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第20回「消費増税、コロナ…何の罰ゲームですか」飲食備品営業

●飲食店の状況を教えて!
●これからは営業のやり方も変わってくるの?
●自分を鼓舞するために毎日やってること
<まえがき>今回のコロナで”深い傷”を負ったと言われている飲食店。今回はそんな飲食店の運営に欠かせない、フライパン、スプーンなどの飲食備品を扱う営業さんにお話をお聞きしました。コロナはもちろん、それ以前から続く飲食店の苦境が見えてきます。


―どんなお仕事をされていますか。

飲食店専門の備品メーカーで営業として働いていますたとえば、フライパン・お鍋・お玉などの厨房用品、グラス・バンケットなどのフロア商品、それから店頭のサイン、ワゴン、清掃用品、ユニフォーム…飲食店を経営するには様々な備品が必要です。うちの会社は、商品点数何万点。カタログはまるで電話帳みたいな厚さなんですよ。

お客様は飲食店とのつながりのある食器メーカーや飲食店専門の商社など。そこへのルート営業がメインですが、私はそれ以外にも、エンドユーザーとなる飲食店とも個別にお取り引きしたり、新規開拓にも力を入れています。新規出店やリニューアルオープンの際に、店の備品丸ごとお任せしてもらえると「よし!」って感じですね。

―飲食店へのコロナの影響はどんな感じだったんですか。

飲食業界の苦境は、コロナに始まったことではありません。実は、昨年10月の消費税アップで既にかなりダメージを負っていました。客足が冷え込み、そのまま年末を迎え、年明けになってやや回復傾向にあった矢先、襲ってきたのがコロナです。2月、3月はどこのお客様先でも「マスクない!? マスク頂戴!」と言われました。多少の取り扱いはありましたが、すぐに在庫が切れてしまいましたね。飲食店の多くが感染対策はもちろん、その他、客足の減少、時短営業などで、大きな影響を受けています。

私の営業所近くにいくつかあった老舗の居酒屋も軒並み閉店してしまいました。中には5月、6月に入り、営業を再開しているところもありますが、これまで50人入っていた店内に、半分の25人しか収容できないなど大きなハンデを負っています。元通りになるのは、本当に難しいと思います。

―営業のやり方に、何か変化はありますか。

これまで会社の経費でセミナーに参加したり、飲みに出かけたり。個人事業主かってくらい、自由に動いていました。「自分のお店を出したい」という人を見つけたら、信頼関係を築いて、いざOPENする時、備品を任せてもらう。時間もお金はかかるけど、そしたら、二重にも三重にも嬉しいじゃないですか。でも、コロナ後は効率が悪いため、自由な営業活動にストップをかけられてしまいました。今は全然違う、ルート営業みたいなことをしています。そもそも、夜の付き合い自体がなくなってしまったし、こんな世の中では新しい店を出そうと言う人もなかなかいませんしね。

今は、会社の指示を受け、お金を持っていそうな顧客のもとを回るだけです。たとえば、医療機関にお弁当を卸している工場や、役所内にある食堂、そこに食材を卸している会社など、コロナ下でも“勝っている会社”もあるんです。そういう顧客に狙いを定めて、効率よく無駄なくアプローチをかけるのです。正直、楽しいとは思えませんが、生き残りがかかっている今は、やむをえないかなと言う感じです。

―これから業界(世界)は、どう変わっていくと思いますか。

仕事終わりに、みんなで連れ立って飲みに出かける。ほんの3か月前まではどこでも見られた光景です。でも、これからは少なくとも“当たり前”ではなくなりました。営業として働くには、それを踏まえた上で動かなければならないと思います。たとえば、これまでは「新しい商品を作った」と言ったら、それだけで買ってもらえました。でも、これからはそうはいきません。お客様も新しいものなんて買わないし、今あるものを壊れるまで使うようになるでしょう。

営業する上では商品ではなく、違うものが求められるようになります。たとえば、飲食店のことなら「こいつに聞けば何でも教えてもらえる」と相談を持ち掛けられるようになること。自分で解決できなくてもいいんです。知ってる人につなげる、ハブとして機能すれば。実はこれは以前から目指してきたポジションなのですが、正直、荷が重いとあきらめかけていた部分もありました。でも、もう一度、お客様のためにも頑張ってみたいですね。

―今、何か頑張っていることはありますか。

人って、いくつになっても周囲から「すごいね」「頑張ってるね」って認めてもらいたいもの。でも、仕事で認めてもらうのってハードルが高いですよね。特にコロナ以後は求められることもシビアになるし。だから、その自己承認を満たすのは、必ずしも、仕事に限らなくてもいいのかなと。

たとえば、私の場合、顧客との付き合いで始めたジョギングがあります。このリモートワーク期間中は家の近所をずっと走っていました。面白いもので、走れば走るほど早くなります。最初は5kmを25分くらいかけて走っていたのですが、それが5月末には23分切りました。「1km5分を切った」と言うと、みんな「すごいね」って褒めてくれます。仕事なら絶対ありえません。小さいことなのかもしれませんが、そういうことの積み重ねが大事だと思います。何かと大変な世の中。努力できるのは、努力は裏切らないと信じられるからこそ。自己承認欲求と上手く付き合って、仕事でも頑張っていきたいです。(Yさん/食器備品営業)

マスクの向こう側では取材対象者を募集しています。
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「コロナをきっかけに、こんな変化が起こっている」
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可能な限り取材いたします(オンライン・1時間程度)。
※対象者の氏名等、個人情報は基本匿名にします。
【連絡先】
masukunomukougawa-2020@yahoo.co.jp
コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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