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入江うりさん(第62回優勝)インタビュー Vol.6-2

 前回に引き続き、ミュージカルオーディションショー・第62回スマッシュキャバレーで優勝した入江うりさんのインタビューをお届けする。


前編はこちら(スマッシュキャバレー編Vol.6−1)


5 「今回、初めてスマッシュキャバレーでステージを楽しめた」

いい意味でちょっと適当になれたかな

準決勝で大好きな曲を歌う入江さん

 今回、入江さんのステージで最も印象的だったのは、そのオープンマインドなスタンスだ。自らの感情をてらいなく見せ、会場の反応を即座に受け取り、素直に返す。その居方はとても自然で、ステージという非日常的な空間を自由に楽しんでいるように感じられた。しかし、意外にもその境地にたどり着くまでには試行錯誤の過程があったようだ。

「今回、初めてスマッシュキャバレーでステージを楽しめたかなって。今までは、もう緊張して緊張して・・・という感じだったんですけど、2回目のスマッシュキャバレーが終わった後に、舞さん(MCの西岡さん)にアドバイスをいただいたら、“もっと適当になっていいよ”って言われて。そこから“適当”というのを思いながらずっと練習してきたので、今回、ステージの上で、いい意味でちょっと適当になれたかなって」

― “適当”というのは、簡単なようで実は難しいことである気もしますが、具体的にはどんなことを意識されたのですか?

「あんまり自分に期待をしない、とか。勿論、優勝は狙っていたんですけど、ステージの上では、もう失敗してもどうなってもいいし、何も考えずに、とにかくただ板の上に乗って歌うというか。楽屋でも、ずっと“適当に、適当に”ってマインドコントロールみたいなことをして(笑)」

― その瞬間を楽しむという感じでしょうか。

「そうです。そうしたら自然と“楽しむ”につながったかなと思います」

 準決勝では大好きな曲だからこそ地に足を着けて歌い、決勝ではその瞬間の感情を大事に、柔軟な感性で演じ切った入江さん。観る者を惹きつける活き活きとした演技は、雑念に惑わされず、ただシンプルに、自らを解放してステージに立ちたいという強い意識のもとに実現したと言えるのかもしれない。


6 「全員で力を合わせてステージに立っている感じ」

スマッシュキャバレーの魅力

 スマッシュキャバレーの魅力といえば、高い技術力と、演者のキャラクターや感情が沸々と溢れ出すような演技。そして、会場全体で音や気持ちを共有し、共にステージを作り上げていく高揚感にあるように思う。
 そして、開放感と喜びに満ちた入江さんの演技からは、そんなスマッシュキャバレーならではの空気感と"スマッシュ愛"が随所で垣間見えた気がした。そのことを伝えると、「えー、嬉しいです!」とはにかんだ笑顔を浮かべながらも、「今回特に“やってやる!”という気持ちが強かったので」と熱く答えて下さった。

ショーのエンディングで共演者と歌う入江さん

― 入江さんにとって、スマッシュキャバレーの魅力はどんなところにあると思われますか?

「スマッシュって、お客さんと楽しんでいるっていう感じが本当に強くて。言葉にするのは難しいんですけど、スタッフの方やMCの方がすごい優しくて、いつもステージに立つ時は1人で立っている感じなんですけど、スマッシュでは、他の出演者の方とピアノの(久田)菜美さんとMCの方の全員で力を合わせてステージに立っているっていう感じがして心強い。それがスマッシュの一番の魅力だなって思います」

― 確かに、互いをリスペクトして仲間として応援し合う雰囲気がありますよね。

「スマッシュに出る度に、仲間感がすごい大きいなって思います」

終演後、役になりきって1枚!

7 一番の目茶苦茶大きい夢は・・・

自分のペースで、丁寧にコツコツやっていきたい

―  今後の展望がありましたらお聞かせください。

「今後も常にお客さんのことを一番に考えて、より丁寧に、1つ1つちゃんと自分のペースで。周りがすごい人たちばかりなので、ここに来ると焦りがちなんですけど、変わらず自分のことだけを見て、丁寧にコツコツやっていきたいなと思います」

―  挑戦してみたいことはありますか?

「一番の目茶苦茶大きい夢がアメリカのブロードウェイなので、今、TOEFLの勉強を毎日やっているんですけど、アメリカの学校に受かれるように頑張りたいなと思います」

― 今年のスマッシュキャバレーグランプリもブロードウェイへの第1歩になるかもしれないですね。

「そうですね。今日からまたコツコツとやっていきたいなと思います!」

― これからのご活躍も楽しみにしています!

「ありがとうございます!」

 グランプリ出演を目指し、挑戦を重ねてきた入江さん。彼女のオープンなスタンスの源には、歌や演技に対する高い志とスマッシュキャバレーへの愛があることを実感させられた。
 自らの目指す方向や課題を見据える誠実な姿勢と、ステージでの底抜けに明るく柔軟なあり方は、パフォーマーとしての入江さんの大きな強みといえるのではないだろうか。今回、優勝という目標を達成されたように、この強みを携えて、彼女がいつの日か「目茶苦茶大きい夢」を叶えるその日を心より楽しみに待ちたい。


8 「人生をCelebrate(祝う)」する空気

 スマッシュキャバレーのホームページには、ブロードウェイのキャバレーショーにおける「パフォーマーとお客さんの間に壁がなく、ミュージカルを通して一緒に人生を”Celebrate(祝う)”している空気」(※1)を日本でも広めたいというプロデューサーの思いが綴られている。
 そして、今回のステージを通し、その空気が徐々に根付いてきていることを感じた。今後は、このショーを愛する出演者や観客によって、ここでしか得られない雰囲気も醸成され、さらに魅力的なイベントに成長していくことだろう。2023年のスマッシュキャバレーの可能性の広がりにも大いに期待を寄せたいものである。

(Tateko)

※註
(1)スマッシュキャバレー公式ホームページ「ABOUT US」より引用、https://smashcabaret.com/about(2023年3月31日時点)


■プロフィール: 入江うり(いりえ・うり)

母に勧められたのがきっかけで、児童劇団「大きな夢」に小学2年生から高校3年生までの10年間所属。高校卒業後はスリランカやアメリカで生活したり、東京でボイストレーニングやダンスレッスンを受けている。夢はブロードウェイのライオンキングの舞台に立つこと。


文章・企画構成:Tateko
写真:中山駿
協力:SMASH CABARET
 
https://smashcabaret.com/
   中目黒TRY

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