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耐える夏

去年の夏から、一年が経ったらしい。早いような遅いような、色んなことがあったようななかったような、色んな気持ちが混沌としている。

一年前、夏が始まる前に、それまでずっと居場所としていたサークルをやめた。
自分の意思で決めたのに、8月はまるでどこかに放り出されて浮遊しているかのような気分だった。色んな知り合いや友人にも、「そういえばサークルはどう?」と聞かれる度に説明をしては億劫な気持ちになっていた。やめる前には、やめたら楽になれる、せいせいすることもあると思っていたのに、それと同じくらい心はざらついていた。

直接的な悪気はなかったんだろうけれど、サークルの人からは「やめて空いた時間、何してるの?」と言われることもあった。その時に「とりあえず教習を詰め込んでる!」と無邪気に言えるように、ひたすら自動車学校に通った。運転している時間、講義に参加している時間は集中していたけれど、ふと行き帰りの時間には虚無感に陥った。

新しく入るサークルも決まっていたし、サークルに入っていない人なんていくらでもたくさんいるのに、属する場所を断ち切ったことが何故かすごく不安だった。今まで何かをやめたことがない分、これが全部間違いだったらどうしようとか、そういうことをたくさん考えていた。

後にも先にも、あんな夏は過ごしたくない。そんな苦い思い出もあって、私には夏が向いていないなあ、と思うようになったのかもしれない。向いていないというか、夏に生きるのが下手だなあ、と。

日が長くて、イベントだってたくさんあって、大胆な行動だって出来ちゃって。みんなにとっては楽しい夏が、私にとってはなんだか息苦しい。でも秋になって授業が始まるのも、新しいサークルに飛び込むのも、考えるだけで不安になる。

あわあわと状況に馴染む春。それを一段階乗り越えて、襲ってくる空虚な気持ち。でもこれを乗り越えたら楽になるのかなんて分からない。そんな恐怖だった。

結局、秋冬の私はごく普通に上々だった。新しいサークルにはすんなりなじんで、楽しくバイトをして、面白い人にもたくさん出会った。夏の不安なんてどこ吹く風のような気分だった。

なあんだ、じゃあ夏なんてそんなに心配しなくてもいいんじゃん。そういう風に思えたら楽なのだけれど、今年も例に漏れず不安の爆弾を抱えている。

調子乗ってやるって言ったサークルの仕事、出来るのかな。少人数授業の夏休みの特大課題、出来るのかな。インターン、本領発揮できるのかな。その間にバイトだの友達と遊ぶだのねじ込んで、私、本当に大丈夫なのかな?

何もしないことも怖いけれど、今年は気づいたら色んなものを詰め込んでいた。それもそれで気分が安定しないんだから、教訓を汲んでいるようないないような。

どっちにしてもこんな気持ちになるならば、夏って私にとって「耐え忍ぶ時期」なのかもしれない。
どんな状況でも、ちょっとしんどい。でも、ここを頑張ればちゃんと良い秋や冬が待っている。そして、春に素敵なスタートを切れる。

もしもそれが正しければ、そんな季節があってもしょうがないか、と少しは諦めがつくかもしれない。ひっそりこっそり、冬に向かって下準備を進める働きアリみたい。(往々にして私は働きアリっぽいことが多い)

そんなこんなな振り返りをしながら、夏休みに入ろうとしています。いい伏線を張る夏にするぞ。



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