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妄想会話のはなし

頭の中で勝手にシチュエーションを作り上げて、妄想の会話をすることがよくある。

シチュエーションにはいとまがない。
例えば、友人と遊びに行ったとき。例えば、アルバイトの面接。例えば、全然親しくないサークルの男の子。例えば、仲の良い数人でのグループ。例えば、前のサークルで仲が良かった子。例えば、居酒屋。例えば、車の中。

こんなのを急に想像しては、相手と勝手に会話をしだす。
妄想の会話と言っても、相手に好きなことをしゃべらせるというよりは、自分がすらすらと話していることが多い。そして相手には、うんうんと自分の言い分に納得させたり、自分が話しやすいような質問をさせる。

だいたいこの中では、私は何かに対して弁明をしていることが多い、気がする。遅刻しちゃってごめんね、駅でダッシュしたのに乗り換えが遠くてね、とか。前のサークルを辞めた理由、本当はこれなんですよ、とか。

少し前までは、自分がすごく妄想ばかりしてしまうやばい子なのだと思っていた。けれど、作家の西加奈子のエッセイを読んだ時に、これとそっくり同じようなことが書かれていた。彼女もまた、頭の中でシチュエーションを作り上げては相手と会話をするらしい。

エッセイの中にも書かれていてこれもまた大きく同意したのだけれど、妄想会話の内容は、そのまま現実になったりならなかったりする。本当に予行演習でもなんでもなくて、ただの妄想だ。

本当は話し上手じゃないのに、頭の中の私はすごく論が整理されていて、すっきりと話す。あるいは、何か面白いたとえ話を持ってきたりする。ん、なんか違うな、と思ったらリセットしてもう一回にできる。相手も良い反応を示し続けてくれる。

改めて書くと、変なやつだなあと自分でも思う。でもなぜかやめられない。

現実の会話に不満があるわけじゃないけれど、時折「言いたいことの半分も言えなかった」と悲しい思いをすることがある。それを静かに解消しているのかもしれない。

話し下手はなかなか治らないだろうけれど、似たような方がこそこそと居たらとても嬉しい。一人で弁明会を開いているのはなかなかさみしいので。


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