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酒涙雨(さいるいう)

この雨の音、雨の線、

緑に映える色の無き水音を

例えば、男が夢想する娼婦性に例えた作家が居ればこそ

かの娼婦の如き無垢なる女も

乙女の如き邪まな計算高い女も

全てが靄った景色に溶けて

一人称たるわたしすら

最早 自己の本質を掴めず

掴みたくもなく

足掻いて取り乱し

その結果

無残であろうと

ことの本質を情動を知るべく

こんなツマラナイ夜は

ひたすら

鏡に向かって流し目など作り

嫣然と微笑むという

無為なる時に

逃げるに限る

猫が戻って来た

おや?お前は雨の匂いがするじゃあないか

おかえり

お前は愛しいあの子に逢えたのか



酒涙雨(さいるいう)

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