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一歩ずつ、春

日本海側ではまた雪の空とのこと。太平洋側の岩手にある私の住みかは、いつも奥羽山脈が雪をブロックしてくれる。雪かきが大変と言いつつも、日本海側に比べれば大したことはない。奥羽山脈サマサマである。

今朝は庭に雪が少々あった。せっかくマイナスじゃない気温の日が続き、庭や路面もすっかり乾いていたのに。側溝に詰まっていた氷もようやく掻き出せたのに。

だけど雪の質はこれまでとまったく違い、水分を多く含んだ、重たい雪。庭に出ると、そんなに寒くない。庭の蛇口もクルクル回る。朝イチでも蛇口が凍結していない日は久しぶりだ。

庭の雪を押してきた母が、困ったような嬉しいような声を上げた。

「いやー、ほぼ水分で雪が重い! これは腰に来るから、今日は雪かきしない方がいい! だけどこの雪が来ないと、春にならないんだよなあ!」

春は近づいている。
一歩ずつ、一歩ずつ。

「今日のは春の雪だ! 春の雪だ!」
雪だというのに、母の声はどこか歓喜に満ちていた。


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