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これが宮崎駿の世界 〜「君たちはどう生きるか」感想文〜

例によって遅ればせながら「君たちはどう生きるか」を観た。熊本局の隣にはシネコンがあって便利。

難解とか言う声もあったけど、僕にはシンプルに面白かった。理解できない?そうかな。むしろ理解しなくていいから楽、みたいな感じ。

わかった事がある。それは、宮崎駿の頭の中にはああいう化け物や異界への扉が「存在する」ということ。

モノノケ姫や千と千尋とかの物語の為に、異世界や化け物を生み出したのではなく、宮崎駿の頭や心の中にある世界に「わかりやすい」メッセージや物語を与えて届けたのが、かつての名作だったのではないか。

今回はそれにわかりやすい物語を与えなかった。だからこそ、宮崎駿の内面を旅してるようなグロテスクさと面白さがあった。異界への冒険を通じた成長物語は、村上春樹の「少年カフカ」のようにも思えた。

それでも、少年が四つん這いのように走ればそれはコナンのようで、少女とハグをすればそれはルパン3世かラピュタのよう。宮崎駿の心の中に異界があるように、僕らの心には、宮崎駿の世界の遺伝子が刻み込まれていて、その中にはある種の「勇気」みたいなものもあって、テーマがあるのだとすれば、宮崎駿はそれをもう一度呼び覚まそうとしているようにも思えた。

落下する少年には、それをつかむ腕がある。
陰鬱なムードと不吉な暗喩もあるけれど、最後に示されるのは子ども達、若い世代への期待と希望。

素晴らしい作品でした。

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