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【速攻解説】暗号資産業界横断ステーブルコイン「XJPY/XUSD」って、何?

こんにちは、プログラマブルな信頼を共創したい、Progmat(プログマ)の齊藤です。

2023年11月6日に、プレスリリースを発信しました。
タイトルは、「Gincoと三菱UFJ信託銀行およびProgmatの協業による、暗号資産業界横断ステーブルコイン「XJPY」「XUSD」の共同検討開始について」です。

先日の日経電子版/朝刊でも報道されていた取り組みです。

※齊藤が認識している限り、「セキュリティトークン(ST)」を”デジタル証券”という呼称で呼び始めたのは日経新聞だったはずですが、「ステーブルコイン(SC)」も”デジタル通貨”という呼称でまとめる方針を感じます…

プレスリリース等を実施したイベント週では、
情報解禁後いち早く正確に、背景と内容についてこちらのnoteで解説していくことにします。

ということで、第6回目の本記事のテーマは、
「【速攻解説】暗号資産業界横断ステーブルコイン「XJPY/XUSD」って、何?」です。

結論、国内外の暗号資産関連業者間の資金決済用ステーブルコインです

「XJPY/XUSD」の想定利用者は、暗号資産取引や海外送金等を行う個人ではなく、暗号資産関連業者(法人)です。

暗号資産関連業者は国内法人だけでなく、海外法人を含みます
日本↔海外の暗号資産関連業者が資金決済を行う際に、利用することを想定したステーブルコインです。

国内外のやり取りを想定しているため、コイン名のとおり、円建て(XJPY)のみならず米ドル建て(XUSD)も同時に提供します。

資金決済の対象取引ですが、国内外の暗号資産関連業者が行う取引=自己勘定での暗号資産売買取引です。

このステーブルコインの必要性を理解するためには、
まず前提として、”国内外の暗号資産関連業者が行う自己勘定での暗号資産売買取引”について、ざっくりどんな世界かを理解する必要があります。

暗号資産の超過需要に応えるために必要なこと

みなさんご存じのとおり、暗号資産が欲しい方(需要側)と暗号資産を売りたい方(供給側)で日々取引が行われています。
取引の場を提供しているのが、暗号資産交換業者の方々です。

ある暗号資産交換業者Xの顧客群で、圧倒的に需要が勝っている場合、どんなビジネスチャンスがあるでしょうか?

当該交換業者Xは、他の交換業者Yから暗号資産を調達(自己勘定で購入)し、スプレッドを載せて自社の顧客に売却することで、収益を生む機会があります。

ここでふと疑問に思うのが、出し手となった交換業者Yは、どこから暗号資産を調達してきたのでしょうか?
交換業者Xの顧客群は「需要超」なのに、交換業者Yの顧客群は「供給超」という状態は定常的なのでしょうか?

ご想像のとおり、
多くの場合、国内の業者Xも業者Yも顧客の需給にそこまで大きなギャップは生じづらく、国内業者間のネットワークでのみ暗号資産を売買していても”不足”を埋められないため、
海外のリクイディティプロバイダー(LP)ともネットワークで繋がり、調達(自己勘定で購入)することが必要になっています。

暗号資産関連業者間取引における、”グローバルスタンダード”と日本市場の実態

ということで、国内合計の需要超に応えるために、海外LPから調達している現状について共有しました。

では、暗号資産関連業者間の暗号資産取引(取引所がLPから暗号資産を購入)における資金決済(取引所からLPに対する購入資金送金)は、どのように行われているのでしょうか?

”日本以外”では、ステーブルコインでの取引が主流です。
24時間365日、関連業者の所属する国に関係なく、相手先のパブリックブロックチェーン上のアドレス情報さえあれば、資金を直接送受信することが可能だからです。

ところが、2023年11月時点の日本では、ステーブルコイン決済は主たる方法ではありません。
国内において、ステーブルコインが「電子決済手段」として法律上の定義が確定したのは、ついこの間です(2023年6月施行)。
暗号資産関連業者の自己勘定での利用とはいえ、これまでは「正面きって使うのはハードルがある」状態ではあったかと思います。
(為念、利用している事例もゼロではないと思います)

では、どのような決済方法が現時点でとられているかというと、
なんと銀行送金です。

しかも、海外LPがわざわざ日本にローカル法人をつくり、当該ローカル法人が銀行口座を開設し、他の国内暗号資産交換業者の銀行口座との送金を行う、という”遠回り”な方法です。

海外LP本体からすると、
日本のローカル銀行の営業日/取引時間に縛られ(取引機会の逸失)、かつ法人間決済の銀行送金手数料を負担することになり、
”日本以外”のグローバルスタンダードと比較すると”劣後”した状態であることは自明といえます。

暗号資産関連業者間決済の「現状」と「解決の方向性」

日本円決済の取引だけをみても、
実はすでに月間数千億円規模の取引実態があり、かつ今後の拡大が見込まれている市場です。

したがって、
課題を解決できた場合のインパクトは決して小さくなく、
今後の暗号資産関連市場を盛り上げていくうえでは、必須のインフラ整備の1つであると考えています。

