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納税者の反乱

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こんにちわこんばんわ。
全ての増税に反対し、全ての減税に賛成する自由人、七篠ひとり(@w4rZ1NTzltBKRwQ)です。

今日のお話は

Tax Revolt

についてです。

「Tax Revolt」とは

納税者の反乱

という意味で、かつてアメリカのカリフォルニア州で起こった

固定資産税の減税運動

のことを指します。

カリフォルニア州では日本とは違い、有権者が直接州法を提案できる「直接民主制」の制度があります。

簡単に説明すると、前回の州知事選挙の総投票数の5%以上の署名を集めれば住民が立案した新規法案や法改正案が提出でき、その賛否を問う住民投票が行えるというものです。

1900年代から採用されているこの制度による住民投票は非常に強い権限を持っていて、法案が住民投票により賛成多数で可決されれば、知事や議会が反対しようが州法に書き込まれ即座に施行されます。

実際にそれが起こったのが「Tax Revolt(納税者の反乱)」というわけです。

ではその経緯をざっくりですが見てみましょう。

話は1970年代まで遡ります。

当時のアメリカはウォーターゲート事件やベトナム戦争があり、国民の政治不信が非常に高まっていました。

またカリフォルニアは高いインフレに襲われていて地価や住宅建築費が高騰。

その影響で固定資産税も右肩上がりで上昇するなどし、住民の不満は溜まる一方でした。

もちろんそれらのことは州議会でも問題視されていて減税も提案されますが、ああでもないこうでもないと議論をするだけで結論が先延ばしされるだけの状態でした。

そういった背景のなか、カリフォルニア州では固定資産税の減税を求めた住民運動が生まれていきます。

それが

「Tax Revolt(納税者の反乱)」

です。

1974年にハワード・ジャービスとポール・ギャンが固定資産減税を住民投票に掛けるべく署名集めを開始します。

しかし住民投票に必要な数の署名を集めることに失敗。

それでも諦めず減税運動を続けた結果、1978年についに署名の必要数を集め、彼らが立案した法案である「住民提案13号(Proposition 13)」の住民投票が行われることになります。

「住民提案13号」の主な内容は

・固定資産税の最高税率を時価の1%とする(当時の平均税率は2.7%)
・固定資産税の課税ベースは、市場の売買価格を課税ベースとする

などといった内容で、これはカリフォルニア州の固定資産税収が60%も減少する大減税であり、政府にとっては財政的に大打撃になるものでした。

またこの「住民提案13号」には

・増税は州上下院両院の2/3に賛成を必要とする
・地方税は有権者の2/3の同意を必要とする
・これらの条件に関わらず不動産への増税や新たな課税は一切禁止する

という内容もあり、これらの一部は「州憲法に違反する」との抵抗も受け裁判にまでなりましたが、州最高裁は「合憲」との判決を下しました。

そんな「住民提案13号」の住民投票が1978年6月6日に行われるわけですが、その結果は

賛成:428万609票
反対:232万6167票

という圧倒的大差で可決。

カリフォルニア州の住民は、自らの手によって固定資産税の大減税を勝ち取ることになったのです。

住民投票での勝利後、演説するハワード・ジャービス

こうして「住民提案13号」は1978年7月1日から正式に州憲法として施行されることになりました。

この「住民提案13号」成立の衝撃は「Tax Revolt(納税者の反乱)」として全米に伝えられ、その年の中間選挙の大きな争点の一つにもなったほか、他の州でも同じような固定資産税の税率制限が広がっていきました。

更にアメリカ史上最大の減税と言われた1981年のレーガン大統領による「経済回復税法」は「納税者の反乱に触発された」とされており、「住民提案13号」はアメリカ全土を巻き込んだ減税運動だったといっても過言ではないでしょう。

さて、「Tax Revolt(納税者の反乱)」から50年近い時間が流れたわけですが、「住民提案13号」は今どうなっているのでしょう?

その答えは2020年にカリフォルニア州で行われた「住民提案15号」の住民投票の結果が教えてくれています。

「住民提案15号」とは

大企業の固定資産税を増税するという「提案13号の修正法案」

という内容のものでした。

この「住民提案15号」にはバイデン大統領とカリフォルニア州民主党などが賛成し、公務員労働組合などからの70億円以上の寄付を原資に大キャンペーンが展開されました。

一方、カリフォルニア共和党を中心とした反対派は、350以上の企業グループ、納税者団体、不動産や農業業界、商工会議所などから80億円を超える寄付を集め、こちらも反対キャンペーンを行い抵抗します。

そんな全面対決の末に行われた住民投票の結果は

賛成:821万3054票
反対:888万5569票

となり「住民提案15号」は否決、つまり住民は増税を拒否し

「Tax Revolt(納税者の反乱)」を支持

したのです。

以上が「納税者の反乱」のお話です。

ここまで読んで、どれだけ叫んでも声が届かず、それどころか逆にあらゆる理由で政府にお金だけ毟り取られていく日本の現状と比べ、正直「羨ましい」と思った人が多いのではないでしょうか。

でも今日ご紹介した「納税者の反乱」も決してとんとん拍子で話が進んだわけではありません。

1978年の住民投票による可決に漕ぎつけるまでは多くの時間を費やしており、前述した署名集めへの失敗だけでなく、例えばロサンゼルス郡の財産評価員が作った「ワトソン提案」と呼ばれる「固定資産税の1%上限法案」が
1968年、1972年に住民投票まで持ち込まれていますが、二度とも大差で否決されています。

また1973年の「税負担率と州政府歳出に制限を設ける住民提案」も住民投票で否決され実現しませんでした。

このようにカリフォルニア州の減税運動も住民の理解を得るまでには10年以上の時間を要しており、最初から順風満帆ということでは決してなかったのです。

そんな状況からのスタートでも減税を勝ち取れたのは

どれだけ失敗しても諦めずに声を上げ続けたから

なのでしょう。

無党派層の政治運動というのは、水平線しか見えない大海原でひたすらボートを漕ぎ続けるようなもので、それは非常に大変な事です。

本当に陸地に近づいているのか、もしかしたら一生辿り着かないのではないかと疑いたくなる時もあるでしょう。

こんなに必死にオールを漕ぐことに本当に意味があるのかと諦めたくなる日もあるでしょう。

日本における現在の減税運動が生まれてから数年の時間が過ぎました。

でもその運動は間違いなく前に進んでいます。

日本でも「納税者の反乱」の火種が出来た50年前のアメリカと同様に、政治不信の高まりと高いインフレと税負担率による不満の鬱積からか「減税しろ」という声は間違いなく想像をはるかに上回るスピードで広がっています。

前記事にも書きましたが、トリガー条項が税制大綱に記載される一歩手前まで来るなんて誰が予想したでしょう。

毎日誰かしらが減税ポストで万バズするなど、数年前なら考えられなかったことです。

我々の減税運動は

やり方に正しいも間違いもなく、みんなが自分の出来る範囲で出来ることを自由にやればいい

というものです。

当然やるのも辞めるのも、疲れた時は休むのも自由です。

ストレスの溜まるような増税のニュースばかりで、全てを諦めたくなる瞬間があるのは事実です。

でも「納税者の反乱」も10年以上掛かったのです。

我々はそれより速いスピードで確実に前に進んでいます。

出来る範囲で構いません。

減税運動は100人の中から賛同者を一人見つけるゲームくらいの感覚で、仲間と共に楽しみながらこれまで通り声を上げ続けていきましょう。

ということで、今日の記事はここまで。

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それでは、ナイス減税!

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