見出し画像

ネット上での被災地支援課題共有システム構想

【サイバーボランティア Advent Calendar 2019の24日目の記事として公開しました】

昨年の西日本豪雨災害、そして今年の台風15号・19号では、広域に被災地が分散しました。その結果情報の偏在により多くの地域で支援の手が不足する事態となりました。一般ボランティアは多くの場合、被災地自治体単位に存在する社会福祉協議会(以下、社協)やNPOが管理するボランティアセンターに集結し、そこから被災者の家屋や施設の復旧支援にゆきます。しかし、どの地域に行くのか、その判断はボランティア個人にゆだねられており、一ボランティアセンターがマッチングするわけではありません。その結果マスメディアの報道量やSNSの発信量によってしばしば支援の手が偏在することになります。

ボランティアセンターは単に被災者のニーズと支援者のシーズをマッチングしているだけではありません。被災地をまわり、埋もれた被災者の肉声を拾い、支援の方向性を協議します。広い意味でのコーディネーションが彼らの主な業務です。また、ボランティアセンターと連携しつつ独自にコーディネーションを行うNPOも活動しています。

社協は、重機などの資機材を用いた支援などボランティア保険の対象範囲を超えるシーズをマッチングすることはできませんし、農業や商店など事業にかかわることもできません。また地域の社会福祉が本来業務なので、ある程度落ち着いたと判断した場合には、ニーズの完全消化を待たずにボランティアセンターを解散することもあります。そのため、個人やNPOによるコーディネーションが必要になってきます。

また、被災地は文字通り戦場のような忙しさです。場合によっては電気や通信環境の悪い中でも事務仕事を強いられます。地域のことは何とか掌握しようと努力するが、敢えて取りまとめて発信する暇もない、広域被災地全体のことは全く手が回らない、いわばたこつぼ状態になります。

一般ボランティアもそのような環境に事前の準備も情報も乏しいまま赴き、ただいわれるがままパーティを組み、見知らぬ被災者宅にたどり着き、被災者も支援者もお互い戸惑いながら作業を済ませ、夕方には帰投する。その翌日も翌々日も同じような手探りの繰り返し。

一方、被災地ではない後方にお住いの皆さんは、「支援をしたいが、何を準備しどこに行ったらいいのかわからない」「何をしてあげればいいのか情報がすくない」「多忙な現地を助けたいが現地と連携する手段がない」と切歯扼腕されたことを御経験になったでしょう。

これらの課題の一つの解決策として、ネット上での情報共有があります。サイバーボランティアの皆さんがこの分野で活躍しているのはいうまでもありません。

前述の課題に対して、被災地と後方、広域の支援全体をつなぐ仕組みも考えられます。これから申し上げるのはネット上で被災地の多様な課題をチケットという情報単位で共有し、管理し、実際の活動やそれに対する助言や協議を行い、解決をしてゆく仕組みです。課題の「見える化」。課題共有システムと仮に命名します。既にソフトウェア開発を御経験の方なら、バグトラッカー、イッシュートラッキングシステムというジャンルのWebアプリケーションをご存知でしょう(私もその一つRedmineを使って機能検証を行いました)。構造としてはほぼそのようなものとご了解下さい。

まず、このシステムのユーザーは一般ボランティアを含む直接支援者、そしてコーディネーションを行うコーディネーターがいます。コーディネーターはボランティアセンターのスタッフだけでなく、現地に分け入り実際に活動し監督している人、中間支援に従事している人など、責任をもって課題の解決にむけて行動できる人ならばこれに含めます。

さらに、後方から事務を代行したり、状況を取りまとめたり、前線のコーディネーターにかわって電話をうけとったり、迷走し滞留している課題のチケットを監視するなど、運用上の支援を行う情報支援者。

7月時点の情報支援構想

そして直接支援あるいはシステム内の情報を編集することはありませんが、システムを通じて公開されているデータを集計し問題を共有する一般のネットユーザーを想定しています。

課題の基本単位であるチケットの粒度は一定である必要はありません。また、被災者の御困りごとはもちろん、支援者側が抱える課題、全体の懸念事項、質問でも何でもいいのです。当然量的に膨大になりますが、これを交通整理するのが後方の情報支援者の役割です。

このように集まった情報をもとに事前に必要な作業や資機材がわかるので直接支援者はある程度準備を進めることができます。コーディネーターはチケットを直接支援者に割り振り、直接支援者はチケットを通じて作業報告をする。全体の進捗はチケットのステータスを通して全国的に共有されます。

ただし、被災者の細かい住所や氏名などプライバシーにかかわる情報は公開するべきではありません。直接支援者も作業の種類や負荷や資機材など抽象的な情報があれば事前準備はできます。住所にしても直前に知らされれば十分間に合います。プライバシーの適切な取り扱いが重要になります。Redmineを使って機能検証を行いましたが、基本機能だけではうまく扱えないことがわかり、応用を断念しました。

また、Redmineなど既存のシステムは広い画面のPCでの使用を想定しており、現地で多用されるであろうスマートフォンなどモバイル環境は不得手です。もともとソフトウェア開発用なので管理項目が多くデータコンプライアンスを維持するのも困難とみられます。通信途絶時の操作などにも課題が残ります。新規開発はなるべく避けたいところなので、大変悩ましいところです。

以上はイッシュートラッキングシステムをヒントにまとめた課題共有システムの構想です。現物をお見せすることもできず、中途半端な紹介に終わりましたが、皆様のサイバーボランティアの活動の何らかのヒントにしていただければ幸いです。

プレゼン用資料つくりました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?