season3 13話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
13.『パモさん達の選ぶ道』
期末試験が無事に終わり、とりあえずどこから行こうか考えてると、色鉛筆を切らしていたことを思い出し購買部へ。そこでキハダ先生が色々選んでいた。
「キハダ先生」
「押忍! 転入生! 買い物か?」
「はい! 色鉛筆買いに」
「そうか! 購買部はいいところだよな! 何でも揃っているからな!」
「ほうですよね! 先生は?」
「わたしはサンドウィッチを品定めしているんだ! 購買部のはおいしくて栄養バランスも豊富だぞ!」
「ありゃ、特訓はどうしたんですか?」
「ハハハ、慣れない特訓でちょっと疲れてしまってな! 目標は達成したから、料理はしばらくお休みだ!」
「目標?」
「……ああ、目標というのはな、いつもお世話になっているミモザ先生に恩返しすることだ。優しくて手先も器用で、わたしの憧れなんだ!
近づくためにマネして料理を頑張ってみたが……、人には向き不向きがある! わたしのいいところは元気なところ! そっちに注力することにしたぞ!」
「なるほど」
「授業でも言っただろう? 人もポケモンも、いいところを伸ばしてあげないとな! 転入生には世話になった! 気持ちを受け取ってくれ!」
栄養ドリンクをくれる。
「あ、ありがとうございます」
「さて、今日はどうやってたんぱく質を補給しようかな! 転入生も補給するようにな!」
「はい! ありがとうございました」
色鉛筆で、ふとハッサクのことを思い出し、会いに行くべく美術室へ。ちょうどいた。
「ハッサク先生」
「ヨーコくんではありませんか。あなたはいつも、大事な時にいらっしゃいますね」
「大事な時? 何かあるんですか?」
「実は……」
と、誰か入ってくる。
「ハッサク様、お迎えに上がりました」
ドラゴン使いの女性だった。
「──来ましたか」
表情を固くするハッサク。
「一族の長を継ぐ決意を固められたようですね」
「……そうですね。小生は決めましたよ」
息を飲んでハッサクを見るヨーコ。
「──このアカデミーで、教師を続けさせていただくことを!!」
「ハッサク先生!」
ヨーコ、思わずじーん。
「な、なんてことを……! 一族がどうなってもいいのですか!」
「知りません!!」
動揺する女性に、ハッサク、きっぱり。
「ご覧ください、この部屋の芸術たちを。子供たちが活き活きとその感性を伸ばしています。
一族の古き血を守っていくことももちろん大事なことです。ですがそれよりも、小生は未来に芽吹く才能たちを見届けたい……」
そして晴れやかに笑い、
「ぶっちゃけ、そっちのほうがおもしろそうじゃないですか!」
「……お話になりませんね」
女性は苦虫を噛み潰したような顔になりながらも、
「しかしハッサク様のその豪胆さ……、やはり竜の意志を継ぐに相応しい。私は諦めません。何度でもあなたを説得しますよ」
「ええ、ええ! 来なさい! 根競べは得意ですよ! どうせ父の体調が悪いというのも、小生を説得するための嘘八百の方便でしょうしね!」
「……っ! ではまた!」
図星をつかれたようにそそくさと去る女性。
見送るヨーコに、ハッサクが、
「いやはや、恥ずかしいところをお見せしてしまいました」
「あ、いえ……」
「一歩間違えば、小生、教師を辞して故郷に戻っていたかもしれません……。しかし、生徒たちの姿やヨーコくんの言葉で、断る勇気をいただけました。本当に子供たちには感謝してもしきれませんですね」
「そんな、恐れ多いです」
「いいえ、受けた恩には足りませんが、こちらをお納めください」
テラピースドラゴンをもらう。
「これは……」
「テラスタルしたポケモンが倒れた時、砕けたテラスタルジュエルがまれに結晶化したものです。これを宝食堂にもっていけばテラスタルのタイプを変更する料理を作ってもらえますよ」
ハッサク、一息ついて、
「さて! これからも小生は! 教師という天職を続けさせていただきますよー!」
元気に宣言。ほっと一安心のヨーコ。
そこでパモさんを思い出し、セイジ先生のいる職員室へ。
*
「あ、おりんさった。セイジ先生」
「オー! 親愛なるヨーコ!」
笑顔で迎えてくれるセイジ先生。パモさんは足元にいた。
「あ、パモさん」
「うん! 元気もりもりだよー!」
しかし相変わらず静かに床の隙間の汚れwatchなパモさん。
「HAHAHA! 静かなのもこの子の個性なんだわなー! しかし声出せないと、仲間と意志疎通は難しいね」
「ああ、授業でも言うとりましたね。野生のポケモンは鳴き声で食べ物のありかとか天敵出たとか色々教え合うって」
