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地方からできる災害即応組織

災害対応は自治事務今回の地震でも自衛隊が活躍しました。当初自衛隊の重機を積んだ大型キャリアが被災地の狭い道路を通ることができず、代わりにボランティアの小型重機を積んだ3トンダンプが先に現地に入りレスキューや道路啓開で活躍したということがありました。 その一方で毎回自衛隊に頼り切るのはどうなのか?自衛隊の本来業務は国防なので依存する行政の在り方はいかがなものかという声もあります。また憲法で禁止されている軍備を放棄して災害救助即応隊に改組しようという声も出てきています。ここではそ

    • 【緊急時の自己組織化を考える その2】市民の協力関係と指揮

      前回の投稿でも取り上げたように、緊急時に対応する組織を市民社会は持っていません。しかし、大規模の災害が発生し公的支援を期待できない状況下で、被災したとき私たちは一人で何ができるのでしょうか。危機を脱するために、あるいは誰かを助けるために、複数の人々と力を合わせることになるのではないでしょうか。 そして協力するためには何らかの合意や協力関係やルールが必要になります。危機対応のための自己組織化の知識と訓練は、一般市民だからこそ必要になるはずなのです。 今回は、ICSの議論から一旦

      • 【緊急時の自己組織化を考える その1】緊急時のチームビルディングは民間だからこそ必要

        緊急時のチームビルディングは民間だからこそ必要 私たち市民は、発災時に命令系統がしっかりした自己完結の組織にいるわけではありません。むしろ、災害に巻き込まれて居合わせたもの同士で自発的に力を合わせる以外にありません。そのためにもアドホックなチーム作りが必要なはずです。 チームというと協力関係ばかり強調されます。それは確かに大前提なのですが、だからこそ協力関係を活かすために必要な考え方があります。それは「指揮」、つまり情報の流れと責任の取り方そしてそのルールです。これは心理

        • ITSを用いた被災地支援DXの提案

          現在社会福祉協議会(以下、社協)を中心に商用データベースサービスを使ったDXが進行しています。災害発生時被災地社協の負担は大変大きく、負荷分散のためにもDXは必要です。 さて、被災地で起きる様々なニーズに対応するために社協を中心としてボランティアセンターのコーディネーションが活躍しているのですが、社協が対象とするニーズと対応(以下、シーズ)には制度的限界があり、技術系プロボノがその空隙を補間しています。 しかし、残念ながら全国的な地域社会及び産業の高齢化と衰退のためますます多

        地方からできる災害即応組織

          海上災害防止センター

          東京湾の真ん中に戦前首都防衛のために築かれた人工島がいくつかあります。その一つ第二海堡は現在貨物船の火災を想定した消火訓練の演習場になっています。今回、消防団を中心に過酷な訓練と啓発を続けている長浜様の手配と案内をしていただき、ここを管理・運営している海上災害防止センター大森所長の許可を得て見学をしてまいりました。 海上の船舶における災害防止を定めたOPRC条約に日本も加入し、対応する人材を育成するために海上災害防止センターが平成15年に独立行政法人として設立され、その後一

          海上災害防止センター

          救急救命ボランティア鳳凰志工美崙分隊

          この記事は2018年春に投稿した記事の再録です。内容は当時のものです。 私達は鳳凰志工美崙分隊のメンバーの御厚意により、救急救命ボランティアの鳳凰志工の訓練を見学させていただくことになりました。美崙地区は花蓮市の北東の海岸部、風光明媚な高級住宅街と工業地区を擁した地域です。 黃偉隊長のお話 「私達は普段は別の仕事を持つボランティアであり、また政府が管掌する組織の一部でもあります。日本でも消防団があり台湾はその影響を受けていますが、鳳凰志工は国際的基準のライセンスをもった人

          救急救命ボランティア鳳凰志工美崙分隊

          慈済慈善事業基金会のお話

          この記事は2018年春に投稿した記事の再録です。内容は当時のものです。 慈済基金会は花蓮に本部をもつ、ボランティア先進国台湾の、最大の民間ボランティア組織です。ボランティアだけでなく医大とその総合病院や近接する科学技術を学ぶ大学も持っています。今回の地震(2018年2月に発生した花蓮地震)にも素早く対応しました。 この組織は1966年に人のためになろうと決心し、30名の主婦と5人の出家を伴い始まりました。 正確には財団法人仏教慈済慈善事業基金会が母体のボランティア団体です

          慈済慈善事業基金会のお話

          災害ボランティアにおける重機利用

          はじめに近年、毎年のように大規模な水害が日本各地に被害をもたらしています。また、南海トラフ地震など大規模な震災も懸念されています。大規模な災害がいつどこで起きても不思議ではなくなっています。しかしその一方で被災地を助けようと多くの災害ボランティアが全国から駆け付けています。大勢の手作業のボランティアに混じって、建設重機の姿を見かけることも多くなりました。 公費解体は以前より可能ですし、今夏の九州水害から復旧費用の公費支給がようやく始まりました。それまで一般家屋や私有地の復旧は

          災害ボランティアにおける重機利用

          ネット上での被災地支援課題共有システム構想

          【サイバーボランティア Advent Calendar 2019の24日目の記事として公開しました】 昨年の西日本豪雨災害、そして今年の台風15号・19号では、広域に被災地が分散しました。その結果情報の偏在により多くの地域で支援の手が不足する事態となりました。一般ボランティアは多くの場合、被災地自治体単位に存在する社会福祉協議会(以下、社協)やNPOが管理するボランティアセンターに集結し、そこから被災者の家屋や施設の復旧支援にゆきます。しかし、どの地域に行くのか、その判断は

          ネット上での被災地支援課題共有システム構想

          首都直下地震想定から最悪の想定を考える

          根拠となる想定2013年中央防災会議は首都直下型地震の想定を発表しました。想定モデルとして採用した地震は、発生確率が切迫しているとみなされるマグニチュード7クラスの首都直下地震。それに加えて発生確率はかなり低いがひとたび起きると広範囲に甚大な被害をもたらすマグニチュード8クラスの相模トラフ沿い海溝型地震の二つです。いずれも都区部における被害は同等と見做して以下の想定を算出しています。 全ての元凶:交通麻痺 この地震における特徴的な事象は交通麻痺と考えられます。高速道や主要橋

          首都直下地震想定から最悪の想定を考える