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刀を亡くした侍に、鉛弾の祝福を。#8 (トレモズAct.2)

前回のあらすじ
 折れた刀をどうにかすべく、シトリとトゥは鍛冶の町<アマタイト>へと車を走らせる。2時間ほど車を走らせたころ、二人の乗る車の背後には、物々しい武装ジープが迫ってきていた。

- 8 -

「……この辺の野盗という風情ではないな」

 シトリは目を細めた。トレンチコートと長い髪がバサバサと揺れる。その間にも、武装ジープはぐんぐん距離を詰めてくる。

 それはシトリとトゥの乗る車よりも二回りほど大きな、戦場仕様のジープだった。乗員は4名。迷彩服を纏うそいつらは手に手に銃を持ち、こちらを睨んでいる。

「さて……ひと仕事だ」

 呟くと、シトリは姿勢を下げて居合を構えた。鞘の中身は折れたる愛刀。ひと苦労だが、やってみよう。

 武装ジープの助手席から迷彩服が身を乗り出した。動かぬシトリに銃口を向け、迷彩服が引き金を弾く!

 BLAMN!

「──…………」

 シトリは動かなかった──否、助手席迷彩服にはそうとしか見えなかった。

 神速の居合で銃弾を叩き切ったシトリは、再び構えたまま期を待つ。武装ジープが近づいてくる。助手席迷彩服が立て続けに銃弾を放ち、その全てが叩き切られ、そして──

 6発目の銃声が響いたとき、車上からシトリの姿が掻き消えた。

「「!?」」

 車内の迷彩服たちが瞠目する。そして次の瞬間、武装ジープの上に飛び移ったシトリは、助手席迷彩服の顔面に鞘を叩き込んだ!

「ぐあっ!?」

 窓から乗り出したまま体制を崩され、助手席迷彩服はそのまま車外に放り出された。瞬く間に後方へと消えていくその姿を一瞥することすらなく、シトリは折れたる愛刀を振り上げ──縦一閃!

 ギャギィッと金属音が響き、ジープの天井が縦に裂けた!

「「なっ……!?」」

「む……両断したつもりだったんだが」

 驚愕の声をあげる迷彩服たち。一方で、シトリはなにやら不満顔だ。

「こっ……この野郎!」

 右側後部座席の迷彩服が叫びながら、シトリにサブマシンガンを向けた。シトリは冷静に左手に持った鞘を打ち振るい、その銃口をずらす!

「痛だぁっ!?」

 BLATATATATATA!!!

 あらぬ方向へ火線が逸れたその一瞬で、シトリは鞘を逆手に持ち替えた。そしてそれを、右側後部座席迷彩服に向かって突き降ろす!

「ガッ……!?」

 鞘で眉間を打ち抜かれ、右側後部座席迷彩服は昏倒。シトリはそのまま、反対側にいる迷彩服へと刀を向ける。

 しかしその直後、武装ジープが急ハンドルを切った!

「む」

 一瞬バランスを崩したシトリは辛うじて床を蹴り、自分の車に飛び移って三点着地した。

 武装ジープは蛇行をやめ、再び距離を詰めてくる。その天井、先ほどシトリが切り裂いた割れ目から迷彩服が身を乗り出し、サブマシンガンを構え、叫ぶ!

「死ね、サムライ野郎!!!」

 BLATATATATATA!!!

(つづく)

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