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わからないことを、わからないままで 「君たちはどう生きるか」に寄せて2

宮崎駿の映画を見てから考え続けている。
「わかる」って何だろう。「わからない」って何だろう。

音楽を聴いていると、たまに「わからない」歌詞に出会う。
わからないからと言って、嫌いになる事はない。
むしろそういう風に引っかかった歌は、ずっと聴き続ける事になる。

例えばそれはユニコーンの「すばらしい日々」
そのサビの歌詞。

君は僕を忘れるから、その頃にはすぐに君に会いにいける

君が僕を忘れたら、会いに行ける?
何度聴いても、はっきりとはわからない。
でも何かが伝わってくる。
人から遠ざかりたい気持ちと、それに相反する気持ちがない混ぜになった複雑な、気分。

また、例えばそれはU2のwith or without you
そのまさにタイトルのフレーズ。

I can’t live with or without you

歌詞カードの訳詩には確か、
「僕は生きていけない 君がいてもいなくても」とか、そんな事が書いてあって、それは信仰とか理想に対する挫折みたいな批評もあったけど、やっぱりわからない。でも同時にものすごくわかる気持ちもする。

そしてミュージシャンは歌詞の意味を説明する事を拒否する。自分たちのいいたい事は、すべて歌で表現した。後はあなた次第だ。どう受け取ってもらっても構わない。

「君たちはどう生きるか」
物語の意味は、自分にもわからない所があるというような事を宮崎駿は語っていた。

映画を見た後は、最初はあまりにもわかりやすいものが溢れている今という時代へのカウンターなのかと思ったけど、この発言を聞いて、もしかしたらそうではなかったのかもと思った。

「そのようにしか表現できない」何か。
そのわからなさや矛盾も含めて。
そのようにしか描くことができない何か、を作ろうとした映画。
それが「君たちはどう生きるか」だったのではないか。

わからない事があることの素晴らしさを、あの映画は教えてくれた。
でも、それは目的では無かった。あの、わからなさを含めた全体を宮崎駿は表現したかったのだ。

不朽の名作では無いのかもしれない。
でも、喉に刺さった小骨のように、僕の心にはいくつかのシーンが胸に残っていて、その意味を考え続けるのだろうと思う。

あれは一体何だったのだろう、と。

(↓観た直後の感想文はこちらです)

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