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season6 17話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

17.『無声慟哭』


 ヨーコ、息を切らしながらも、わっぷるさんとツノじろうを戻して無言で礼を示す。

「えっ……、え?」

 呆然と後退りするスグリ。ギャラリーは幻滅。

「なーんだ、負けちゃったよ」
「……行こうぜ」
「留学生の方がよっぽどすごいじゃん」
「ポケモン達もいい目してるしな」
「ねー」

 口々にぼやいて去っていく。それを目で追うスグリ。

「なんで、どうして……、こんな、はずじゃ……!」

 スグリ、頭を抱える。

「ううう……! ハァ……、ハァ……!」

 息が荒くなり膝をつく。

「どっちもがんばった! 感動した!」

 明るく言ってくるアカマツ。

「アカマツくん! 空気読んで!」

 アカマツの肩を叩いてたしなめるタロ。ネリネは辛そうにうつむく。そんな中、歩いてくるカキツバタ。

「ちょ、ちょっと……!」

 タロの制止も気にとめず、

「おふたりとも、お疲れさーん」

 両手を広げ、スグリに近づき、

「残念だったねい」

 皮肉たっぷりに囁く。

「元、チャンピオン」
「やめたげてつかあさい、カキツバタさん」

 止めるヨーコ。冷静な顔。カキツバタ、すぐに納得した様子で、

「ヨーコに言われちゃ、しょうがないねぃ」

 嘘か本当か納得顔。

「というわけで、やったな、キョーダイ! 今からヨーコがブルベリーグの新チャンピオンだ」
「ありがとうございます」

 ヨーコ、頭を下げるもオモダカ達に祝福してもらった時と心中で比べてしまう。

「チャンピオンになったやつには、学園からお祝い品がもらえんの。あずかってっから渡しとくぜぃ」

 マスターボールをくれた。

「あ、どうも……」

 カキツバタ、スグリに振り向き、

「……スグリよう」

 スグリ、うずくまったまま。

「オマエに勝てなかったオイラが言うのもなんだけどよ」

 カキツバタ、真剣な声色。

「──前みたいに、楽しくやろうや」

 ヨーコも真剣な顔でスグリを見つめる。

「勝ちにこだわれんのはすげえいいことだ。誰だって勝ちてえは勝ちてえ。でもよ……、拘りすぎて自分の首しめんのは、違うだろ。……見てるこっちが苦しいぜ」

 ふっ、と微笑み、

「だからよ、また、みんなで……」
「……けない」

 つぶやくスグリ。

「はい?」

 きょとんなカキツバタ。ヨーコも目を見開く。
 スグリ、よろけながら立ち上がる。

「負けない……。こ……、今度こそ、俺が……」

 何かに取りつかれているような雰囲気。

「勝って……、次こそ……、絶対……」
「スグリさん」

 思わず声をかけるヨーコ。
 はっ、としてヨーコを見るスグリ。ヨーコ、悲しげな目。

「ごめんなさい。あんたをこがあにしてしまったんはうちじゃ。──本当に、ごめん」
「ヨーコ……、俺……、おれ……。う、ううう……」

 頭を下げるヨーコにも、スグリ、すぐにうつむいてしまう。

「あーあ」

 カキツバタ、思わずため息。と、

「あのー……、ちょっとー、よろしいでしょうかー?」

 タロが入ってくる。アカマツとネリネも一緒。

「タロさん」
「ええと……、まずはヨーコさん、チャンピオンおめでとうございます! 本当にすごかったです!」

 明るく言ってくれるタロ。ヨーコもぺこり。

「ありがとうございます」
「普通ならお祝いしたいんですが……」

 タロ、眉を下げる。

「今の……、この状況はわたしたちには複雑で、ちょっと整理しないとなんです……」
「整理ぃ?」

 聞き返すカキツバタ。

「だって、そうでしょう!」

 憤るタロ。

「ヨーコさんがチャンピオンになったら、リーグ部の部長ってことで、留学生でこっちにいるのは半年間なのに今後の方針はどうするのとか!? あれとかこれとかとかとかいろいろ!!」
「お、おう……」

 思わず圧されるカキツバタ。

「それに、スグリくんがチャンピオンから四天王に降りてくるなら、ランク的にはアカマツくんが都落ちだし」
「えっ、オレそうなの!? ヤバいじゃん!」

 アカマツがっくし。

「四天王じゃなくなったら、サバンナスクエアの四天王スペース使えなくなるから困るよー!」

 タロ、やれやれと首を振り、

「──スグリくんがどうしたいか、ちゃんと気持ち、聞いておかないと……」

 未だ黙っているスグリ。

「スグリ……」

 ネリネ無表情だが、目には心配の色。
 と、
 ディンドンダンドーン♪

『放送室より生徒のお呼び出しです。リーグ部チャンピオン、スグリさん、四天王トップ、カキツバタさん、3年2組、ゼイユさん、交換留学中の北條陽子さん、ブライア先生とお客さまがお待ちです。1-4の教室まで、至急いらしてください』

