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海上災害防止センター

この記事は2019年2月投稿の再録です。

東京湾の真ん中に戦前首都防衛のために築かれた人工島がいくつかあります。その一つ第二海堡は現在貨物船の火災を想定した消火訓練の演習場になっています。今回、消防団を中心に過酷な訓練と啓発を続けている長浜様の手配と案内をしていただき、ここを管理・運営している海上災害防止センター大森所長の許可を得て見学をしてまいりました。

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海上の船舶における災害防止を定めたOPRC条約に日本も加入し、対応する人材を育成するために海上災害防止センターが平成15年に独立行政法人として設立され、その後一般財団法人に移行しました。

このセンターは船舶火災に対応した消防訓練、油流出事故に対応した油防除訓練、積み荷の有害物質漏出に対応した有害物質防除訓練が行われます。

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またセンターとして消防艇を有しており、東日本大震災で発生した東京湾内のコンビナートガスタンク火災に出動、他の部隊が危険を察知して撤退してゆく中、センターだけがガスタンクを冷やし続けて延焼を防ぐという戦果を挙げています。この度の訪問では、その最前線での指揮を執られた大森所長に案内していただきました。

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なお、私の拙い解説では不十分ですので、正しい技術的な案内はセンターで用意した資料に譲り、ここでは印象について簡単に紹介させていただきます。

http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h29/jieibousai_kyouiku/02/shiryo6.pdf

最も多い受講者はタンカーなどの船舶の上級船員(オフィサー)です。OPRC条約加盟国の港湾に寄港するためにはここで訓練を受けることが必要で、条件を満たさない船舶は入港を拒否されます。また、陸上の消防士や消防団など防災関係者の受講も多く、この日も遠く九州から受講にきていた方もいました。また一般市民も受けることができ、消防団員でもある一般家庭の主婦が受講した実績もあります。

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陸上ではなかなか大きな炎を実際に使う訓練はできません。陸上でハンドリングを練習し、実際の消火はこの施設で体験するという考え方も可能でしょう。

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船舶の消防装備の特徴の一つはホースにあります。陸上火災では65mm以上の口径のホースが活躍し、一部市民による消火隊などで40mmのホースが使われています。しかし、大口径のホースでは反動を押さえるための要員が必要で、狭い船内では小回りが利きません。そこで船舶における消火隊は大口径の水利に2本以上の40mmホースをつなげ機動的に運用することになっています。アクロンノズルやアプリケータノズルをつかって水霧を有効に使い狭い船内の消火を行います。

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1日コースでは屋外の消火だけではなく、灼熱の室内火災突入や、立体迷路のスモークルームで漆黒の闇での移動訓練なども盛り込まれています。

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