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ホームスクーラーから眺めた在籍中学校の卒業式の日

 3月。卒業式シーズンですね。ホームスクール家庭では学校とどのようにかかわっているのでしょうか。我が家はホームスクール(アンスクーリング)12年目になります。中学校の卒業は今年4人キョウダイの3番目が通り過ぎました。

関連note:
小学校からはじめるホームスクール
小学校卒業/中学校進学時からはじめるホームスクール
高校生からのホームスクール


 我が家のホームスクールは普通教育として選ぶ自由教育の位置づけであると認識しています。オルタナティブ教育は、オルタナティブの訳語から代替教育と受け止められることもあるようですが、自由教育としてのオルタナティブ教育は代替ではなく、既存の公教育と異なるもうひとつの教育体系をさします。ホームスクールは家庭を基盤とし、家庭教育の側面も大きいことからオルタナティブ教育の枠組みにはいったり、はいらなかったりしながら語られています。
 普通教育として学校教育を選択、学校に登校しない代替として在宅学習をする意味でホームスクーリング、ホームスクール、ホームエデュケーションとよぶ家庭もあります。kokageホームページではこのスタイルをスクールアットホーム(School at home)と位置づけています。自由教育がすべからくこどもを主体とするのに対して、スクールアットホームでは学校教育が主体です。学習指導要領に沿った教科学習カリキュラムを家庭あるいは学校外の多様な学びの場で学習する機会は、オルタナティブ教育と部分的に重なります。

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参考:まなびあい>教育制度の法整備

【卒業式に関する中学校対応の経緯】

 中学校とは学期ごとに担任の先生からご連絡をいただいています。3学期の連絡は卒業式についてでした。

〇卒業要覧に名前を載せますか
〇卒業式後の時間帯に、式欠席者に証書授与式をしますが、
「本人の参加は厳しいですか」

お答え
〇名前の記載の必要はありません
〇卒業式および証書授与式は、本人が必要性を感じません。
「これまで通り、卒業証書を送付していただくか、私が学校まで受け取りにお伺いします。」

 このやりとりは電話口でのことですが、その場でお答えするものでした。というのは本人に連絡内容を伝えて相談する必要が無いという意味です。なぜなら、先述したように我が家では学校教育を選択している意思はなく、自由教育を選び、ホームスクールを実践しているわけですから、学校教育で定める教育の目的やねらいを受ける理由と義務がないのです。それは授業内容に限らず、卒業式をはじめ学校行事全般も同様です。
 本人に伝えるときは「学校からの連絡事項」とは少々意味が異なります。


【一条校に在籍する義務】

 「卒業する」。学校での卒業式の式典の意義は、学び舎を巣立つ通過儀礼とお世話になった先生方への感謝、ともに学んだ学友たちとの別れ、先へ進む未来への決意などなどの意味があることでしょう。そこで過ごした思い出や、そこで学んだことの証、成長した足跡がよみがえることでしょう。そこから「卒業する」意思と決意の表明の場でもあると思います。
 でしたら卒業するタイミングは本来本人の自己決定ではともいえますが、学校制度としては6・3・3制となっていますから、その時期がくればいやおうなく卒業することになっています。ですから「卒業資格が自分にあるかどうか」と自分に問う生徒もいるかもしれません。扱われたように人はそうなっていくものですから、高校へ進むなり、就職するなりの環境に身を置いたとき、あるいはその帰属意識があるときには「卒業」を実感するかもしれませんね。

 さて普通教育として自由教育を選んでいる家庭でも、現在の日本の教育制度としては一条校への在籍の義務があります。これを就学義務といいます。(※参考:まなびあい>教育のえらびかた・はじめかた

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 一条校とは学校教育法の第一章総則第一条に定められている教育機関のことで「学校」というと一般的にこれを指します。

学校教育法
 第一章総則 第一条
この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

 「学校」以外の教育施設は各種学校に位置付けられます。一条校ではないけれども学校教育に類する認可を受けた教育施設です。専修学校とは区分されます(※参考サイト:専修学校(専門学校等)と各種学校の違い)。各種学校は専門性の高い内容を提供するため、カリキュラムの自由がきくことから、あえて一条校の認可を取得しない例もあるようです。
 オルタナティブ教育としてインターナショナルスクールが挙げられますが、各種学校に認可されているスクールが多く、一部に一条校になっているスクールがあります。各種学校のインターナショナルスクールに通う場合は、一条校の在籍がなければ義務教育機関でも小中学校の卒業資格が得られないのはこのためです。インターナショナルスクールに通う生徒は夏休みなどを利用して、在籍する一条校の授業に参加することもあります。


【オルタナティブスクール生と卒業式】


 民間が運営するフリースクールは各種学校ではありません。フリースクールには種類が3つあります。(参考:つなぎあい>コミュニティとサポート)教育支援センター(旧適応教室)と居場所・フリースペースは、それぞれ行政が運営するものと民間に委託されるものがあります。3つめは自由な学び場のオルタナティブスクールと同様のフリースクールです。オルタナティブスクールはそのうち体系的なカリキュラムを持つスクールをさします。
 いずれも生徒は一条校の在籍生徒になっていますので、一条校から卒業式を出ることも可能です。しかし、そこに感じる意義はなにがあると考えることができるでしょうか。それぞれに思いは異なります。異なる3つの要素について詳しくはこちらをご覧になってください。


