マガジンのカバー画像

掌編2024

169
2024年の創作物です
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

代書屋-【見つからない言葉】#青ブラ文学部

如月睦月は代書屋を営んでいる。 昔ながらの代書屋。 識字率が低かった時代同様、誰かの代わり…

たつきち
3か月前
24

【レトルト三角関係】2 #毎週ショートショートnote

探偵が悩んでいる。 珍しくはない。橋村夫人が留守の日は大抵こうして悩む。 「渡邊」 独白が…

たつきち
3か月前
14

interval - 打ち合わせ -

先日、武器工場の爆発で大破した工業ロボットは、P社から輸出されたものだった。しかし、それ…

たつきち
3か月前
13

【レトルト三角関係】#毎週ショートショートnote

再会して、しまっていた思いに気がついた。 「あー。戸棚の奥のレトルト食品みたいな?」 「何…

たつきち
4か月前
27

かみさま

小学4年の秋だった。 私は父方の親戚の住む町に、父と一緒に泊まりがけで遊びに行った。 おそ…

たつきち
4か月前
11

【閏年】#シロクマ文芸部

「閏年の閏と書いてじゅんと読むらしい」 「へぇ。この字も名前に使えるんだ」 「余分な子だっ…

たつきち
4か月前
34

猫又のいる町

帰り道、猫に会った。 珍しいことではない。 猫の多い町だ。会わない日の方が珍しい。 だけど、彼に会うのは久しぶりだった。 「やぁ、元気でいたかい?」 彼はチラリとこちらを見た。 相変わらずつれない。 でも、素通りせずに立ち止まってくれただけでも良しとするべきだ。 彼はこのあたりの猫の顔役だ。 特別体が大きいわけではない。オッドアイで体のほとんどを白い毛で覆われている。 だが、彼がいるから、この町の猫は人間との共存がうまくできているのだ。 と、少なくとも僕は思っている。 「とこ

洞窟の奥のお子様ランチ屋。あるいは中ボス戦について。

洞窟の奥にある飲食店に面白半分で履歴書を送った…ら、面接したいと連絡があった。 面接会場…

たつきち
4か月前
16

花屋 - 【春めく】#青ブラ文芸部

ー春は春 春めく春も 春なりけりー 「巫山戯やがって」 吉祥寺は舌打ちする。 受け持ち担当…

たつきち
4か月前
26

辞書と絵葉書

昨日買った古い辞書に絵葉書が一枚挟まっていた。 ページからするりと滑って床に落ちた。 古い…

たつきち
4か月前
14

【洞窟の奥はお子様ランチ】#毎週ショートショートnote

俺たちは会社の資料室からわけのわからない迷路に迷い込んだ。 「迷路というよりか洞窟って感…

たつきち
4か月前
25

隣人(004)

バイトから帰ってきて家に入る路地を歩いていたら、Kさんが前を歩いていた。 キャリーケースを…

たつきち
4か月前
15

【梅の花】#シロクマ文芸部

「『梅の花』という店だった」 「ほう。今回の怪異に似合いの名じゃねぇか。飲み屋か何かか?…

たつきち
4か月前
20

【61舌先三寸】#100のシリーズ

「舌先三寸は舌の先から虚空に向かっての三寸なのか舌先から奥に向かっての三寸なのか?」 「は?」 「考えたことない?」 「ねえよ。棚卸しの作業中に話しかけんなよ。どこまで数えたかわかんなくなるだろう?」 「俺さぁ、舌先三寸のことを考え始めると夜も眠れないんだ」 昔の漫才に「地下鉄の電車。どこから入れたのか考えると夜も眠れない」というネタがあった。まさにそれだと僕は思っている。 「それは何より。眠らずに数えてくれよ」 部品工場の棚卸しはキツい。 何種類もある螺子を一個一個数えてい