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徒弟制について

私たちコーポレイトディレクション(CDI)は、少し変わった採用方式を採っています。

「師匠が弟子をとる方式」や「徒弟制」と呼んでいる方式で、
1人の採用担当者(師匠)が、1人の候補者(弟子)を採る、
ということで、採用基準や選考基準も異なっています。

CDIに応募してくださる方から
「師匠が弟子を手取り足取り指導する」「師匠コンサルタントが率いるチームに所属する」というふうに捉えられることもあるのですが、それは私たちがイメージしていることとは少し違っています。

コンサルタントとしての生き方を志す人が、個性を活かしながら育っていくために、適した方式なんだろうと思っているのです。

「育てる」と「育つ」ということについて

例えば、「育てる」と「育つ」という観点から。

奈良県に寺社建築会社の鵤工舎(いかるがこうしゃ)という会社があります。ここは、若者が共同生活をしながら宮大工としての技を身に付けていく「徒弟制度」を採っています。
その創業者である小川三夫さんの文章に、こう書いてあります。

https://www.amazon.co.jp/dp/4167801205

「育てる」と「育つ」は違う。
「育てる」というのは大変な仕事や。
導き方によっては、どこへ行ってしまうか分からんぞ。
人の人生が掛かってるんや。無責任にはできないわ。
(中略)
しかし、「育つ」となれば話は別や。
育つための環境と機会を用意してやればいいわけだ。
学びたい者は来て、その中で自分でやっていけばいい。
時間はかかるし、近道も早道もないけども、自然に育っていくやろ。
それなら俺もできる。
それが鵤工舎や。
同じことを学ぼうとする者が集まっている。
学ぶための作業所も現場も仕事もある。
(中略)
後は自分の意志や。
「育ててもらおう」と思っても、ここでは出来ない。俺は育てることはできん。
ただ、本人が「学びたい」「育ちたい」と思えば、それは手に入れられる。
(中略)
技は、長い鍛錬と自己規制の後に身体に形成されるものや。
結局は誰も教えてはくれない。自分で自分を「育てる」ということや。
その環境と機会を与えるというのが、人育ての方法やないか。
その育つ芽を変な方向にむけなければいいわけであって、俺達の仕事や技は教えたってわかんねぇから、それは見せておけば自然に良くなるんだよ。

鵤工舎ほどストイックではありませんが、私たちも、思想としては近いものがあると思います。

コンサルタントというのは、人格をクライアントにぶつけなければなりませんので、一人前になった姿は、人によって違います。
「自分で自分を『育てる』」というのは、まさにその通りで、色んな試行錯誤をしながら、育っていくしかありません。
もちろん、経営分析や資料の作り方など、技術的なことは教えられますが、それは、読み書きソロバンのようなものでしかありません。

そういう「コンサルタント観」を持つのだとすれば、会社がやれること(・やるべきこと?)は、個性の種が育っていく様子を見守り、育ちを歪めるようなものを早めに取り除いてやる、ということが基本になってくるように思います。

その環境として、「師匠と弟子」という関係が、望ましいのだろうと思っています。


「学ぶ」ということについて

「学ぶ」ということに関連して、社内で「認知的徒弟制」ということについて教えてもらいました。聞きかじった・読みかじったことのメモですが、とても興味深く思っています。

例えば、「ある知識を習ったはずなのに、実践的な場面で使えない...」ということは、自分の経験としても、他人の経験としても思い当たるところがあるものです。


どうして?


それは、「知識」と「文脈」が切り離されているから、というのが、この議論の主張だそうです。
つまり、「どういう状況で、その知識が使えるのか」ということとセットで知識を修得していかなければ、「使える知識」にならない、ということです。

その問題を克服する方法として「認知的徒弟制」にスポットライトが当たります。
学習者が弟子として職場に身を置き生活することによって、身体と時間を使って「文脈」の理解を進めることになります。そして「文脈」にどっぷり浸かった状況で「知識」を取得することによって「使える知識」を体得していくわけです。

具体的には、以下のようなステップを踏むそうです。
1. 師匠が作業を見せ・内的思考をオープンにする
2. 師匠がヒントを与えて、学習者に実践させてみる
3. 学習者が自分の力だけで実践するように促し、必要な場合にヒントを出す
4. 学習者に言語化と内省を促し自立させる
5. 師匠が手を退いていく

ここでの整理は、下記のページを参照しました。
「東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座」
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/beating/016.html
「臼井 隆志さんのnote」
https://note.com/uss_un/n/n844a59514719


社内の議論では、そこに相互の信頼や尊敬の関係がないと成立しないだろう、というような指摘もありました。


確かに、私たちが普段やっていることは、「認知的徒弟制」で議論されているようなことなのかもしれません。
経営コンサルティングについて、知識や分析手法に注目が集まりがちですが、ほんとうは、会社・事業・コミュニケーションといった複雑なコトを丁寧に(解きほぐしながら、でも、全体感を維持したまま)捉えることの方が大切で難しいことなのだと思います。
そういう意味で、「文脈」理解の"流派"を繋いでいく「徒弟制」は、私たちにとって大切なことだと改めて認識しました。



もっと精度を高めていくために、考えを深めていきたいと思います。


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