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私の視力低下を、父が1.5まで回復させていた話

以前、長年お世話になっているお店でメガネを作り直していたときのこと。店員さんが私の履歴を見て驚かれた。

「小学生の頃にメガネかけ始めてますけど、そのあと一旦、視力1.5まで回復されてるんですね。どうやったんですか?」

そういえばそんなこともあったが……はて、どうやったのか。私もその理由はわからない。不思議に思って父に聞いてみると、父はにやりと笑った。

「あれは俺がやったんだ」

重機や溶接など多種多様の資格を持っていた父は、自分の腰痛を治したいという志から、整体師の資格も取得していた。

その父の持論によると、子供はまだ視神経だかが完成されていないから、整えてやれば視力も回復するはず云々とのこと。よその子ではやれないが、ちょうど私がメガネをかけて目の前にいたのでやってみたのだという。おいおい。

言われてみれば、あの頃よく父に手招きされて整体を受けていた。バキッと鳴らされるのが気持ち良かったので、私も整体用マットレスにほいほいと寝転がっていた。こっそり視力矯正されていたとも知らずに。父の持論は私の視力回復をもって証明されたわけだ。

残念ながらその後また視力が落ちたわけだが、原因はわかっている。当時キーホルダー型のテトリスが学校ではやり、私も親に隠れて夜な夜な布団にもぐってやっていた。視力がガクンと落ちたのはそこからなので、自業自得である。

「じゃあ、またやってよ」
父に頼んだが、無理だ、とあっさり断られた。あれはまだ子供だったからできたのであって、大人になった今ではもう無理だと。

「あと、コレだがら」
父は自分の右手をあげて、にやりと笑った。父の右手中指は、前に草刈りをしていて切ってしまい、指先がない。

「指なくなってから、整体やっときのあんばい悪くてヨ」
「ああ、そうね」

つくづく、あのときテトリスを布団の中の暗闇なんかでやらなきゃ良かったと後悔した。



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