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社長はつらいよ『会社という迷宮』

定年雇用延長オヤジとしては、残りの人生で社長とか経営者とかになることはもうないかなと思ってます。会社以外の居場所を見つけることもうまくできないでいる状態で、なれるとも、あえてなりたいとも思わないですけど。そう言えば1か月前、台湾に行った時、九份のお店のおばちゃんから「社長さん!試食して行って!」と呼びかけられました。。。

そんな自分でも、読んでいて激しく同意する場面に頻繁に遭遇したのが、『会社という迷宮 経営者の眠れぬ夜のために』(石井光太郎 著)です。まさにその通り、言いたかったことを言ってくれた、いやむしろ、経営者とはとても言えない雇われマダムならぬ雇われ経営者のなんて多いことかと、読んでいる間ずーっと思ってました。(特に大企業には多い気がする。)
かつての中間管理職だった自分も、会社という組織、箱、人材を間違って認識していたと、反省することしきりでした。

この本は、長年経営コンサルタントとして数多くの経営者と対峙してきた方が書かれたもので、経営「辞典」という体裁で戦略、市場、組織等々のキーワードについて著者の考えがまとめられています。中には、痛烈だが至極まっとうな指摘が数多くちりばめられています。

(経営者でない)自分に響いたのは、例えば、「改革」の項目に書かれたこんな趣旨のことです。(元の文章から少し変えてあります。)
「『改革』とは、常時やっているものではないが、経営者の焦燥やそれをけしかけるコンサルなどの思いもあり、流行り続ける。いつまでたっても成就しない、『わかっているのにできない』のに、なぜできないかの内省がないから、何も変わらないで常態化してしまう。・・・『悪くもなさそうに思えるのに、自ら現状否定する』のが『改革』マネジメントの要諦である。」

自分は会社で業務改革に携わっており、副業などでもその方面での貢献を模索していましたが、業務改革『屋』になってしまっていないか、考えさせられました。「業務改革は、永遠にやり続けなければいけない」なんて普通に言ってました。現場の実態を深く理解もせずメスを入れることもせず、表面的な改革を繰り返し延々と本社(&コンサル)から現場に押し付け続けたら、そりゃあ上手く行かないですよね。

最後の章にはこんなことも書かれています。(これも、元の文章から少し変えてあります。)
「『経営』は、他社よりも先んじようとする先陣争いではない。時代を一隻の大きな船に例えれば、皆が皆、誰よりも舳先に近い場所を奪い合うように奔走しているが、本当に大事なことは、その船そのものがどこへ向かおうとしているかということであり、不可欠なのは船の行く先に向けられた眼差しでなければならない。」

ついつい、ベンチマークだの、PPMだのSWOTだのPESTだのと分かったような分析ばかりを並べて船の中の先陣争いを仕掛けがちですが、そこから入ってはダメでした。この本で言うところの会社としての「信義」と、それに基づいて社会に提起される新しい「価値」が、まずもって基盤として船の行く先にないと、いけませんでした。行く先の違う船に乗ったり、そもそも船の行き先が分からなかったりするのに、その中でドタバタしてもしょうがないです。

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