 我が家では一条校である校区の学校に在籍させていただいている認識はありますが、その学校の生徒である意識はありません。ですから、登校0日確定のホームスクールスタイルなので、下記の通りの返答になります。

お答え
〇名前の記載の必要はありません
〇卒業式および証書授与式は、本人が必要性を感じません。
「これまで通り、卒業証書を送付していただくか、私が学校まで受け取りにお伺いします。」

 フリースクールやオルタナティブスクール中心に過ごして登校0日が当然になっているこどもたちも同様かと思います。なお、出席日数は卒業要件ではありません。出席0日でも義務教育期間である小中学校は卒業し、その卒業証明を得ることができます。卒業証書とは卒業式で手渡される賞状風の証書のことです。最近の卒業証書は筒ではなくて二つ折りになっていて驚きました。再発行はできません。卒業証明書とは卒業を証明する書類のことです。卒業後、資格取得や受験の資格証明等で証明書類が必要になった時に在籍のあった学校に発行を依頼します。
 中学校の入学資格は小学校を卒業していることですし、高校の入学資格は中学校を卒業していることになります。ですからなんらかの理由で中学校の卒業証明を持っていない人は夜間中学校で学ぶなどして中学校の卒業証明を得るのです。なにかしらの資格取得の条件には、中学卒業程度等の証明のために必要なこともあるでしょう。大学は高校の卒業証明もしくは高校卒業程度の学力を有すると認める高認の資格が受験できる資格者の条件となります。卒業証明は学歴に、高認は取得資格に相当します。
 ここまで理解していると、「卒業式に参加する」ことには「参加しなければならない理由」はなく、個々人でその意義をどのように見出すかによるのではないでしょうか。
 学校以外の学びの場、教育支援センターや居場所・フリースペース、フリースクールやオルタナティブスクールの部分的な活用を含み、学校を部分的に活用するハイブリッドスクーリングでは、卒業式の参加は礼儀だと思いますし、礼儀の表し方はそれぞれいろんな形があって良いものと思います。もちろん本人の置かれた状況や希望が一番です。


【卒業式を活用する制度として受け止めてみる】

 こどもが学校に在籍することは、大人の都合です。それは制度上そうなっているにすぎないからです。こどもにとって行きたくない学校であっても、行けない学校であっても、どこかの一条校に在籍はしているのが一般的です。つまりその学校の生徒であるというのは、親の義務という都合でしかなく、こども本人の責任ではないわけです。こども本人には学習権がありますから、在籍している学校の卒業式に参加する権利があります。制度上、一度も授業に参加していない学校であっても、「学校の卒業式というのを見てみたい」という至ってホームスクール的な理由で、在籍する学校の卒業式に参加してもいいわけです。参加しなくても、もちろんいいわけです。こどもの意思は尊重されます。親や学校、教師のために参加する義務や責任は無いと言えるでしょう。

 私としては、在籍させていただいた(※)学校と先生への感謝の念をお伝えした上で、「本人にとって参加が厳しいと感じる」わけではなく、「必要性がない」ことは理解していただきたいと考えました。(※この場合、学校に入学する許可である就学案内が届き、それにより手続きしたという意味で「~いただいた(相手から承認を得ておこなった意)」です。)
 実は長男のときには担任の先生の方から「送付しましょうか」とご提案いただいたんです。さすがにそれは礼を欠く事なのではと私が恐縮しまして学校まで出向きました。今だと「送付でもいいか」との心持ちになっています。以前にもおなじ中学校の先生がそうしたという実績は強みですね。
 卒業式に関する電話連絡があったときには「では、卒業証書はお母さんが受け取りに来ていただけるということで、また時間などご連絡します」となりました。式に参加できない子を集めて、卒業式終了後の1時間に枠を設けてあるということでしたが、そこに出席する意義も見つかりませんでしたから、「証書の受け取り」を希望したのでした。

 あなたの「卒業式に参加する意義」はどのように決まりそうですか。

 視点を変えて、普通教育として学校教育を選択した生徒に対して、学校側は卒業式の意義をどのように考えることができるでしょうか。
 6年ないし3年間の学び舎からの巣立っていく生徒たちへのエールと、儀礼という儀式のマナーを知る教育機会の意義もあります。けじめをつける気持ちもあることでしょう。マナーとは、感謝を伝える機会を設けることで、一通りの礼儀作法を知り、実践する機会と言えるかもしれません。似たような儀礼は社会においても出会うかもしれませんから。社会での儀礼の様式を模範として、学校教育の場で身に着ける機会としているかもしれません。

 思いはそれぞれです。その思いをどう受け止めるか。そして、どう応えるか。丁寧に思いをめぐらせてみてもよいのではないでしょうか。

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