具体的な実現方法

ここで思い出したい、「信託型ステーブルコイン」スキーム

過去記事をご覧いただいている方は「もうお腹いっぱい」感があると思いますが、実現方法を解説するうえで必須の部分のため、
「信託型ステーブルコイン」スキームについて再掲させてください。

信託型ステーブルコインスキーム(再掲)
信託型ステーブルコインスキームの資金の流れ(再掲)
  1. 【信託委託者】=●●コインを発行するための信託(以下、SC発行信託)を設定する、企画者/ビジネスオーナーです。

  2. 【信託受託者】=委託者の指図に基づき、裁量なくSC発行信託の管理を行う、法的には信託型SC発行体としての業規制を受ける主体です。

  3. 【預金取扱者】=SC発行信託でSCの裏付けとなる金銭について、預金として受け入れ運用する金融機関で、信託委託者の裁量で決定します。(必ずしも信託受託者自身とは限りません

  4. 【仲介者】=信託委託者又は受託者からSCを調達し、SC利用希望者に対して各種交換機能(SC⇔法定通貨、SC⇔他SC、SC⇔暗号資産、等々)を提供するチャネルです。

  5. 【SC利用者】=SC発行信託の受益者(信託受益権保有者)、という位置づけになります。

このスキームのミソは、次の2点でした。

  • 「信託受託者」は法的にはSC発行体として業規制を受けるものの、ビジネスオーナーではない、”無色/中立の発行する器”に徹する

  • ●●コインを企画し裁量を発揮するビジネスオーナーは、
    実は何のSC関連ライセンスも要さない「信託委託者」

※このスキームを使うと、実に様々なタイプのコインを生み出すことができる点については、以下の記事でポイントを解説しています。

「XJPY」「XUSD」のスキーム参加者

全体像は以下の図表をご覧ください。

「XJPY」「XUSD」のスキーム概要
  1. 【信託委託者】=Ginco

  2. 【信託受託者】=三菱UFJ信託銀行

  3. 【プラットフォーム】=Progmat Coin

  4. 【預金取扱者】=任意

  5. 【仲介者】=原則、設置しない想定(利用者は不特定の個人ではなく特定の暗号資産関連業者に限定されるため、受託者と直接取引)

  6. 【SC利用者】=海外LP(Cumberland Global)、暗号資産交換業者(ビットバンク、メルコイン)等々

今回のコインの企画者=ビジネスオーナー=【信託委託者】は、業務用暗号資産ウォレットで国内トップ(※)の導入シェアを誇る、Ginco様です。
※2023年 Ginco様調べ

Ginco様の提供する業務用暗号資産ウォレット「Ginco Enterprise Wallet(GEW)」は、多くの暗号資産交換業者で導入されており、
「XJPY」や「XUSD」を用いた業者間決済を行うためのインターフェイスとして、既存の「GEW」のインターフェイスを有効に活用することで、
シームレスに新たな決済取引に移行
することを企図したものです。

また、利用者である暗号資産関連業者のうち”先行検討組”として、海外LPから1社、国内暗号資産交換業者から2社、今回のタイミングでの社名公表となりました。

Cumberland Globalは、グローバルマーケットで最大手のLPであり、
今回の参画によって「XJPY」「XUSD」の実効性が格段に向上する点は、言うまでもありません。

本ネットワークは、国内外の暗号資産関連業者にとって既存の自社事業と特に競合する領域ではない「共創領域」です。

また、決済ネットワークである以上「ネットワーク効果」が重要であり、国内外でより広範な参加者が参画した方が、全体の効用が高まります。

したがって、
参画可能な関連業者の範囲をしぼって優遇するようなものではなく、「開放的/中立的なネットワーク」である必要があります。

より多くの関連業者の皆さまにご参画/ご利用いただけるよう、
プレスリリースを契機として呼びかけていきたいと考えています。

最後に…

先行報道されたタイトルだけ見て、有料の本文を読まないままですと、
「既視感…?」(ステーブルコインで国際決済、自体は9月にも報道有り)という感じだったかと思います。

プレスリリース本文、および本記事をご覧いただき、
「何を解決し、どんなインパクトが見込めるプロジェクトか?」について、ざっくりご理解いただけましたでしょうか…?

本プロジェクト以外にも、

  • ST決済(DVP)を念頭においたコイン(含むクロスチェーン)

  • 銀行連合コイン

  • Binance協業コイン

等々、「Progmat Coin」に関する様々な取り組みを極力早く情報公開しながら進めてきています。

更に新規情報公開も予定しており、
いちど「Progmat Coinの各プロジェクトの位置づけ/棲み分け」について俯瞰的に解説する記事もご用意したいと思います。

引き続き、ご期待いただけますと幸甚です!

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