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スリラーだと思って見たら変化球ホラーだった『ハウス・ジャック・ビルト』の話


見ました。ハウス・ジャック・ビルト。

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カンヌ国際映画祭で途中退場された方が続出したという噂を聞き、上映期間中に観に行く勇気が出なかった筆者です。

先日AmazonプライムでR18+ノーカット版が配信されたことを知り、意を決して観ることにしました。
ちなみに、アメリカでは修正版のみ正式な上映が許可されています。日本は寛大だなぁ…


この映画の観賞後、本作の監督が「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と同じ監督だったと知って妙に「あー……」と納得しました。どの部分が納得に至ったかは後ほどの記述でご理解いただけると思います。

では、感想と自分なりの考察を書き記していきますので是非最後までお付き合い頂けたら幸いです。
また、本記事にはネタバレを含みますのでご注意下さい。


概要

以下、大まかなあらすじです。


舞台は、1970年代のアメリカ・ワシントン州。

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主人公のジャックは、建築家になる夢を持った技師。強迫性障害を患いながら独りで暮らしています。

思うように理想の家を建てることが出来ないジャックは、ひょんな出来事から殺人に手を染めてしまいます

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直後は猛烈な焦燥感に苛まれながらも、彼は死体を隠蔽し、また殺人を繰り返してしまいます。
そして殺人をしている間は強迫性障害が落ち着いていることを実感するのです。

殺人を正当化し、次第に残虐な手口へとエスカレートしていくジャック。この映画は、彼の12年間にわたる殺人の独白となっています。


この映画の好きなところ①「不気味な絵画を見ているような陶酔感」

筆者が好きなスリラー・ホラー映画のなかに「サスペリア」(2018)や「ミッドサマー」(2019)があるのですが、本作を含めてこれらには近代美術の画家のような思想があると感じました。

近代美術とは…
過去の伝統と距離を置き、実験的な精神で作り上げる美術の概念のこと。
※ 多くは、19世紀後半第二次大戦頃までの美術を指す。

言い換えると、題材となるものを斬新かつ実験的に作られた美術作品だということです。

赤いローブ

ただひたすらにグロいわけではなく、随所に絵画のようなワンシーンが散りばめられています。そのため「おぞましい…」と嫌悪を感じた数分後には「美しい…」と思わされて、精神がグチャグチャにされること請け合いです。


この映画の好きなところ②「ホラー映画に不釣り合いな明るい選曲」

2019年に上映された「アナベル 資料博物館」や「ハッピーボイス・キラー」(2014)なんかもそうなんですが、グロテスクだったりショッキングであるはずの場面で過去に流行した名曲をBGMにする演出が好きなんですが、本作にもそういったセンスが見えました。

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※画像は「ハッピーボイス・キラー」のワンシーン

明るい雰囲気の曲を流してミスマッチにすることが狙いかというとそうではなくて、曲の歌詞を知ると見事シーンと合っていることが分かります。
こういう気付きって、英語に疎い人間(筆者もその一人)ほど後から知った時に電流走ると思っているので楽しいです。

電流走る1


この映画の好きなところ③「人為的なカメラワーク」

ダンサー・イン・ザ・ダーク」を見た時にも思ったのですが、時折POVのように”人が撮っている”と露骨に分かる手ブレやズームがあります。
まるで、一人の殺人鬼のドキュメンタリーを見ているような感覚に陥りました。走る姿を追いかけるシーンなんてPOVそのものです。

このカメラワークのおかげで間が長く感じられたのも事実ですが、「絵画的な美しさ」の裏で「処罰されるべき犯罪」が為されている生々しさを捉えることが出来ました。

鏡の近く

彼は間違いなく処刑されるべき人間で、「美しいシリアルキラー」のような言葉で呼称してはいけない。


「ジョーカー」(2019)とは決定的に違う部分

本作は、2019年に上映された「ジョーカー」と似た部分もあると感じました。
主人公は社会的に孤立しており、精神病を抱えている男(そしてハンサム)。
目標はあるけれども、自らの現状からは程遠い理想像であることに悩み、いつしか犯罪に手を染め、自分なりの美学で正当化していきます。

ジョーカー

2作とも芸術的なシーンが心に残りますが、「ハウス・ジャック・ビルト」では「悪趣味!」「不謹慎!」と指摘したくなるようなブラックジョークがいくつも隠れているのです。
これには好き嫌いが分かれそうですし、「??」とスルーしてしまいそうな方もいそうですが、好きな方には刺さるはずです。ぜひ実際に見て確かめていただきたいです。


記事は以上になります。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

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