うさぎと亀
拝啓
うさぎが亀に話しかけたときのことです。
こんなに歩くのがのろいのはね、世界で他にいないし、どうしてそんなにのろいのかと訊ねるでしょう。
亀はね「どうしてって、考えてる間にも歩いた方が進めると思って考えてなかったけど、もし歩くのが世界で一番遅かったら、遅いとわかってたら、世界一でいたいから、はやく歩かないとと思わなくて済んだかもしれない」と言って、うさぎが「速いのがいいに決まってるよ!」と言ったので「じゃあ限界まではやく走るから競争してよ!」というので、ここから見える山のふもとまでと決めて駆けっこすることになりました。
うさぎがね、風のように飛び跳ねて行って、亀は「本気かよ!」と思ったのだけど、自分に合わせてのろのろするうさぎを見たかったわけでもないから、うさぎが待ちくたびれて帰ってしまう前に山に着こうと走ったけど、自分でも日が暮れて夜になってしまうと思うくらい遅かった。うさぎと走り始めたのは午前中だった。
山のふもとまで、疲れたけど自分なりに休まず走って、やっぱり日が暮れていたし、先に着いてるはずのうさぎもいないからがっかりしました。
帰ろうとしていたらうさぎが凄い速さで走って来て「待って!あーっ!負けた!!」と言って残念そうに転がったから亀は目が点でした。
「途中で疲れて寝てしまったよ。しかも起きてから案外遠くてどのくらい待った?」とね、うさぎが一人で喋っているから「たった今くらい」と亀が答えたら、今度はうさぎが目が点でした。
「だから、先に着いても、勝った気が全くしないのよ……」
「……やあやあ、でもね、先に籤を引けるのはお前だよ」と言ってうさぎは鳥居をくぐり、亀は、なんか、走ったのをうさぎがわかってくれたぶん、ここまで約束通り走ってきて良かったな、と思ったんですよね。
Y様
令和4年1月26日水曜日付
J
追伸、昨日曜日を間違えていました。
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難しいです……。