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絵本探求講座 第3期、第5回講座を終えて

2023年8月2日(水)絵本探求講座 第3期(ミッキー絵本ゼミ)第5回講座の振り返りをします。(北海道・層雲峡にて)


自然写真家、佐藤圭さんとミッキー先生の対談

1.略歴

1979年、北海道留萌市生まれ。自然写真家。「MILLET(ミレー)」アドバイザー。
2018年、日本の自然写真コンテストの最高峰である「日本の自然」写真コンテストで第35回最優秀賞受賞。
2022年、第70回ニッコールフォトコンテストで、最高賞である長岡賞を受賞他、大木のフォトコンテストで受賞歴がある。
著書に、『山の園芸屋さん エゾシマリス』(文一総合出版)
『佐藤圭写真集 秘密の絶景 in北海道』(講談社ビーシー/講談社)がある。

2.感想

日本一の夕陽と称される故郷・留萌市黄金岬の美しい夕陽を撮影するために写真家の道に入られる。10代は、サーフィンに夢中だったとのこと。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続けておられる。
心が洗われる美しい絶景や、大自然の厳しい世界で生きる野生動物のありのままの姿を捉えた写真を見せながらのお話だった。圭さんがこの一瞬を撮るために費やされた労力、時間を考えると、一枚の写真の深さを感じた。北海道の野生動物の生態や気候や地形など、知り尽くしておられることが、お話からもよくわかった。動物たちが普段生活している暮らしぶりの中での生きている輝きが、写真に収められている。ご自身の足で歩いて歩いて、自然の中に溶け込んで、時間をかけた中の一瞬。難易度が高いと思われる野生動物の近影や、警戒心を解いたしぐさを捉えた一枚は最高だ。お茶目なしぐさの1枚を見て、そこにレンズを向ける圭さんのお人柄も写真に出るなと思った。

チーム研究発表

今期のテーマは「絵本賞と受賞作」
各チームともテーマにそって、受賞作家や受賞作品などについて、考察を深め、発表した。私は、チーム4。

  1. チーム5…「アストリッド・リンドグレーン記念賞について」

  2. チーム4…「ピータ・シス壁を越えて」

  3. チーム3…「絵で語るアンソニー・ブラウンに魅せられて」

  4. チーム1…「クイズで絵本力アップ!」

  5. チーム2…2こ和こ小学校特別授業「いのちと絵本~いのちってなんですか?~」

チーム4(good luck)の発表を振り返って

私のチーム4「good luck」は、「ピータ・シス壁を越えて」というテーマで発表した。私は、チームのFA(Facilitation assistant)、FAは、チーム対話の際のファシリテーション(会議や対話を円滑に行えるようにサポートすること)をしつつ、チームでの学びの雰囲気を創り上げていくお手伝いをする。私にとって、初めてのチャレンジだった。FAとして、役割を果たせたのか、振り返る。

  1. スタート時
    チームは7名。チーム4のメッセンジャー内は、盛り上がらなかった。チーム名を決めるのも、「4」をイメージするものを挙げてもらったが、それっきりになってしまい、気さくにコミュニケーションが取れる雰囲気作りが出来なかった。FAとして声掛けが足らないのかなとも思ったが、多忙な方も多かったので、負担にならないように必要なことだけを伝えるよう心掛けた。結局、チーム名もチームのアイコンも私が提案して進めた。初めての受講で「不安そう」と思った方には個人的にメッセージを送った。私にとっては、大丈夫かな?という気持ちを持ちながらのスタートとなった。
    初FAということで、見守りに第1.2期FA経験者ののりちゃん、FAサポートに元学校司書のおこちゃんがメンバーという配慮が、心強かった。絵本や参考書籍たくさん見せてもらったり、おこちゃんには毎回ZOOMの部屋を準備をしてもらった。チームの勉強会やゼミの出席率は、毎回とてもよかった。欠席者には、録画を見てもらうようにした。回を重ねるごとにチームの雰囲気も温まっていったと思うが、正直のところ、私が経験した第1.2期のチームとは、チーム内の空気が全然違った。ミッキー先生が「他と比べない!」と言われたことを思い出した。発表内容を決めるのも、動き出すのに時間がかかったように思う。しかし、話し合いの中で、方向性が見えて、テーマが決まってからのチームのエネルギーは凄くて、ゴールに向けて加速していったと思う。

  2. 発表のテーマが決まる
    今期「絵本賞と受賞作」の学びの中で、ノンフィクションが少ないということに気づき、ノンフィクション絵本を対象にした賞について、また、今回学んだ主な賞の受賞作の中にどのようなノンフィクションのものがあるのか、そしてノンフィクションの定義についても調べた。オブちゃんが担当してくれた。
    その中で、ピーター・シス『生命の樹』(自然科学者チャールズ・ダーウィンの伝記絵本)に注目した。メンバーそれぞれがシスの作品を読み込んだ。私は、図書館で出来る限りの関連資料を収集し、共有した。
    ちょうど東京八王子夢美術館で開催されていた「ピーター・シス展」にも足を運び、それぞれが探求したことを共有した。私は、初顔合わせのおこちゃんと一緒に行った。リュックにシスの絵本を何冊も背負いこんで、来てくれた。原画展を丁寧に観た後、その絵本を見ながら原稿を仕上げた。
    私達は、「シスにとって壁とは?」という問いに行きつき、「壁」に着目して作品を見ていった。
    『かべー鉄のカーテンのむこうに育って』…自伝的絵本
    『星の使者』…イタリアの天文学者、ガリレオ・ガリレイの伝記絵本
    『三つの金の鍵 魔法のプラハ』…故郷の思い出が描かれている
    『マドレンカ』シリーズ…子ども達の為に作った
    ぱたぽんさんは、別の視点からプラハの街を探求、よりシスの絵本の理解を深めることになった。

