ(思考への集中、論点思考・仮説思考、構造化の正確性・センス・スピード、相手の頭に合わせたコミュニケーション、鳥・虫の目の使い分け、これらを高速で回すPDCAサイクル)を行い、他の人の技も盗む。

もちろん、世の中デジタルだったり専門分化だったりするので、そちらもちゃんと見ていかないといけないですが、「道を究める」、と思うと、コンサルティングのスキル向上も楽しくなってくるので、そういうふうに考えよう。

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