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多くのクローズドサークルの中で異彩を放つ作品

そして二人だけになった 森博嗣 新潮文庫

ミステリー小説の中で最も有名な作品と問わればアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」が上がるだろう。「そして誰もいなくなった」が特徴的なのは、閉ざされた空間で限定された人物・空間で殺人事件が起き最終的に誰もいなくなる=犯人となる人物がいないということである。ただのクローズドサークルだけでなく、犯人対象となる人物もいなくなってしまうという不可能性は当時、衝撃をもって読まれ現代でも愛読者が絶えない作品である。それゆえにオマージュ作品も数多くでている。その中でもひと際異彩を放つ作品が森博嗣の「そして二人だけになった」だ。

あらすじ
巨大海峡大橋を支える巨大コンクリートの内部に作られた「バルブ」と呼ばれる住居空間。国家機密としてシェルタの役割として作られたこの場所で設計に携わった6人が生活実験を試みる。しかし、外界との通信手段が遮断された挙句プログラムの異常で完全な密室になる。その中で1人、1人殺害されていく。

森博嗣は「すべてがFになる」から始まる、S&Mシリーズが有名であろう。ドラマ化、アニメ化されており理系ミステリを確立した。この「そして二人だけになった」も森博嗣の世界観全開である。さらにそこにアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」の不可能性による謎が加わり、かなり読み応えがある作品となっている。

あわせて読みたい本
ジェリーフィッシュは凍らない 市川憂人 創元推理文庫
紹介帯である「21世紀のそして誰もいなくなった」に対し過言でない小説である。オマージュでなく「そして誰もいなくなった」形式に新しい風が吹いた作品だ。

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