  3. 発表に向けて
    探求が進み、「結論ありきで進めないでおこう」という意見が出ていたところに、のりちゃんが最新作『ニッキーとヴィエラーホロコーストの静かな英雄と救われた少女』(誰にも知られていなくても、困っている人達を助け、正しい行動をした、静かな英雄のお話)のことを教えてくれた。様々な壁を通して、シスの考えは変化を遂げていくが、シスの願いは変わらないことがわかった。発表は、「生きている限り、絵を描き続けるのだ」というシスの言葉で締めくくった。
    じゅんじゅんが、まとめてクオリティの高いパワポの仕上げてくれた。
    オブちゃんは、層雲峡へ行く直前に、自身が参加した研究会で、ノンフィクションについて学んだことをシェア、その学びから原稿をさらに加筆修正してくれた。

  4. 層雲峡にて  
    メンバーとは、初めて会ったのに、初めて会った気がしなかった。おこちゃんだけ来ることが出来なかった。札幌から車のまきちゃんは、お願いした通り、パソコンやシスの絵本を持ってきてくれた。
    前日に部屋に集まり、おこちゃんはZOOM参加で、最終リハーサルをした。ミーテイングを重ねるごとに、探求が深まり、30分に納まるように、内容も含めて最後まで検討して加筆修正した。本番は、絵本をお見せしながら説明するため、立ち位置や持つ角度、ページをめくるタイミングなど入念にチェックした。まきちゃんが担当、本番頑張ってくれた。ZOOM参加の方にはお見せ出来なかったが、シスの緻密な絵をお見せ出来てよかったなと思う。
    練習の成果が出たと思う。一体感を持って目標に向かうことができたことを実感し、チームの力だなと思える発表ができた。達成感を味わい、貴重な体験ができた.

  5. ミッキー先生から、「壁は横から見ると越えられないもの、しかし上から見ると囲っているもの、視点を変えると、越えられないと思っていた壁が違うものに見える」。とコメントくださり、嬉しかった。

    最後にミッキー先生を真ん中に、みんなで写真を撮った。

第3期ゼミを終えて

今期、初めてFAを経験させていただいたおかげで、チームビルディングを学んだ。チーム4の皆さんに支えてもらったFAだったなと思う。メンバー一人一人が、前向きに取り組み、モチベーションが向上していくのを感じた。チームの探求心が衰えることなく、シスを掘り下げていく過程はとても勉強になった。一人では、ここまでシスを理解することは出来なかった。振り返れば、とても充実した時間だった。
FAとしての役割を果たせたのか、反省点はある。振り返りが、全然できていなくて、今頃書いている次第。FAとして、率先してできていれば、早い段階で信頼関係を築き、コミュニケーションの活性化に繋がったのではないかと思う。
今期、学んだことは、実践で役立てることが増えたと思う。
・児童養護施設(幼児から高校3年生)へ絵本を贈る際、絵本の賞が参考になった。選書の理由を自分のことばで書き添え、良書を選書できたと思う。
・中学校朝読書の時間に絵本を読ませてもらえ、コミュニケーションの苦手な生徒との距離が縮まった。生徒たちの反応が嬉しい。

ミッキー先生、チーム4good luckの皆さんありがとうございました。

追記

ゼミを終えて、道東を旅した。
雌阿寒岳に登って、下山中、針葉樹林帯で、大きなヒグマの爪痕を見た。生々しかったので、ガイドもびっくりしていた。私の目線より上だったので、立つと大きいのだなと、ゾクッとした。

雌阿寒岳下山中
2023.8.6撮影

然別湖をカヤックで向こう岸まで渡った。この日の然別湖は、悪天候のため観光船は運休になっていたが、風はそれほど強くなく、霧が立ち込めて幻想的だった。藪漕ぎして、ナキウサギの生息地へ連れてもらった。マリンシューズを履いていたので良かったが、ぬかるんだ道が続き、倒木を跨いだり、くぐったりしてやっとたどり着いた。平らなスペースがなかった。佐藤圭さんなら重いカメラ機材を担いで、この森の片隅で、どこでどんなふうにして待たれるのだろう?静かに五感を研ぎ澄ましてみた。「ピイッ!ピイッ!」ナキウサギの鳴き声!って、ガイドが目で合図してくれた。警戒心が強いから隠れたままだ。「すぐそこにいるんでしょ‼早く顔見せて!」っと思っていたら、また雨が降り出して、前方が見えにくくなってしまった。レインウエア上下は着ているものの、手は倒木に触れたため、汚れてしまった。ナキウサギにとったら迷惑な話。仕方なく、元、来た道を戻ることにした。自然にあらがわず、敬意を払う心、時間をかけ、相手を深く理解する姿勢を持つことが、最高の瞬間が形になっていくのだと思った。引き返そうとしたその時…、

然別湖周辺
2023.8.7撮影

エゾオコジョに会えた。すばしっこかった。ほんの一瞬目が合った気がした。今は、夏毛だが、冬には真っ白になる。乱獲が原因で、準絶滅危惧種に指定されているとのことだ。写真はどちらもガイドが、スマホで撮ってくれた。北海道の夏は短い。逞しく生きる野生動物達、それを支える自然の豊かさ、地球は、繋がっている。そのバランスが崩れないよう、人と自然が調和していることが大切である。普段の暮らしの中で意識していたい。
『佐藤圭写真集 秘密の絶景 in北海道』を見ていると、自然の中にいざなってくれるようで、心が癒される。視界がすべてオレンジ色に染まる黄金岬の夕陽をいつか見に行きたい。


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