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<まえがき>自粛期間中、スマホをいじる時間が増えました。ニュースやSNSを見たり、買いものをしたり、ゲームをしたり。あれもこれもとインストールしていたら、知らない間に、スマホの中がアプリで「密」になっていました。今回は、そんな私達の身近にあるスマホアプリのUIデザインをしている人に話を聞いてみました。

―どんなお仕事をされていますか。
スマホアプリの「使いやすさ」をデザインしています。
UIデザインを専門に手掛ける会社で働いています。UIとは「ユーザー・インターフェース」の略称です。広告などのグラフィックデザインと大きく違うのは、デザインしたものが見られるだけでなく「使われる」こと。デザイナー=デザインするだけというイメージかもしれませんが、実際に手を動かしてデザインするのは2、3割に過ぎません。それよりも「どういうアプリなのか」「どういうユーザーを想定しているのか」「どういうアクションを望んでいるのか」などクライアントと打ち合わせしたり、「どこにどんなページを作るか」「どういう風に飛ばすか」「どんなボタンを配置するか」など最適な導線(ワイヤーフレーム)を考えたりするのが業務の大半を占めます。日頃、当たり前のように押しているスマホアプリ。実はそのボタン一ひとつが色形はもちろん、その上にどんなラベル(文字)を乗せるかなど、細かいところまで考えられているんですよ。

―コロナ以前と比べて、どんな変化がありましたか。
会社から自宅へ。仕事場が変わっただけで、特に変化はありません。
クライアントは大手のメーカーが大半を占めます。緊急事態宣言が出される少し前、クライアントのリモートワーク化が進んだことを受け、うちの会社でも一気に在宅へと切り替わりました。もともと会社でもデスクトップパソコンではなく、ノートパソコン(MacBookPro)が支給されていました。また、以前から遠隔地の打ち合わせでZOOMを利用していたこともあり、在宅ワークへの切り替えもスムーズにいきました。仕事の進め方にもほとんど変わりはありません。期間は短いもので3か月。長いもので6カ月。広告制作のような急ぎの案件はありません。打ち合わせをして、そこで話したことを実際のデザインに起こし、再度打ち合わせをする、その1週間のサイクルを延々と繰り返します。移動時間もなくなったため、むしろ以前よりゆとりを持って取り組めている気がします。

さすがのオンラインも、ワークショップには不向きでした。
一つ、不便があるとしたら、ワークショップができないことです。私達が手がける案件は、商品やサービスが明確に形になっていない開発段階のものが大半を占めます。そのため、商品開発や新規事業部門の担当者、マーケター、ITエンジニアなど色んな人がチームとなり、アイデアを出し合いながら進めていかなければなりません。ワークショップはそのための場所です。たとえば、個別のグループに分かれて「こういう状況ではどんな機能があったらいいか」などアイデアを出し合っていきます。オンラインでも同じようなことをできなくはないのですが、一人が話していると他は発言しにくかったり、意見を言う場合も一呼吸置いてしまったりして、なかなか上手くいきません。ホワイトボードにアイデアを書いた付箋を貼りつけ、ああでもない、こうでもないと話し合う。そういうアナログの場が、実は考えを深めていく上では重要だったんだと今は実感しています。

―これから業界は、どう変わっていくと思いますか。
副業・兼業など、色んな働き方が認められていくと思います。
コロナを機に、一人で仕事をすることが増えました。今は、極端な話をすると、ZOOMさえあればどこにいても、どこの仕事でも受けることができます。コロナ以前もクラウドワークスなどで副業・兼業が増えていましたが、今後はそれに一層拍車がかかるような気がします。私自身に関して言うと、これまでフリーランスとして仕事をしたことはありません。それだけに、以前は一人で仕事をすることに憧れがありましたが、実際にこういう立場になってみると、戸惑いや寂しさもあります。ワガママかもしれませんが効率の良さや・自由とは別に、適度な距離に人がいて、雑談したり、相談したりするのも大切だと思うようになりました。できればこれからは、組織に属するかフリーランスかの二者択一ではなく、色んな働き方・稼ぎ方があって、その中から柔軟に選べるようになってくれると嬉しいです。

“今だけ”ではなく、次の世代のためにも、より良い社会へ。
プライベートな話になりますが、今年、子供を授かりました。出産予定日は7月です。今は健康診断やスーパーに買い物に出かけるのを除けば、一切外出せず、夫婦二人閉じこもって暮らしています。幸いなことにコロナによる影響はさほどありませんが、それはあくまで今の段階に限ったこと。この先、経済がどうなるのか、仕事がどうなるのか、会社がどうなるのかは分かりません。もっと大きなことを言えば、10年、20年先、世の中はどうなっているのか。自分はまだ社会に必要とされているのか。子供達は大丈夫なのか。たまに漠然とした不安に襲われることがあります。残念ながら、仕事でアプリの導線は考えられても、人生のワイヤーフレームは引けません。せめて子供達のためにも、今良ければ、自分さえ良ければいいという考え方ではなく、もっと長い目で、少しでもいい方向に変えていければと願っています。
(Oさん/UIデザイナー)

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コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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