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入江うりさん(第62回優勝)インタビュー Vol.6-1

 動画審査を勝ち抜いた出演者がパフォーマンスを行い、観客審査によって優勝者が決まるコンペティション形式のミュージカルオーディションショー、スマッシュキャバレー。
 1月13日、2023年初のショーが行われた。選曲テーマがフリーの中、偶然にも同じ曲を選んだ出演者が多く見られたが、そこは個性的なパフォーマーが集まるショーだけあって、各人が異なる表現で自らの世界を作り上げ、より刺激的なステージが展開されていた。
 そのような中、3回目の挑戦で優勝を勝ち取った入江うりさんにお話を伺った。

 今回はその前編をお届けする。(後編はこちら

入江うり(いりえ・うり)

母に勧められたのがきっかけで、児童劇団「大きな夢」に小学2年生から高校3年生までの10年間所属。高校卒業後はスリランカやアメリカで生活したり、東京でボイストレーニングやダンスレッスンを受けている。夢はブロードウェイのライオンキングの舞台に立つこと。


1 グランプリの生バンド演奏に憧れて

― 優勝おめでとうございます!

「ありがとうございます」

― 優勝が決まった瞬間はどんなお気持ちでしたか?

「もう言葉が出なくて、とにかく震えが止まらなくて・・・。
今まで3回出場したんですけど、1回目は周りの皆さんがすごくて、決勝に出られただけでもすごい満足して。2回目もまだ自分に自信がなかったので、名前が呼ばれることは全然予想してなかったんです。でも、3回目で初めて優勝を狙っていたので、“自分、本当に(名前を)呼ばれた・・・ヤバいけど嬉しい!” という感じでした」

― 3回目のご出演ということですが、今回、挑戦された理由をお聞かせいただけますか?

「スマッシュキャバレーのグランプリ(※1)は全部(バンドの)生演奏じゃないですか。それにずっと憧れていたので、そこに出られるまで何回も受けようと思って、11月に受けて、1月も。次のグランプリに間に合うように急いで受けたという感じです(笑)」

※註
(1)グランプリ:各月の優勝者が集結するスマッシュキャバレーの頂上決戦。年に約1回のペースで開催されている。


2 小学生の頃から大好きな曲

「ただ楽しいだけじゃなくて、言葉の裏にあるものを大事に」

 "めっちゃニコニコやね!"。準決勝では、MCの守内宏輝さんにそう声をかけられるほどの弾ける笑顔で登場した入江さん。準決勝で選んだのは、ヒロインの少女が、安定した道を進める母親に、夢が叶うまでもう少し待ってほしいと語りかけるリズミカルな曲だ。小学生の頃から大好きな曲だっただけに、歌っていても「とにかく楽しかった」という。しかし、そんな思い入れのある曲だからこそのこだわりもあったそうだ。

「ただ楽しいだけじゃなくて、言葉の裏にあるものを大事にして歌うようにしました。ジャズで、リズミカルで結構ノリノリな曲なんですけど、乗りだけ、楽しいだけにならずに、ちゃんと歌詞を1つ1つ丁寧に」

 
 洒落たリズムの中にたゆたいながらも、歌詞は上滑りすることなくしっかりと心に落ちていて、台詞として耳に入ってくる。そして、彼女の歌に呼応するように、どこからともなく湧き起こる手拍子。曲自体が持つ魅力と、役の心情の両方が伝わってくる入江さんの演技からは、この曲への深い理解と愛が感じられ、いつしか観客も一体となってその心地よい歌声とリズムに身を委ねていた。


3 「どうしてもこの曲で優勝したい」

3回目にしてようやく挑戦した決勝曲

 一方、決勝にはホラーコメディー作品の曲で臨んだ入江さん。お下げ髪に血色の悪い唇と、まずは"陰キャ"感あふれる不気味なヴィジュアルで観客を驚かせた。勿論、役で言えば別人には違いないのだが、準決勝からの見事なまでの変身振りは、配信の視聴者から"誰かわからなかった"というようなコメントが届いたほどである。

― 決勝では気合いの入ったメイクや扮装も印象的でしたが、選曲にもこだわりがあったのでしょうか?

「2年前から、スマッシュキャバレーでこの歌を歌いたかったんですけど、その時は最後のサビの高音が全く出ない状態。前回も、自分の歌唱力が間に合わないなと思いました。でも“どうしてもこの曲で優勝したい”というのがあって、3回目の今回、もしかしたら歌えるかなと思って」

― 温めてきて、機が熟したというような・・・

「そうです。本当にそんな感じですね」


4 「アドリブをいっぱい入れちゃいました(笑)」

 一風変わった感性を持つ少女を演じる入江さんのエキセントリックな感情表現は観客を大いに湧かせた。特に、客席の盛り上がりを受けて、入江さんの演技がどんどんヒートアップしていく様子はエキサイティングで、会場は生の舞台ならではの興奮に満ちていたように思う。

― お客様も入江さんの演技を心から楽しんでいる雰囲気を感じたのですが、客席の反応はわかりましたか?

「お客さんがノリノリになってくれて、反応もすごい良くて。笑い声や手拍子が聞こえて、それでまたバイブスが上がって、だんだん楽しくなってしまって。練習ではもっとお淑やかだったんですけど、“キャー!”と言ってみたり、今まで練習で全然入れなかったアドリブをいっぱい入れちゃいました(笑)」

 決めごとの範囲内のパフォーマンスではなく、会場の空気を感じながら、舞台上で自由自在に暴れまわる姿に、彼女の天性のエンターテイナー振りを見せていただいたような気がした。

インタビュー後編(スマッシュキャバレー編Vol.6-2)はこちら♪


文章・企画構成:Tateko
写真:中山駿

協力:SMASH CABARET https://smashcabaret.com/
   中目黒TRY

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