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大久保 百恵さん(57回優勝) インタビュー Vol.3-1

 動画審査を勝ち抜いた出演者がパフォーマンスを行い、観客審査によって優勝者が決まるコンペティション形式のミュージカルオーディションショー、スマッシュキャバレー。
 今回は、真夏の大会に相応しく熱のこもったパフォーマンスが繰り広げられた第57回大会(2022年7月22日開催)で優勝に輝いた大久保百恵さんにお話を伺った。歌声と同様、柔らかくよく通る声が印象的な大久保さん。喜びの中にも、どこか落ち着きを感じさせる物腰で丁寧にインタビューに応じてくださった。
 今回はその前編をお届けする。(後編はこちら♪)

大久保 百恵(おおくぼ・ももえ)

神奈川県出身。2020年に洗足学園音楽大学ミュージカルコースを卒業。ただ歌が好きだった幼少期に劇団四季のファミリーミュージカルに出会う。市民ミュージカルや中高での合唱、演劇の経験を経てミュージカルの道に進む。夢は、命ある限り沢山の人の人生をミュージカルや歌を通して応援すること。現在はフリーで活動中。


1 「やるべきこと、やりたいこと」を全うする意識

―  優勝おめでとうございます!

「ありがとうございます!」

―  今回、どのような気持ちで本番に臨まれましたか?

「いやあ、始まる前、お顔写真が公開されてから、皆さん上手そうだなと思って。でも、応募する時点で曲はもう完全に決めて、ずっと変えずに来ているので、この2曲をしっかり私なりに練習するだけだし、今、状況的に色々あるけれど、それに惑わされずに、自分のやるべきこと、やりたいことを全うすればいいんじゃないかなと。」

― 地に足がついた状態で、チャレンジされたんですね。

「一応、そうですね。でも、今日、声出しがてら練習していたら思ったように声が出なくて、『あ、緊張してるんだ』と気づいて。マインド的にはそうでもなかったんですけど、身体が緊張していたみたいで、1回リラックスしようと携帯をいじったりして(笑)」

 他の出演者の顔触れや、コロナ禍という状況。そして、フィジカル面での緊張。自らを取り巻くものごとを客観的に捉える視点はもちろんだが、どんな条件下でも己を見失うことなく足元を見据えて進もうと努めるその姿勢に、大久保さんのパフォーマーとしての聡明さを垣間見た気がした。


2 「私はこの近さがすごく好きです」

― ライブハウスは、客席との距離感が劇場とは異なりますが、その辺りはどう感じましたか?

「私はこの近さがすごく好きです。自分の中から滲み出た音や声でも届くのがキャバレーショーのいいところだと思いますね。劇場だと、最初の部分(客席の最前列から舞台面までの距離)が遠いじゃないですか。そこもお客さんで埋まっていたら、もっと面白いんじゃないかなと思います(笑)」

―  確かに、お互いにより臨場感を感じられるかもしれませんね。お客様のお顔は見る方ですか?

「見ます。歌詞でいいところがあれば振りたくなっちゃうので(笑)」

― ステージ上でも、お客様と交流できる余裕をお持ちなんですね!

「歌の本番でも知り合いを探せるくらいの人間なので(笑)。でも、緊張しました、今回はすごく。」


3 スマッシュキャバレー出演までの道のり

「できるんだ、私」

― スマッシュキャバレーに応募されたきっかけをお聞かせいただけますか?

「大学の時にたくさん歌を習っていたのですが、卒業してからの2年間では1回しか歌のレッスンに行けていなくて。その1回の時に、先生から『百恵ちゃん、歌えるんだからもっと色々やりなさい。できるんだから』と言われ、『あ、できるんだ、私』と思って、1回目、去年の11月に応募しました。そして、(今回は)こういう場があるなら、もう1回、ぜひ出たいなと思って応募した感じです。」

自己流から脱して、発見した音

ー 最初のきっかけは歌の先生の一言だったのですね。では、改めて応募された今回、本番までにどのような準備をされたのでしょうか。

「大学時代、自転車をこぎながら自己流で歌っていた曲だったので、1回、全部音を取り直しました。『あ、こんな音、歌ってたんだ』とか。2曲目(決勝)などは、結構、細かい音が多くて、1番は装飾(音符)がないけれど、2番はあるとか、そういうところが発見でしたね。」

― そのようなディテール部分は、意外と作曲家の方が拘っている部分だったりしますものね。


4 活躍中の先生から学んだ“声のメイキング”

―  表現的な面ではどんなことを意識して臨まれましたか?

「まず作品を理解して、役がどういう状況なのか見るようにして。あとは、最近、『ここはこういう歌詞だから、こういう風な音で歌おう』とか、目指す場所は明確にした方がお客さんにちゃんと伝わるし、表現にも直結するなと思うようになったので、結構しっかり細かいところまでメイキングして歌うようにしていました。」

 「メイキング」というワードから、決勝での大久保さんの歌声が耳に蘇った。どこまでも清らかでありながら、突き抜けるような強さも感じさせるその独特の響きに、聴く者の琴線に触れてくる繊細なニュアンスを感じたからだ。
 彼女がこの”声のメイキング”について意識するようになったのは、あるレッスンがきっかけだったという。

「大学を卒業するぎりぎりに1回だけ(レッスンを)受けた歌の先生が、発声方法を選び、曲や表現に合う声をメイキングする方で、使う声にしっかり意識を向けるところまで考えたことがなかったので、すごく発見でした。その方は、色んな作品でタイトルロール(※)をやっていたんですけど、細かいディテールまでしっかりやっているから(役に)選ばれるんだなとわかって。」

 舞台で活躍中の歌の先生から貴重な学びを得たという大久保さん。今回は、使いたい発声方法を複数選んだ上で、それぞれの割合をパーセンテージ化して臨んだそうで、その緻密なメイキングには感心させられるばかりだ。

(Tateko)

※註 タイトルロール:作品のタイトルと同じ名前の役。

★インタビュー後編(スマッシュキャバレー編Vol.3-2)はこちら♪


文章・企画構成:Tateko
写真:中山駿

協力:SMASH CABARET https://smashcabaret.com/
   中目黒TRY

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