鎮まれ右腕。
ファニーボーンというものをご存知だろうか?
肘の内側の先端に衝撃があると痺れるような痛みが走るアレである。
僕がファニーボーンを知ったのは小学生の時だ。
友達が「ちょっと肘出して」と言ってきたので、
僕は何の躊躇いもなく右肘を差し出した。
すると友達は僕の右肘内側の先端にデコピンを決めてきた。
雷に打たれたかのような衝撃が走る。
痛みに耐えながら脳裏に殺意が走る。
爆笑する友達。
なぜこの様な暴挙に出たのか。
友達だと思っていたのに。
曰く「昨日テレビで見たから試してみた」らしい。
末代まで許さないと誓った。
ともあれ当時10年も生きていない僕にとって、
身体に電流が走る様な体験は初めてだった。
たしか人間には微弱な電気が流れていて、
その電気信号を神経が脳に伝達して、身体を動かしていると、先生が言っていた気がする。
授業で先生の話していたウンチクを、
こんな形で体験することになるとは思わなかった。
こんな貴重な体験をさせてくれた友達には、
渾身のファニーボーンをプレゼントした。
少しは気が晴れたので、先程の愚行は水に流すことにした。
初体験のファニーボーンから20数年の月日が流れ、
また僕の肘にかつての衝撃が走った。
通勤電車から降りた僕はおじさんにぶつかった、
形容し難い痛みが、またしても右肘に走った。
異常に痛い。
ちょっとシャレにならないくらい痛い。
ビリビリと指先が痺れる。
小刻みに腕が震えている。
鎮まれ右腕。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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