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【レトルト三角関係】#毎週ショートショートnote

再会して、しまっていた思いに気がついた。
「あー。戸棚の奥のレトルト食品みたいな?」
「何言ってんだ?」
「気がついてよかったじゃない?向こうもひとりなんでしょ?」
「皮肉か?」
目の前にいるコイツに俺はずっと告られている。残念ながら、俺は同性からの思いを受け取れるタイプではない。嫌いではない。だからというわけではないが、ずっと仕事の相棒としての関係は続いている。
「あの人が好きなのはお前だよ」
「見事な三角関係だ」
「なってないよ」
「そうだね。あの人の思いはとっくに賞味期限切れだ」
とっくの昔に断っているのにと言う。
「僕は女性とはお付き合いできません。ってね」
「本当に?」
「ついでに君のことが好きなのも言っている?」
「え?嘘?」
「レトルト三角関係だ。僕のは賞味期限長いよ」
愉快そうに言う相手を睨む。
でも、思い出したのは彼女への思いというより、この奇妙な三角関係だったのかもしれない。
彼女への思いの賞味期限は?と思う自分に苦笑した。