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近代建築の解体、保存について

昨今、近代建築といわれる建物がその文化的価値を考慮せずに、老朽化や経済的に非合理のため、壊されていく事例をよく見かけます。最近のニュースで私が本当に悲しんでいるのは、「東京海上日動ビル」が解体されてしまうというニュース。

東京海上日動ビル
画像元: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00110/00257/

設計したのは東京文化会館や東京都美術館など全国各地で数多くの美術館や博物館を設計した前川國男。私が前川國男をはじめて知ったのは実はこの東京海上日動ビル。18歳の時に東京駅に降り立ち、皇居の方面を眺めると、ビルなのにビルの冷たさは無い、ある種の工芸的な印象を感じる建物があるのに気づき、ひとり見惚れていたのを覚えています。後に知ることになるのですが、前川國男はこれを「焼きものの肌による巨大マスの人間化」として構想していました。築50年にも満たない建物ですが、今年の秋には解体予定とのことですが、本当になんとかならないのかと思います。私ができることといったら、この解体のニュースを記事に紹介し、1人でも多くの人に知ってもらうことだけ。ぜひ共有をお願いします。


ちなみに、私の地元の愛知県に吉村順三の設計した「愛知県立芸術大学」という建物がありますが、こちらは解体の危機にあった建物を2010年にDOCOMOMOjapanが保存要望書を出し、保存に向けた活動が進んだことで、この芸術的文化的価値の高い建物が今でも残っています。芸術大学という機関がこの建物を解体しようと考えたこと自体、世も末だと当時は思いました。

愛知県立芸術大学
落ち着きのある廊下は天井高2200mmと吉村順三らしい住宅スケール

↑DOCOMOMOの設立は1988年にオランダから始まり現在40カ国以上に支部が設けられています。余談ですが、私はDOCOMOMOjapanに選定されている堀口捨己設計の「八勝館」で挙式を行いました。

八勝館 御幸の間

良き建物が残るにはやはり、地域や一般の方々が利用し、建物の存在自体が人々の記憶や思い出の中に存在し続けることが重要なのではないかと思います。地域や一般の人に利用されたことの無い建物を建築の専門家が一方的に保存しろといっても理解されないのはやはり分かります。

私も孤高な建物よりも、人々の記憶の中に生き続ける建物を創っていければ本望です。

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