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刀を亡くした侍に、鉛弾の祝福を。#9 (トレモズAct.2)

前回のあらすじ
 折れた刀を工面すべく、鍛治の街<アマタイト>へと向かうシトリとトゥ。そんな彼らに、武装ジープが襲いかかった!
 乗員の二人を始末したシトリであったが、三人目の構えたサブマシンガンがシトリへと向けられ──火を噴いた!

- 9 -

「死ね、サムライ野郎!!!」

 BLATATATATATA!!!

 その時、シトリは既に姿勢を整えていた。鋭く息を吐き──刮目!

「シッ────────!!」

 Gigigigggggggggg!!!

 シトリの眼前に火花が散る──それはすべて、弾丸を斬り払った痕跡である!

「なァッ!?」

 残像すら生じるほどの超スピードで、シトリの刀が翻る。その鋭い視線は、瞠目するサブマシンガン迷彩服を射止め、虎視眈々と銃撃の終わりを狙っている!

「ば、化け物じゃねぇか……!」

 刀が煌き、金属音が鳴り響く。バラバラと銃弾の残骸が散る──その時、シトリの乗る車が岩に乗り上げ、大きく姿勢を崩した!

「ぬぅッ……!?」

 それは完全に偶然であった。故に、シトリの反応は遅れてしまった。その姿勢が崩れ──数発の弾丸が、その脇腹を掠める!

「やべぇ!」

 叫んだのは運転席のトゥ。咄嗟に急ハンドル、急ブレーキ。シトリとトゥを載せた車がスピンし、盛大な砂埃をあげて迷彩服たちの視界を妨害する!

「痛……」

 シトリの脇腹から血が滲む──と、シトリの足元が、ゴンゴンと揺れた。

「……どうした」

 砂埃の中、シトリは車上に這いつくばると、運転席の窓から顔を出した。トゥは後部座席に手をまわしており──なにやら長物を取り出し、シトリに差し出す。

「これ、使えねーか?」

 それは鞘に収まった三日月形の剣。ファルシオンと呼ばれる長剣である。シトリは目を細め、問いかけた。

「……こんなもの、どこで?」

「町を出る前に武器屋で買ったんだよ。折れた刀じゃ戦いづらいかなと思って」

 車が砂煙を破る。そのまま武装ジープと並走するように速度を上げる中、シトリは思わずため息をついた。

「……トゥ、ありがたいが、今度からそういうことはもっと早く言ってくれ」

 シトリはファルシオンを抜き放つ。そして、いつもと違う重心の掛かり方に少しだけ違和感を覚えつつ、それを構えた。

 武装ジープが近づいてきた。こちらにタックルする腹積もりか。その車上では再びサブマシンガン迷彩服が銃口をこちらに向けている──

「……参る」

 シトリは低く呟いた。

 ──剣を使うのは久方ぶりだが、折れた刀よりはマシだろう。

(つづく)

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