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殺陣という言葉

舞台や映画など闘いの演技に対して
その時代によって表記が異なります。

「殺陣」と書いてタテ。
大いなる当て字ですね。
その由来は、元々は歌舞伎から来ています。
歌舞伎は、今でも闘いの演技を
「立ち回り」と称します。
それをつける人は立師(たてし)。

大正の頃、歌舞伎と一線を画した
リアルな筋立て、立ち回りを
世に問うた劇団に「新国劇」というのがありました。

その演出家であり俳優でもあった
澤田正二郎(通称:サワショウ)が
歌舞伎をリスペクトしながら
別物としてリアルな動きとして
「殺陣」という言葉に
読みをタテと当てはめたと言われています。

この劇団は、当時、大人気となりました。
映画の世界でも、それまで異なる名称を使っていたものが、徐々に「殺陣」に集約していきました。

詳しくは、1974年に発行された
永田哲朗著「殺陣」をお勧めします。
日本においての殺陣やアクションの流れを詳しく取材された名著です。

サワショウが作った言葉
「殺陣」は、
「殺」で戦いを表し
「陣」で大勢の、または、フォーメーションを表す優れたネーミング。
また、この中には
時代劇の、という言葉が含まれています。なので、時代殺陣とすると
同じ言葉の羅列になってしまうのです。

ただし、言葉は変化します。
以前はこう読みましたが
今は、、、というような事で
辞典でも変わっていく事は
よくあります。

なので、あまり固執は良くないと
思いますが
その名称に流れ着いた先人の智慧と
想いは、しっかり受け継ぎたいものです。

ちなみに、高瀬道場の創立者・高瀬将敏(日活アクション映画の技斗師)は、サワショウと同じように
時代劇を意味する殺陣と
徒手空拳の現代アクションを
「技斗」と名付けました。
演「技」の「斗」い。
フィクションであって
フェイクではないという想い。これもまた、優れたネーミングだと思っています。
日活アクション映画も一世を風靡し
映画館の扉が閉まらないと言われる大人気となり、撮影所の中に
俳優の稽古場ができるほどでした。

現在では、現代劇の闘いは、
アクションと呼ぶのが主流ですが
私は、高瀬将敏の想いを引き継いでいきたいと思っています。

追伸
最近では、歌舞伎の一般の人向けのワークショップで
「殺陣」と表記されているのを見て
おお!と驚くことがあります。
でも、それは、より皆さんにわかりやすく伝えるための処置と思いますが、サワショウの殺陣が浸透した結果ですね。
やるね、サワショウ👌

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