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マチに働きかける暮らし - 清荒神 part 2 「マーケット」と「参道」

賑わいが失われつつあった清荒神参道


僕が清荒神に住みはじめた 2015年頃.
阪急清荒神駅清荒神清澄寺への徒歩20分くらいレトロな参道商店街には、昔ながらのお店がほどんどだった.しかも、昔ながらの雰囲気のある店々は潰されアパートになったり、普通の住宅になったり、シャッターが閉まったままになっていたり、このまま何もしなければ「ただの住宅地になるんだろうな」と、少なからず感じていたと思う.

昔ながらの味噌と麹のお店 ここで麹を買って「いちにちカフェ」用に甘酒ドリンクをつくっていた
シャッターが閉まったままの元お店も多い
お店の並びにただの住宅が増えていった

住宅地として価値の高い宝塚(清荒神)なのだけど、都市計画法の関係で商業地域(お店をつくって良い地域)が少ないので、宝塚歌劇場付近に歌劇っぽい観光地プライスのお店か、ロードサイドに大手資本のチェーン店がばかりができていて、「いいお店が少ない!」と住人の多くの人が感じていたと思う.
僕もそのうちの一人で、宝塚で楽しめる店が少なかったので大阪や神戸の飲食店にいくことしかなかった.

シチニア食堂さんともののひ市

そんな中でシチニア食堂さんだけは、自分が行きたいと思うお店を宝塚に作る!と、清荒神のマチの少し外れでお店をはじめられ.落語、ライブ、マルシェ、お野菜販売会などさまざまなイベントを行い、宝塚の外の素敵な人を招いて異彩を放っていました、「あのお店に行けば美味しいものがある」「新しい出会いがある」、「いい出店者さんに出会える」そんなハブのようなお店で、地域のクリエイターやアーティストさまざまな人が集う場所になっていた.

シチニア食堂(移転前) ご飯が絶品で、流れる雰囲気も至高


ライブや落語を開催 お客さんは近所の人や遠方から
本当に昔の寄席のような雰囲気に人が集まっていた

その魅力に集った人たちの仲間で、「清荒神もののひ市」というマーケットイベントが開催されることになり、それを続けることでたくさんの人が清荒神って面白い!って感じるようになったと思う.僕自身もその一人だった.

地道に小さな規模からはじめて地道に毎月開催し、北摂(大阪平野の北部のこと)地域の素敵なお店が出店し、飲食店やパン屋さん、コーヒーロースター、雑貨屋さん、店を持たない手作り作家さん、イラストレーターなど、どんどん輪が広がり、近所の人もそれに刺激を受けて自分でものづくりを始めたり、イベントの手伝いをしたりどんどん成長していった.
2017年には、清荒神清澄寺さんの土地をお借りして大きなマーケットに「わざわざ宝塚の清荒神に行きたい!」と思わせるイベントだった.

初期のもののひ市、空き地を利用して開催されていた
木立の気持ちいい場所で開催
長蛇の列をなすほどのイベントに

20代の頃の僕は、魅力的なイベントを開催する先輩たちを手伝いながら、かっこいい背中を見ながら、マーケットという”場”をつくることの可能性を強く感じた.

一つの場所に魅力的な店や作家が集まる魅力
・新しい発見がある
・出展者同士での情報共有
・目に見える人が作ったものを購入する心地よさ
・そうして友だちが増えることでさらに楽しい企画が生まれる

など、とてもたくさんの気づきがあった.

マーケットやお店が暮らしの延長にあり、「楽しみ」と「生業(なりわい)」がひとつながりになる、「マチに働きかける暮らし」のあり方をここで学んだように思う.

マーケットから実店舗へ

マーケットやシチニア食堂さんがチャレンジしている様子を見て得た気づきは、僕だけではなくいろんな人が感じ取っていて、マチにないものがあれば自分で作ればいい!とお店をつくりたい!という人が現れた.

僕自身も、part 1で語ったような「いちにちカフェ」を開催して清荒神の可能性を発信していたり、「もののひ市」の設営の手伝いをする中で、仲間が増え清荒神のお店の設計を頼まれるようになった.

「casimasi」

「自分が欲しい店がないので自分ではじめたい」
その想いで、本と雑貨の店をはじめた「casimasi」さん.

宝塚は、宝塚歌劇団が有名でとても文化的なイメージがあるけど、住人としてみれば本屋さんや雑貨屋さん、ギャラリー、美術館はほとんどなく、結局大阪や京都、神戸に行かないとってイメージだった.

その穴を埋めるべく、清荒神在住の店主さんがいつも使ってる食材やお茶、石鹸、靴下やファブリック、などなど自分が共有したいものを扱い、作家さんの企画展など開催し、時にはワークショップも行う.自分の心地いいと感じるものをシェアするお店.

お店の中に店主さんのおすすめが詰まっている


清荒神にあったらいいなという暮らしを提案するお店

僕は施工時に、お施主さんや周りの人に愛着を持ってもらうために仕上げの左官をDIYで、場をつくることに関わってもらうことをよくするのだけど、「casimasi」さんの場合はたくさんのご近所友だちが駆けつけて、みんなが新しいお店のオープンのチャレンジを支えているんだなと強く感じた.

誰もが、マチのためにお店を持ったりアクションを起こすことは難しいけど、チャレンジしてる人のことをこうやって後方支援したり、お店に通う、口コミを広げる.
こんなことも、マチに働きかける暮らしなんだろうなぁと思った.

左官ではたくさんのご近所さんが駆けつけた

「KIKILUAK」

「KIKILUAK」さんは、「シチニア食堂」さんの姉妹店として駅前に、美味しいご飯と焼き菓子が楽しめるコーヒースタンドとしてオープンするプロジェクト.
清荒神の駅前には、市営の立派な図書館とコンサートホールがあるけれど、子育て世代向けの場所のイメージがあって、子供のいない僕らはなかなか行きづらい場所だった.
マチの玄関口である駅前に魅力的な店をつくることで、清荒神に新しい”風”を起こしたい!そんな想いを語られていてすごく共感.

マチのみんなにとって嬉しいことだと思った.

外の広場でもランチやドリンクをいただけるようになっている
たくさんの人が行き来できるようテーブルはコンパクト
ここでも仲間たちとDIY
想いのこもった壁が出来上がった

こうやって想いが電波し、自分もやる!、チャレンジする人をバックアップする!そんな波が清荒神で少しづつ大きくなっていった.
後述するけど、清荒神の人たちが清荒神にあるお店のことを自分ごとのように全力で紹介する文化はこういったところで育まれたように感じている.

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「casimasi」
兵庫県宝塚市清荒神3丁目2−10
https://www.instagram.com/casimasi.takarazuka/

「KIKILUAK」
兵庫県宝塚市清荒神1丁目2ー18
https://www.instagram.com/kikiluak/


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 ⇨マチに働きかける暮らし - 清荒神 Part3へ続く

このシリーズは清荒神での僕の思い出と、これから清荒神で新しく始める試みのため、自分にとってのまとめ的文章です.

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マチに働きかける暮らし - 清荒神 part 1 はこちら


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