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ふるさと納税、年間寄付総額1兆円超へ/今こそ考えたい「寄付金の使われ方」

こんにちは。トラストバンク地域創生エバンジェリストの藤井です。

例年7月末から8月初旬ごろに、総務省から前年度のふるさと納税寄付総額などの実績が公表されますが、2023年度は、ふるさと納税の年間寄付総額が1兆円を超え、過去最多となることが見込まれています

制度が開始した2008年度当初は、ふるさと納税の年間寄付総額は約80億円。それが16年が経ち1兆円という規模にまで拡大したということは、多くの方がふるさと納税を利用し、自分のふるさとやお世話になった地域だけでなく、これまでは知らなかった新しい地域と出会い、そうした地域と少なからず接点が生まれているということでもあると思います。

そして、各自治体においては、財政状況が厳しいなかでふるさと納税による寄付金は非常に重要な財源となっています。

「1兆円」という大きな金額に注目が集まりがちですが、ふるさと納税の本質はそこではなく「寄付金がどう活用されるか」ではないでしょうか。
ということで、今回はふるさと納税の「寄付金の使い道」をテーマに書いてみたいと思います。


自治体の財源とは?「ふるさと納税による寄付金」の重要性

そもそも、ふるさと納税による寄付金は、自治体にとってどのようなものなのでしょうか。まずは自治体の財源の仕組みについて認識しておきましょう。

自治体の財源は、以下の2つに分類できます。

<地方自治体の財源>

■自主財源
・地方自治体が自ら調達できる収入
・主な例: 寄付金、地方税、使用料、手数料など

■依存財源
・国や都道府県から交付される収入
・主な例:地方交付税、国庫支出金、都道府県支出金など

自主財源の「地方税」は自由に使うことができる収入として自治体財政の中心ですが、市町村における地方税の割合は全体のうち約3割(出典:総務省公開「令和6年版 地方財政白書」)。人口や企業が少ない自治体は地方税が減少し、自主財源の確保が厳しくなっています。
そこで、ふるさと納税による寄付金の重要性が高まっているのです。

また、地方自治体の財源は、”使途”による分類もできます。

<地方自治体の財源(使途による分類)>

■一般財源
・使途が特定されていない財源
・自治体が自由に使途を決定できる
・例:地方税(ほとんどの税目)、地方交付税、地方譲与税など

■特定財源
・使途が特定されている財源
・法令等によって使い道が制限されている
・例:国庫支出金、使用料・手数料、一部の地方税(目的税)など

なお、ふるさと納税の寄付金をどちらに入れるかは自治体によって異なります。
例えば一般財源に入れる場合は、自由に使途が決められるためその時々で必要な事業に充当することができます。
一方、特定財源に入れる場合は、基金を設けてふるさと納税の寄付金を特定の事業に使う、と明確にしている自治体もあります。

一概にどちらが良い・悪いということは言い難いですが、いずれも「ふるさと納税でいただいた寄付金をこのような事業のために使った」という使い道を具体的に示し、寄付者や住民に報告をするということが大事だと考えています。

寄付金の有効活用事例3選

ふるさと納税でいただいた寄付金を有効に活用している自治体事例を3つご紹介します。

①福井県坂井市:使い道から市民の意思を尊重!「寄附市民参画制度」

福井県坂井市では「寄付金の使い道を市民から募り、その決定にまで市民の意思を取り入れる」という、全国で唯一の取り組み「 寄附市民参画制度」を行っています。
条例に規定された政策メニューに対して市民から具体的な事業を公募し、寄付市民参画基金検討委員会により事業を決定。その後、寄付を募り基金として積み立て、目標額に達したところから事業化されます。

この制度によって、これまで「三国花火大会元気玉事業」や「子ども自然体験促進事業」、「農業用機械自動運転実践事業」など様々な取り組みに寄付金が活用されています。

三国花火大会 元気玉事業 イメージ(出典:ふるさとチョイス

②島根県海士町:海士町の未来に繋がる事業への投資!「未来共創基金」

島根県海士町は、島根半島沖に浮かぶ人口2200人の小さな島です。人口減少、少子高齢化など地方課題が山積の中、島の持続可能な未来を実現するため、島の未来を支える産業を支援・育成する「未来共創基金」を設立しました。この基金の原資としてふるさと納税が活用されています。

「海士町の未来につながること」「下限500万円以上」という条件を満たす事業を公募し、審査を経て事業が採択されます。これまで「海の魅力と安心をつなぐマリンサービス事業」「近くで作って近くで飲む牛乳生産事業」「島のビールで乾杯を!田んぼと海を活かしたクラフトビール醸造事業」などが採択されました。

