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はい、縫製室です/【まっすぐ】って難しい

 洋裁初心者でお直し縫製室に勤めて5年目です。
 工業用ミシンをふみはじめたのも同じ年月ってことです。

【まっすぐ】って難しい!


 ここの縫製室でカーテンを縫うってことは基本的にないのですけれど、何度かその機会がありました。

カーテンの裾をまっすぐに縫うって難しい

 まず、線を引く【まっすぐ】。
 布をまっすぐに置く。
 上端を起点にまっすぐ測る。その点をまっすぐつないでしるしをつける。
 まっすぐ裁断する。

 そして、最難関の【まっすぐ】は、縫いはじめと縫い終わりをぴったりまっすぐ縫うことでした。

 ある日、家でカーテンを縫っていたところ初めて、縫いはじめと縫い終わりがピッタリとはみださずにおさまった瞬間がありました。

 縫製室勤務の成果!!
 甲斐があったってものですよね。うれしいです。

裾をまっすぐに縫うって難しい

 袖です。
 ある日のリクエストは肩から袖までの長さと脇下から袖までの長さを大きく変えてほしいとのことでした。肩からのラインから平行に脇側に線をおろすのではなく、脇下から袖までの長さは短くしてほしいってことですね。
 シャツを平置きした状態では、【まっすぐ】に見えます。
 が。
 肩ラインと脇ラインを中央に置くと…?
 そう、斜めになってます。モーニングカットと同じです。
 その差は4~5㎝程度だったでしょうか。

 難しいわっ!
「まっすぐに縫うだけでいいのよ!」って言われましても…。
 三つ折りなんだわ。どうやって縫い代を収めるのか。難しいわっっっ!

 今だったら、もう少しうまくできる…自信はやっぱりありません。
 とはいえ、先日は、長袖から半袖にするさいに脇側は1cmほど短く仕上げました。それくらいならまったく問題ないんですけどね。

 ズボンです。
 
ズボンの丈詰めをしてます。ジーンズや婦人のフォーマルパンツなど、よくあるのが”脇ラインより股下ラインが上にあがって”仕上がっています。

 どうしてですか?
 ふくよかな人、腰回りが張っている人の場合は、穿いたときに布をひっぱりあげるので、あらかじめ股下側を短くしておいて、穿いたときにまっすぐ見えるようにしておくのだそうです。

 お直し時にはこれはまっすぐに線を引いて裁断します。
 元のライン跡が斜めに交差してきます。うっかり「まっすぐになってるかしら?」って心配になります。ちゃんとまっすぐかどうか確認しますから大丈夫です。

着用した時に【まっすぐ】に見える

 すごいことですよね。
 すごい技術だと思います。

 縫製室の熟練先輩がよく口にしていた言葉があります。

立体だからね

 
 スカートやシャツやブラウスの裾も、中央から脇側にむかって少しあがって仕上がっています。これが着用すると、まっすぐになっているのですよね。
 「本当は、個々の体型にあわせてお直ししたいけどね」っておっしゃいます。でもそれができるのは個人でお店を持ったときでしょうね。ここの縫製室では直接、お客様と対応することがなく、伝票に指示された通りでお直しをします。お客様に対応するのは販売店のスタッフですが、全員がアパレル専門知識を持っているわけではないのだそうです。
 まぁ私も縫製の知識も技術もなく初心者で採用されています。そこは全国的にそのような傾向のようですよ。人がいないんですって。「趣味程度でいいのでミシンができるかた、洋裁が好きな方。現場で丁寧に指導します」って求人内容が多いですね。逆に言えば専門学校卒でなくても、洋裁の現場に入ることができます。可能性があるんですよ。わたしみたいに。

折り紙が苦手なわたしでも、できますか

 わたし。折り紙が苦手なんです。
 説明書通りに折ることはできます。仕上げることはできます。
 でも、いつも思うんですよね。

 なにが、どうして、こうなるの!?

 「この形を作るためには、こう折ればいいんだ!」はまったくわかりません。立体がとにかく苦手。
 ちなみに幼少期にうちには積み木がありませんでした。積み木遊びも大の苦手です。きゅっとまとまった感じにできません。床にしかならない感じ…?

 だから。
 「初めて」のカタチのお直し案件をくらったときは、次の方法です。

元を解く
仕組みを理解する
同じ方法で仕上げる

 だから。
「こう、仕上げたいのだけど、できるかしら?」の相談はとてもとても苦手です。とはいえ、そういうものはたぶん、それまでの経験の蓄積からアイディアが浮かぶものだと思うので、《長年の経験》を積み重ねるしかないのかなぁと思います。

 技術と知識が無いのだから、経験を積むしかないですよね。
 たのしんでいきましょ。


最後に。

「まっすぐに縫うだけなのに!?」と言われる

 直線、まっすぐの三つ折り仕上げ。ぐるりと裾を一周するものです。
 
販売スタッフ「1500円か、2000円だったと思うので、確認してきますね」
お客さん「まっすぐに縫うだけなのに!?」

 そんなやりとりがあったそうですよ。
 1500円だったのですが、かえってこなかったので、キャンセルされたのかな。

 本音を書きますね。

 

技術に敬意を払えないかたはお客様じゃないので

ご遠慮くださって結構ですよ


 その「まっすぐに縫うだけ」をご自分でなさらないわけですよね。
 ね?

 ついでに書きますと。

「商品よりお直し代金のほうが高いんだけど!?」

 そのお気持ち。
 わかります。とてもよくわかります。
 
 わたしだって商品を購入するとき、送料が商品代金と同じか高いと(やめよう)って思います。
 でも、配送、配達にかかるお仕事って大変なものですよね。
 購入商品のお仕事に対する報酬と、それをお届けしてくれるお仕事に対する報酬ときちんとお支払いして初めて両方揃って手元に届くわけです。

 衣料ですと、お直ししないと着用できないのであれば、お直しされた状態が「使える」「完璧な」わけで、お直しとセットで当然でしょって思う気持ち、わかります。ですよね~。

 でも、

別物なので


 お直しサービスは、商品とセットではないんです。
 お直し業に、別途、依頼しているんです。

 商品購入窓口で受け付けするので「無料」だと勘違いされている場合もあります。なにせ販売スタッフもそう思ってます。
 違います。
 その販売店で独自におこなわれるお直し無料サービスは、その販売店がお客様の代わりにお直し代金を支払うことで、お客様負担分を肩代わりしてるんです。販売店の経費です。
 お直しは「無料できるもの」ではありません。そこは知っていてほしいですね。

 こういったやりかたは、”販売店がサービスを提供している事実”が伝わっていません。もったいないですね。
 同時に、お直し技を軽視する風潮を増長していますよね。
 とてもくやしいですね。

【まっすぐ】に縫うってすごい技術なのに

 すでにそれが難なくできるようになって久しい熟練の職人さんたちは、そのすばらしい技術を「これくらい」って思っちゃうんですよね。
 ご自身の技術を、ご自身で軽く見てしまう。
 それで安く請け負ってしまうんです。

 それは本当に、もったいないって思います。

 職業に対する誇りを持てないでいることにもつながってます。

 「これくらい」なんてものじゃないですよ。
 とてもかっこいいですよ。
 みなさん、20年、30年とされてます。

 わたしが20年、30年続けたとしても追いつけない技術だろうと思います。そこはみなさんが基礎をまなんだ知識があるからだと感じます。そして感性も。
 すごいんだなぁ。

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