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君の声が

思いがけない電話。
声を聴いたら、時間が一気に巻き戻った。
そんなことってあるんだ。
10代から20代初め。
僕らには電話と手紙しか無かった。
男の子のような声。
声って何で変わらないんだろう。

真夜中の電話。
うまくいかない人間関係の話。
離れていても、空には同じ満月があって、
僕はレポート用紙に文章を書き連ねて、ファックスで送った。

同い年。
同じレベルの悩み
同じくらいの弱さとずるさ。
あれからもずっと、年賀状だけは続いていた。
文字の癖も変わらないね。

空白。
長い空白。
君が苦しんだ時期があるのは知っている。
どうやって乗り越えたのかは知らない。
僕もそれなりに苦しんだけど、
お互いそんな事は話さない
でももう少し声が聞きたい

誰かと別れる時には、
自分とも少しだけ別れる
(その人といた頃の自分と)
ずっと昔、そんな詩を書いた人がいた
本当にそうだ
あの時別れた自分と再会する

10分くらい話して
僕は電話を切った
君は東京にいて、僕は九州にいる。

あの頃と同じくらい離れてる。
あの頃と、同じくらい。

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