season12 3話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
3.『遵奉の冠』
「っクソ!!」
叫んでとうとう足ダンするチリ。
「チリちゃん……」
怯えるポピー。チリ、頭をかきむしりながら
「……ごめんなあ」
ぴっかりさんとポンさんがポピーのそばによる。気をしっかり持ちなさいよね、と鳴くぴっかりさん。
「ぴっかりさん、ポンさん……」
少しだけ元気の出た様子のポピー。
その様子を見つつ、ヨーコ、みんなに、
「さっき言うとった、遵奉の冠ってなんじゃろ」
「一件だけヒットした。パルデアが帝国だった時に皇帝が持ってた冠だって。帝冠って言うらしい」
スマホの画面をヨーコに見せるボタン。
「でも詳しいことはわかんない」
ペパー、腕を組んで、
「理事長せんせがあそこまで驚くくらいだから、なんかものすごくヤバめちゃんなやつな気がするけどな」
「うん。その後何も言えなくなってたみたいだった。あんなトップ初めて見た……」
ネモため息。
ひとまず二手に別れて冠の調査をすることに。ヨーコ、ぴっかりさん、ネモ、ペパーはレホール先生の元へ。ボタンはキラーメとキラフロル達を連れてチリとポピーとオモダカの家へ(チリが前に話を聞いていた)。
男性陣は告知対策を立てるべく、アオキはリーグに残り、クラベルとハッサクはヨーコ達とアカデミーへ。
*
ボタンチーム、管理人さんに上手いこと言って開けてもらい、何かしらの手がかりがないか探す。同居人らしき何匹かのキラーメが驚くも通してくれる。ボタン達が探す間にことのあらましを仲間達に話すキラーメとキラフロル。驚く仲間達。
キラフロル達の案内で、奇妙な鍵のあるドアの前へ。鍵穴がすりばち状態になっており、首をかしげる3人。と、キラフロルがふよふよやってきて、鍵穴に頭を突っ込みくるりと回転。すると扉が開く。
「ええー、こんなのあり……?」
「わー! キラフロルすごいですー!」
戸惑うボタンに対し素直に誉めるポピー。どや顔キラフロル。
「フロシチウ!」
「さすがというかなんというか……」
チリは(汗)。
ということで入る。いかにも頑丈そうな電子金庫がどーん。
「パスワードいるんか?」
チリが手を伸ばそうとした瞬間、カチリと音がして開く。
「チ、チリちゃん、じつはエスパーだったんです!?」
お目々キラキラなポピー。チリ思わず何も言えなくなってしまうが、ボタンが容赦なく、
「や、うちがハッキングして開けた。時間かかるかと思ったけど、意外と簡単でよかった……」
「わー! かがくのちからですかー!?」
「さ、さすが流星ハッカー……」(汗)
チリ、少し調子が狂うがすぐに気を取り直し、
「いかんいかん、中見んと!」
そして3人で覗き込み、思わずため息。
虹色に輝く結晶をギザギザ型にした上部、色とりどりの宝石に囲まれた下部。そんな形状をした、輝くばかりの王冠があった。
「ん? この形、どっかで見たような……?」
首をかしげるチリ。
*
一方のヨーコチーム。エントランスでレホール先生を捕まえ、なるべく事情を伏せて話す。
「パルデア帝国の帝冠、いわゆる皇帝がかぶっていた王冠だ。名前と形状、及び逸話を描いた記録しか残っていない」
レホール先生、ロトムスマホの画面をいじって見せてくれる。虹色に輝く結晶をギザギザ型にした上部、色とりどりの宝石に囲まれた下部。そんな形状をした、輝くばかりの冠の絵。
「あれ? どっかで見たような……」
「わたしもー」
首をひねるペパーとネモ。ヨーコとぴっかりさんは少し考えて、
「あ!」「ピカ!」
ヨーコ、スクールリュックからバイオレットブックを取り出し、急いでめくって、
「ネモさん、ペパーさん、これ!」
テラパゴスのページを見せる。挿し絵には王冠が!
「あ! そうだこれだ!」
「それに、テラスタイプステラもこんな形のジュエルしてるよね!」
膝を打つペパーとネモ。
「リーグで勝負させてもらった時、すごかったな~」
しみじみ言うネモに、レホール先生の目がキラリ。
「ほう? ならばワタシも、今度災厄ポケモンの調査ついでに勝負してみるとするかな?」
「あの、レホール先生、続きを……」
慌てたヨーコに促され、レホール先生咳払いし、
「まあ偶然の一致か、何らかの理由で見た者がいてそれを参考に作ったか、謎は深まるばかりだな。個人的には後者を推したいが。ククク……」
肩を震わせ笑う。なんか楽しそう。
「それと、帝冠にはひとつ言い伝えがあってな。皇帝の直系の者がかぶると、伝説のポケモンがやってきて、その者に従うそうだ。過去にはガラルに伝わる3体の鳥ポケモンも来たらしいぞ。故に遵奉の冠と言われるわけだ」
「直系?」
ペパーの質問に、レホール先生、
「直接的に親子関係でつながっている系統のことだな。両親、祖父母、曽祖父母その上の世代や、子供、孫、ひ孫、玄孫(やしゃご)がそうだ。ヨーコのように養父母がいたり、養子である場合も該当する」
「なるほどっす」
うなずくペパーの横で、お目々キラキラなネモ。
「すごーい! 戦りたーい!」
「こっちは安定のネモりちゃんだな」(汗)
やれやれなペパー。
「まあ、はるか昔の人間はポケモンを恐れていたからな。皇帝は並みのポケモンどころか強い力を持ったポケモンを従えることができる存在なのだとアピールしたのだろう。しかし……」
レホール先生、ため息。
「しかし?」
聞き返すヨーコ。
「皇帝の直系の子孫は、残念ながら現在は途絶えたとされる。故にその言い伝えが本当かどうか確かめられないというわけだ。まあ傍系はいるがな」
「傍系?」
またまた聞き返すペパー。答えてくれるレホール先生。
「『共通の祖先から横に分かれた系統』のことだ。兄弟姉妹や直系の先祖の兄弟、その親族の子供が該当する」
「あざっす」
ペパー、ぺこり。
「誰なんですかー?」
無邪気に聞くネモ。
「キサマたちもよく知っている人間だぞ」
珍しくもったいぶるレホール先生。
「クラベル先生とか?」
「まさかのレホール先生?」
「セイジせんせ、は確か違ってたな。タイムせんせとか?」
「ピカピカ?」
ヨーコ、すかさず通訳。
「ジニア先生はどう? って?」
口々に答えるが、レホール先生首を振り、
「どれも違う」
ニヤリと笑って、
「オモダカ理事長だよ」
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