「そ! だから野生に帰っても、この子ってば仲間とコミュニケーションとれないかも」
やっぱり静かなパモさん。
「うーん……」
パモさんを見るヨーコ。一瞬、あの時のポンさんの顔が浮かんだ。
「ヨーコは、パモさんのいるべきところ、どこだと思うんだろう」
「……セイジ先生!」
「どうしたの? 突然のマイネーム?」
先生首をかしげるが、すぐに気付く。
「──そっか! ワシと一緒にいればいいんだね! 元気に野生に帰すことばかり考えてたから、全然気付かなかったわな」
「ええ!」
うなずくヨーコ。セイジ先生パモさんに向き直り、
「パモさんは、それでもいい?」
パモさん、ややあって、
「──パモ」
静かに、しかししっかりとセイジ先生を見てうなずく。
「え……!」
「パモさん! しゃ、しゃべったー!!」
驚きつつも大喜びのセイジ先生。
「ポケモンの言葉わからずとも、今のは絶対YESだね! 親愛なるヨーコ、サンキューベリベリだよな! お礼ってわけじゃないけど、購買部の名物パンおごるよ!」
「わあ、ありがとうございます!!」
そして購買部で買ってもらう。パモさん、セイジ先生の肩からひょっこり。セイジ先生もにっこり宣言。
「よかった、すこぶる元気だね! 本当に嬉しいよ! パモさんはこれからもワシが責任持ってお世話するでんがなー!」
ニコニコしつつグラウンドへ。
ぴっかりさん達とみんなで食べて部屋に戻ろうとすると、タイム先生がやってきた。
「タイム先生?」
「あらヨーコさん! お元気そうで何よりだわ!」
辺りを見回し、
「あなたも見守ってて! これから例の視線の子を待ち伏せするところなのよ!」
「待ち伏せ!? なしてです!?」
「いつまでも視線だけ感じるのはスッキリしないし、食堂で顔は覚えましたからね!」
と、気配が。
「……ハッ!」
気付き、振り向くタイム先生。ヨーコも同様。
「あなたでしょう! 最近わたしを見ているのは!」
近くの木の陰から、あの女生徒が。
「た、タイムさん!? どうしてわかったんです……!?」
戸惑いながらも近づく生徒。
「す、すみません! 気付いてらっしゃったんですね」
「そりゃあ、四六時中見られたらね! 何か私に聞きたいことがあるんじゃないですか!?」
問い詰めるタイム先生。なだめるように声をかけるヨーコ。
「タイム先生」
「は、はい……」
女生徒、うなずき、
「──わたし、ジムリーダーのころからタイムさんの大ファンで! いわ技すっごく好きで!!」
「あら」
目を丸くするタイム先生。フリッジタウンでの話を思い出すヨーコ。
「でも1年半前、突然引退しちゃって……。どうしてやめちゃったんですか?」
「……なあんだ、そんなことが聞きたかったの」
胸を撫で下ろすタイム先生。
「タイムさんの引退理由は、公式に発表されてませんし、質問してもはぐらかされたって、生徒の間でも噂になってて……」
うつむく女生徒。
「タイムさんが言いたくないこと、聞くのは失礼かもって……。だから勇気が出なくて……」
「それでドキドキ熱視線を……。ごめんなさいね」
「え、ドキドキ……?」
(汗)な女生徒とヨーコ。
「あ、ううん……。やめた理由はね、もっと先生に集中したかったからなの。ジムリーダーが嫌でやめたわけじゃないから……」
少し悲しそうな顔になるタイム先生。
「ジムのこと話すと、懐かしくて寂しくなっちゃう。だから、生徒の質問はぐらかしちゃってたのね」
「そうだったんですか……。ジムリーダーに戻ったりはしないんですか?」
「ええ……、戻らない。今は妹が、ジムリーダーをきちんとこなしてくれてます。姉の私は、今先生が一番楽しいの」
タイム先生にっこり笑って、
「だから、タイムさんじゃなくてタイム先生って呼んでくれたら、先生とっても嬉しいわ」
「はい。残念ですけど……、納得しました! ありがとうございます! タイム先生!」
「これにて一件落着ね」
女生徒、何度もお礼言って立ち去る。
「よかったですねえ、タイム先生」
「あー、緊張した! いっぱいカッコいいこと言っちゃった!」
はしゃぐタイム先生。
「ドキドキ熱視線に気づいた時はちょっと怖かったけど……、あなたがいてくれたから、ファンでいてくれたあの子とちゃんと向き合えたわ。いっつもいいとこに出くわすヨーコさんに感謝ね」
そしてテラピースいわを渡し、
「はい、先生からのちょっとしたお礼よ。冒険に役立ててほしいわ」
「ありがとうございます!」
*
一件落着し、医務室を通りかかると、生徒達に励まされながら勉強中のミモザ先生。
静かに離れるヨーコ。お風呂から上がると、ペパーから連絡が。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?