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【インタビュー】立科町の関係を紡ぐ人々vol.1 地域おこし協力隊 永田賢一郎さん

立科町の関係人口として活躍する人の想いとストーリーを綴るインタビュー企画「立科町の関係を紡ぐ人々」、第一回は地域おこし協力隊として立科町の空き家や空き店舗の利活用事業を行っている、建築家の永田賢一郎さんをご紹介します。


建築家として地域に還元できる価値は何か」を追い求め、横浜と立科町で二拠点生活を送る永田さんに、立科町との出会いや地域おこし協力隊としての働き方、二拠点生活の実態などについてお聞きしました。

永田賢一郎さん(建築家) YONG architecture studio主宰。 1983年東京出身。横浜でストリップ劇場跡を改修したシェアスタジオ「旧劇場」を始め、商店街の空き店舗を活用した設計事務所兼シェアキッチン「藤棚デパートメント」、空き倉庫を活用したシェアアトリエ「野毛山kiez」など、地域のストックを活用した拠点づくりを展開。横浜と長野で二拠点活動中。2020年より長野県北佐久郡立科町地域おこし協力隊。築97年の古商店を活用した「町かどオフィス」を拠点に、自身の建築家という職業をフルに活かした空き家のリフォーム・利活用といった空き家対策のほか、移住相談に取り組んでいる。

建築の立場から地域に還元できる仕事を

-どのようなお仕事をされていますか?

2013年より横浜で建築設計事務所を経営しています。
2016年ごろからは、建築設計のデザインだけでなく、地域の空き家や空き店舗などの不動産ストックの活用や、それらの計画を地域のプロジェクトとして行っていく方策や、一つ一つの物件を地域内外の人々と関わらせて行くための計画の提案などに注力し、地域に寄り添う活動を主軸にしています。

-地域おこし協力隊になったきっかけは?

地域おこし協力隊のことを知る以前から、建築の仕事だけでなく、兼業で大学の非常勤講師や助手などを行っていました。その時、地域おこし協力隊から起業した人の話を聞いて、実際に地域の中に入り込み、より深く地域や行政、そこに住む人々と関わる方法として”地域おこし協力隊”という働き方があることを知り、興味を持ちました。
家族とも「仕事の拠点は横浜で運営するシェアハウスに置くとして、住まいは少し離れた場所に構えたい」「長野県などでゆっくり落ち着いて暮らしたい」などと話しており、引越しを考えていたタイミングだったこともあって、二拠点生活をすることを視野に入れていたのですが、二拠点生活を考えた時、その地域での就職や住む場所など、色々決めなければならないことが多く時間がかかると考えていました。しかし、立科町の地域おこし協力隊はそれらがすべて揃っていたため、募集を見つけてほぼ即決で決めました。

-どうして立科町?

引越し先を検討した時、地域に特にこだわりはなく、候補として近場では逗子や葉山、少し遠くて山梨や千葉、遠くて長野(立科)あたりを検討していました。そんな中で立科は、幼少期の夏休みなどに蓼科高原をよく訪れていて、そこでのクラフト体験が思い出として自分の中に残っていたり、自身の結婚式も蓼科高原で挙げたことなどがあって、愛着を持っている地域でした。
そして、地域おこし協力隊として働くことを決めて検索したときに、上位でヒットしたのが立科町の地域おこし協力隊で、募集していた仕事内容が”移住定住担当”として移住に関する住居などの相談に乗るという、自身の建築の仕事ともマッチした内容であったことで、立科町の地域おこし協力隊に応募しました。

-地域おこし協力隊として働く中で、苦労したことやギャップを感じたことは?

自治体に全て任せて、何から何までやってもらおうと考えていると大変かと思いますが、自身でやりたいことが明確な人、自分の仕事として地域おこし協力隊を捉えている人にとってはそれほど苦労する部分はないかなと感じています。
私は地域おこし協力隊として実現したいことがあり、長野で生活したいという思いもあって、自治体に寄りかからず、地域おこし協力隊の任期が終わる3年後以降も立科町に根ざして仕事をしていくために、自分の事業の延長として地域おこし協力隊の活動を捉えているので、立科の暮らしにおいて全く不満は感じていないです。

-二拠点生活について

横浜の滞在時は、普段は貸しスタジオやシェアキッチンを運営している場所を拠点として利用しています。地域おこし協力隊は住民票を地域に移しての移住となるので、県民としては長野県民ですが、仕事の割合としては、横浜と立科でほぼ同等程度のボリュームをこなしています。
協力隊は役場職員と同様の平日勤務なので、規定の勤務時間も考慮した上で月曜日から木曜日を協力隊として働き、週末の金曜日から日曜日を横浜で過ごすことが多いです。
どちらか一方の地域に偏ってしまったり、どちらかが生活圏でどちらかを仕事圏にするような二拠点生活ではなく、どちらのエリアにも日々の生活があって、地域とのつながりも人とのつながりもどちらも断ち切らず、”地域の中で仕事をする”というスタンスを崩さずに仕事をしています。
また、週末を首都圏で過ごすサイクルに設定していると、基本的な人の流れと逆の動きになり(観光での週末の交通渋滞や、仕事での平日の通勤ラッシュなど)、また、平日に立科にいる方が時間の流れがゆっくりしているので、仕事に集中しやすいというメリットもあります。