ドンダンドンディーン♪

「もう、なんだってこんなときに……」

 タロ、怒りのため息。カキツバタはどこ吹く風で、

「スグリはもうチャンピオンじゃないのにねぃ」
「カキツバタ! そ・う・い・う・の! よくないと思います!」

 バッテンマークのタロ。

「ブライア先生案件なら、すっぽかすと後が面倒だ。ヨーコは先行っといてくれい。スグリのやつは、オイラがおぶってでもつれていくからよ」

 カキツバタが言っても、苦しげに呻いて反応のないスグリ。
と、

「ヨーコ」

 ゼイユがやってきた。

「ありがと……。スグのことは気にしないで」
「ううん、そんな」
「ネリネからも感謝を告げます」

 ネリネも一歩前に出る。

「ヨーコ……、ありがとう」
「ネリネさん……」
「チャンピオン戦勝利おめでとうございます! ……って、手放しでお祝いできずごめんなさい」

 詫びてくれるタロ。

「タロさん……」
「呼ばれてんのは1-4の教室だっけか? キョーダイは先行っといてくれーい」

 カキツバタ、軽く言う。

「さ、殊勝にも頭フワ男がこう言ってるんだから、ブライア先生のとこ行かないとね」
「……うん」

 ヨーコ、静かにうなずく。



 部屋でみんなを休ませ戦いのことをぴっかりさんに伝える。ぺちりと軽くはたいて鼓舞してくれるぴっかりさん。

「ありがとう」

 廊下を歩いていると、久夫を初めとした生徒達が口々に声をかけてくれる。

「スグリくんとの勝負、見たよ! スグリくん……、悲しそうだったね」
「チャンピオン戦すごかった! スグリは四天王に落ちるのかな?」
「あなたって見かけによらずポケモン強いのね」
「カキツバタにも勝ったあのスグリくんが負けるなんて……」

 曖昧なことしか言えないヨーコに、久夫が助け船を出してくれた。

「勝負すごかった。おめでとう、でええんか、ヨーコ」
「うん」

 色々話して少し軽くなるヨーコ。廊下でみんなと合流し、1-4に入る。

「失礼します」
「どもっすー」

 ヨーコとカキツバタ、挨拶する。

「やあ、皆、来てくれたようだね」

 ブライア、にっこり笑う。

「本日、君たちに素敵なゲストが来てくださっているよ」
「お客さん?」

 聞き返すヨーコ。

「ただ……、入れ違いで校内見学に向かわれてしまってね。すぐに帰ってこられると思うので、先に私から話しておこう。とりあえず座ってくれるかな」

 カキツバタ、のんびりと嬉しそうに、

「イスだイスだ、あーありがてえ」
「ジジくさーい」

 ツッコミつつも席につくゼイユ。ヨーコとスグリもそれに続こうとすると、

「ときにヨーコくん!」
「はい」
「君がブルベリーグを勝ち進んでいるとは聞いていたが」

 ブライア、にっこり。

「まさかチャンピオンにまでなってしまうとは驚きだ! かがやかしい功績だね!」
「──どうも……」

 軽く会釈をするヨーコ。スグリは黙っている。

「あの! 先生! そういうのいらないんで、本題に入ってくれます?」

 ゼイユが空気を読んでくれる。スグリ、黙って席につき、ヨーコもうなずいてそれに続く。
 ブライア、少し目を見開き、

「……すまない、配慮に欠けていたね」

 一応詫びる。気を取り直し、

「それでは、単刀直入に話そう。君たちは、私と……」

 ヨーコ達を見回し、

「エリアゼロと呼ばれる秘境を、ともに探索してほしいんだ!」
「エリアゼロ!?」

 息を飲むヨーコ。

「エリアゼロって……、先生が行きたがってた、パルデアの!? 許可下りたんだ!?」

 ゼイユびっくり。

「テラスタル現象の調査、そして結晶の採取が主な目的ではあるが……」

 ブライア、いったん言葉を切り、

「欲を言えば、エリアゼロで眠っているエリアゼロのポケモン……、テラパゴスを私たちで見つけたいと思っている!」
「伝説……?」

 反応するスグリ。

「テラ……パゴス?」

 と、

「ずいぶん楽しそうなお話ですね」

 誰かが入ってきた。
 その姿に目を見開くヨーコ。

「オモダカさん! 先に始めていましたよ」
「お待たせしてすみません」

 姿を現したのは、オモダカとチリ(めんせつのすがた)だった!

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