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二拠点生活者が見たコロナ【第29回】マスクの向こう側

<まえがき>住んでいるエリアによっても、コロナの影響は様々です。今回はコロナ以前より、東京と地方、二つのエリアにまたがって生活を送っている二拠点生活者にお話をお聞きしました。コロナは自分のことしか考えられない、利己的な人類に「いい加減にしろ」と言っているような気がする。その真意とは。。。

●二拠点どころか三拠点
●時代が私についてきた
●「森はうるさい」

―自己紹介をお願いします。
都心の会社で働く、普通のサラリーマンです。勤務時間に縛りがなく、自由な働き方が認められているのをいいことに、コロナ以前から二拠点生活を送っています。

―二拠点って、どことどこですか。どうして二拠点にしたんですか。
東京と京都です。1年ほど前に妻から「育児や介護のことも考えて、これからは実家に戻って生活したい」と切り出されたのがきっかけです。妻の実家は京都の田舎にあり、周囲の自然がとても豊かです。「子供を育てるならそちらだな」と僕も賛成でした。ただ、問題は仕事です。今の仕事は面白かったし、辞めたくはありませんでした。そこで、とりあえず妻と子供だけ実家に戻ってもらい、僕はそこと東京を行ったり来たりする二拠点生活を始めることにしました。

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もともと会社は「外作業」とホワイトボードに書けば、オフィスにいる必要のない、ゆるい環境です。2週間京都の実家にいて、2週間東京にいる、そんな生活を送っても、誰にも気づかれることはありませんでした。ついでに言えば、この5月まで妻の家族と同居していたのですが、色々あって、更に奥地に引っ越しました。日中はその新しい家で、夜ご飯だけ妻の実家。そこに定期的に来る東京を含めて「三拠点」と言ってもいいかもしれません。

―その時期、県をまたいで移動するのは大変ではありませんでしたか。
それは、もう。4月、東京のマンションで荷物をまとめて京都に戻ろうとしたのですが、妻の実家から連絡があって、はっきりとは言われませんでしたが、“あまり戻ってきてほしくない”ということでした。でも、しょうがありません。社会全体が、県外移動に敏感になっていた頃のことです。当時「5日間症状が出なければ概ね問題ない」ということだったのでそれを信じて、まず1週間、東京の自宅で隔離生活を送り、その後、京都に移動。1週間ホテルで隔離生活をした後、ようやく京都の実家にたどり着きました。5月に引っ越した山奥の集落に関しては、4つしか世帯がないし、触れ合う際も距離を保てるので、全然問題ありませんでした。むしろ、移住者として率先して受け入れてもらえました。

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―コロナ前後で、どんな変化がありましたか。
人によって色々だと思いますが、僕にとっては良かったです。家族と過ごす時間が増えた、自然と触れ合う時間が増えた他、二拠点生活が事後承認されたことが大きいです。以前は会社の上層部には伝えていたものの、やはりコンプライアンスの観点から会社公認とはいかず、隠れてやっていました。会議をやる時もみんなオフィスにいて、僕一人がリモートで参加という感じでしたが、リモートワークが当たり前となった今はみんな一人一人です。「どこにいるか」なんて誰も気にする人はいません。一応、今後のことも考えて東京のマンションは残すつもりですが、仕事に関しては拠点を構える必要もなくなるのではないかなと思います。

―5月に引っ越した、三拠点目の家はどんな感じですか。
山のふもとにあって、庭にへびが出ます。近くの水辺にいけば、蛍が普通に腕に止まってきます。映像としては見たことあるけど、まじまじと見ることってないじゃないですか。蛍って、人を怖がらないんですよね。驚きでした。あと、『海辺のカフカ』の一節に「森がうるさい」という表現があるんですが、普通、森って静かなイメージですよね。僕もそれを読んだ時、いまいちピンとこなかったのですが、ここに来てそれを実感しました。家のすぐ裏に森があるのですが毎朝、鳥のさえずりがすごいんです。何十種類、何百羽もの鳥が一斉に鳴くんです。うるさいけど、決してわずらわしい感じではありません。ずっと聞いてられます。そのさえずりで、目を覚ました朝はすごく幸せな気持ちです。

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その点、東京はうるさいだけです。緊急事態宣言が6月に明けて、ようやく戻ってきましたが、電車もそうだし、車の音もそうだし、絶えず妙なブーンという音が聞こえています。雑音だらけです。“ここでずっと生活していたのか”と思ったら、ちょっと怖くなりました。

―田舎暮らしに不便は感じませんか。
不便さを挙げればきりがありません。でも、今は自然もそうだし、人の良さとか、いいところが目につきます。先日、道を歩いていたら警官に声をかけられました。きっと職務質問されるんだろうと思ったら、「あんた移住してきた人だよね。私はこの辺で警官をやっている者です。何かあったら言ってください。よろしく」と自己紹介されました。田舎だから人がいいのかどうかは分かりませんが、聞かれる前に、名乗られるって、普通ありえないですよ。警察官に。折しも、米国で警官による市民への暴力が問題視され始めた時です。日本は平和だなと思う一方で、こうして日頃から仲良くしておくことが大切なのだとしみじみ思いました。

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―コロナという事象をどういう風に捉えていますか。
今の世の中、何でも自業自得。自分の得にならないものは一切顧みない。そういう人が増えました。犬猫の可愛らしい映像がSNSで何千・何万回とリツイートされる一方で、毎年、何千・何万頭という犬猫が殺処分されています。そして、そのニュースはまったくシェアされません。世の中のいい側面に目を向けるのはいいことですが、そうではないものもたくさんあります。道端に綺麗な花が咲いているとして「ほら、こんな小さい花でも頑張って咲いている!」と感動するのもいいですが、その反対側では倒れて困っている人もいるわけです。「愛でるより、まず、そっちを何とかしようよ」と言うと、「どうしてそういうことを言うんだ!」となります。


今、コロナのことをビジネスチャンスとか言う人もいるようですが、僕はそうではないと思います。神様がそういう人の振舞いを踏まえた上で「人類、いい加減にせえよ」と言っているのだと思います。格差社会についてもそうです。コロナは貧乏人にも金持ちにも等しく襲いかかります。これが他のウィルスであれば、金持ち我関せずと言ったところですが、感染力の高いコロナの場合、無視できません。感染者が増えれば増えるほど、金持ちにとっても感染リスクが高まるわけです。これは裏を返せば、金持ちも貧乏人に手を差し伸べた方が「自分のためになる」ということです。利己主義しか選択できない人類に、神様が「だったらこうしよう」と仕方なしに下した決断ではないでしょうか。どう転ぶかは分かりませんが、世の中、コロナをきっかけに少しでもいい方向に変わってほしいと思います。(Gさん/二拠点生活者)

マスクの向こう側では取材対象者を募集しています。
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可能な限り取材いたします(オンライン・1時間程度)。
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【連絡先】
masukunomukougawa-2020@yahoo.co.jp
コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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