-地域おこし協力隊としての活動について

立科町の”移住定住担当”として空き家の利活用を考える、空き家バンクの登録を増やすという仕事を主に行っています。空き家バンクの登録が増えない理由として、地域の外の人(移住希望者)には空き家の状況がわかるが、地域の中の住民には、そこにどんな人が住むことになるのかが見えておらず、なかなか空き家の登録が進まないという状況があったので、立科のローカルテレビに番組を持たせてもらい、”どんな人がどのような家を求めているのかの情報を流す”という取り組みを継続して行っています。それらの活動により、空き家の登録件数が、協力隊の活動の2年目からは今までの3倍くらいに増えました。
また、空き家に関するチラシを若い人たちにも興味を持ってもらえそうな内容に作り直したり、移住相談所や空き家に関する相談所として、空き店舗を活用して”町かどオフィス”という相談場所を開設しました。

相談所での様子

また、若い層の空き家への興味や関心を促すため、高校生向けに空き家や解体中の建物を見せるなどして空き家について学んでもらう授業を行い、彼らにとって空き家が単なる町の課題ではなく、自分の家の将来や祖父母の家のこれからのことに関わってくるという意識を持ってもらうような取り組みをや、地域おこし協力隊という活動を知ってもらい、地域との関わり方には様々なものがある(関係人口)ことを知ってもらう取り組みを行っています。

蓼科高校での講義の様子


2022年には立科町の内外の空き家の活用や DIYに興味があるみなさんと一緒に、 町が所 有する住宅(空き家) を舞台に DIYを行いながら、 増え続ける 空き家の可能性を考える全5回のワークショップ※を開催しました。そして今回、 DIYを行った住宅は、 実際 に移住者向けの住宅として提供を予定しています。

「空き家 DIY in立科町 2022」の様子

※空き家 DIY in立科町 2022についてはこちら▼
https://team-place.com/event/75

-立科町のこれからについて

”空き家バンク”や”移住”となると住むことに直結してしまいがちですが、物件の活用方法は住居だけではないので、店舗や事務所など多様な活用方法を提示していきたい。お店や働く場所が増えれば町が活性化して、結果として移住促進にもつながると考えています。実際、空き家バンクから物件を購入して、今年3件飲食店ができる予定で、来年4月以降、立科町の中がさらに面白くなると思っています。
また、リゾートエリアに割いているリソースを里エリアの方にもう少し回してみると移住も進むかと。

それらのためには民間の事業者が参入した方が進みやすいとも感じているので、横浜と立科で二拠点生活を送っている強みを活かして、地域の外から人や事業者を立科町につなぐ取り組みを行っていけたらとも思っています。

-今後の展望

来年で協力隊の任期が終わる予定なので、アーティストレジデンスやカフェなどの飲食系の滞在場所、地域の拠点となる場所をさらに作り、エリアをリノベーションする活動を行っていきたいと考えています。
また、民間を誘致するには民間の力が必要だと感じているので、自分自身も一事業者として立科町と関わる仕事がしていきたいと思っています。

立科町は電車の駅がなくて不便もあるけれど、それゆえに開発がされず、手付かずで良いものが残っています。しかし地域の中の人はその価値に気づかない場合もあるので、外から来た人が関わる役割として、既にあるものの価値や魅力に気づかせてあげる、今あるものに価値をつけるということがあるのかなと感じています。現在はその岐路にいると感じていて、このまま空き家が増えて、人々が価値に気づかずに潰していくと、良いもの、価値のある建物がどんどんと失われていってしまうので、それを失くさない取り組みをしていきたい。

また、同じ生活圏に日常と非日常があるのはとても良い環境だと思うが、知られていないし活用されていない現状があるので、民間の力が入るともっと面白くなると考えています(今は役場の仕事というイメージ)。
住むところだけでなく、民間企業が入って掘り起こしたり仕事を作ったりできたら良いと思うし、タテシナソンで空き家などのストック物件の活用の可能性について考える企画があると面白いと思います。


地域おこし協力隊として、自治体の仕事とご自身の想いをリンクさせてプロジェクトを行っている永田さんへのインタビューはいかがでしたか?

次回は、立科町の誇る学生アイデアソン「タテシナソン」について、その企画と実施を担当する株式会社アイクの甘利さんにお越しいただきます。お楽しみに!


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