③神奈川県鎌倉市:具体的なプロジェクトを発足し寄付を募る「鎌倉スクールコラボファンド」

「鎌倉スクールコラボファンド」はSDGs等リアルな社会課題に基づくプロジェクト型学習や、魅力的な人材・最新テクノロジーを活用した「ワクワクする教育活動」を支援する取り組みです。リアルな社会課題を発見する力、コトを起こす力、プログラミング的思考力等、これからの未来に必要な力を得るため、大学やNPO、教育ベンチャー等の外部機関とコラボレーションする資金をガバメントクラウドファンディング®(GCF®)を活用して寄付を募り、2020年度から現在まで全4回実施、累計約2600万円の寄付が集まっています。

鎌倉スクールコラボファンド イメージ(出典:ふるさとチョイス

寄付者にとっての「使い道を選ぶこと」の意義 自治体からの発信にも注目


ふるさと納税は寄付申込をする際に、自治体が用意している使い道項目の中から「この事業に寄付金を使ってほしい」と寄付者が選択できるようになっています。これは、国の制度で唯一、税金の使い道を指定できるということであり、ふるさと納税の特徴でもあります。

では、ふるさと納税を利用する寄付者にとって「使い道を選ぶこと」の意義は何なのでしょうか。

私は「応援したいと思ったときに自治体を直接支援できる」ということではないかと思います。例えば、災害が発生して「何か力になれないか」と感じたとき、旅行で行った地域の自然の豊かさに感動して「守り続けてほしい」と感じたとき。そんなときに、ふるさと納税はインターネット上で気軽に申込・決済ができ、離れている地域にも迅速に、直接支援をすることできます。

また、先ほどご紹介した神奈川県鎌倉市の「鎌倉スクールコラボファンド」のように、ふるさと納税の寄付金の「使い道」をより具体的にプロジェクト化して寄付を募るガバメントクラウドファンディング®を行っている自治体もあります。

ふるさと納税というと、地域の魅力的な特産品に目がいってしまいがちですが、ふるさと納税は自治体への寄付であること、そしてそのお金を何に使ってほしいのかという意思表示ができるということは、寄付者の方々にぜひ認識してほしいなと思います。

とはいえ、なかなか最初から寄付金の使い道を意識し、意義を感じるということは難しいかもしれません。
トラストバンクが運営する「ふるさとチョイス」では、ふるさと納税の一連の体験をする中でふるさと納税が寄付であるということや、自治体の取り組みや想いを知っていただけるように様々な工夫や取り組みを行っています。(例:ふるさと納税による地域の変化・取り組みを表彰する「ふるさとチョイスAWARD」)
また、寄付をした自治体から寄付金活用に関する報告書やメールでのお知らせが届くこともあります。そうした情報を受け取ったら「どんなことに使われているんだろう」と少し興味を持って見ていただくと、これまでよりも地域を身近に感じ、「使い道を選ぶこと」の意義を感じられるのではないかなと思います。
ふるさと納税の良さは、お礼の品をもらう楽しさももちろんありますが、それだけでなく「自分の寄付が地域のために役立っている」という貢献感を感じられる点もあるのではないでしょうか。

おわりに

2008年にふるさと納税制度が始まってから約16年が経ち、ふるさと納税によって5兆円を超える寄付金が地域に循環しています。そして、各自治体ではふるさと納税の寄付金によって、様々な事業や新たなチャレンジが生まれているのです。

ふるさと納税には総務省が掲げている理念があります。そこには以下のように記載されています。

自治体は納税者の「志」に応えられる施策の向上を。
一方で、納税者は地方行政への関心と参加意識を高める。
いわば、自治体と納税者の両者が共に高め合う関係です。
一人ひとりの貢献が地方を変え、そしてより良い未来をつくる。
全国の様々な地域に活力が生まれることを期待しています。

総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税の理念」より

ふるさと納税によって、自治体は寄付者や住民に誇れる施策を行うこと、寄付者は寄付金の使い道を認識しまちづくりへの意識を高めることが記載されています。こうした関係性を築いていけると、ふるさと納税によって日本全体が変わっていくことにつながると思います。

2023年度の寄付金額が1兆円を超えると言われ、年々注目が集まっているふるさと納税。集まった寄付で何が実現したのかという「寄付金の使い道」に目を向ける方が増え、ふるさと納税が健全な形で今後も発展していくことを願っています。


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