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勇者のお仕事1巻【旅立ち編】

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#ファンタジー小説

19話 もう一つの約束3

19話 もう一つの約束3

19話 もう一つの約束3

「ーーお前はッ?!」

 人影の姿を見たカインは驚きの声を上げた。

「よう。久しぶりだな、カイン」

「イークじゃないかっ!」

 片手をあげ人懐こそうな笑みを浮かべて彼の名を呼び、カインもまた嬉しそうに笑う。
 ダガーを懐にしまい互いに再開の握手を交わした。

「お前、どうしてここに?」

「ハンターの情報網(じょうほうもう)、舐めるなよ」

 そう言うイークは親指

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18話 もう一つの約束2

18話 もう一つの約束2

18話 もう一つの約束2

 ――カインは早朝にタドット村に戻る事にした。行きは深夜だったために獰猛(どうもう)な動物や魔物の姿があったが、陽がのぼると同時に彼等は静まり返っていた。

 村に着くや否や、心配で仕方がなかったと言う表情を隠しきれていない村長のイワフから熱烈な抱擁を受け、事のあらましを伝えた後、ゴブリンによる『畑あらし』も無くなり村長同様村人にもようやく安堵が訪れた。『宴』をしたいと

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17話 もう一つの約束1

17話 もう一つの約束1

17話 もう一つの約束1

「…もうワシ等はここにはいられないからな」

 モンテロウは賊の手下達に、ゴブリンの解放を指示すると必要最低限の荷物を持ち出立間際にカインにそう言った。

「まあ、俺もそうなんだけどな」

 山賊どもに捕らわれていたゴブリン達を背にし、照れ隠しに頭を掻くカイン。

「ーーワシと手下どもを助けてくれた『礼』がまだだったな」

「…お互い様じゃねぇの、そこは」

 と、柄に

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16話 対峙2

16話 対峙2

16話 対峙2

「…ケンカでもしたか? 新しい騎士団長さん」

 カインは余裕な笑みを見せ、ロウファからの攻撃を弾き返す。その反動でロウファが体勢を崩し数歩後ずさる。そのわずかな隙を逃さないカインはダガーを翻し、縦横無人に攻め立てる。

 ロウファもまた槍を両手に持ちカインからの猛攻を柄と刃で受け止めた。

(…戦い慣れしてるな。まあ、ジャスティス同様、騎士学校にいたくらいだからな。とは言えーー

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15話 対峙1

15話 対峙1

15話 対峙1

(…おいおいおいおい。どうするよ、この状況……)

 拠点内が見下ろせる岩肌で身を隠しているカインは戦場と化した賊の拠点を焦りつつもただ静かに見ていた。

(俺が加勢すべきか…それとも見過ごすか…)

「ええいッ、クソがァ!!」

 カインは低く呻いてその場から素早く姿を消した――

 ――モンテロウは、手足を大きな丸太によって縛りあげられて身動き取れないでいた。

(…カイン…

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14話 ディザイガの新騎士団長

14話 ディザイガの新騎士団長

14話 ディザイガの新騎士団長

「そうと決まったら少し寝かせてくれるか?」

 ゴブリン族が住まう小屋の中。

 集落のリーダーであるシュマテャと焚き火を囲んでいたカインは、タドット村とゴブリン族の【困り事】を引き受けたはいいが今はもう真夜中を過ぎている。流石に睡魔に襲われてきた。

「…オ、オオ、ソウダナ」

 その場でゴロンと横になるカインの姿を目の当たりに、シュマテャは丸い瞳を更に大きくし

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四章13話 カイン2

四章13話 カイン2

13話 カイン2

「…さて。どうしようかねぇ」

 ディザイガ城北門から東西に伸びる山道でジャスティスと二手に別れたカインは、全力で走ってきた道でふと立ち止まり来た道を振り返りつつ一人呟いた。

(…『あっち』は比較的 魔物(モンスター)が少ないし途中村もあったから四、五日あれば港に着くだろう)

 と、懐から地図を取り出して別れたジャスティスの進むべき道を目で辿る。

 ――城からは兵士等が追

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12話 冒険は常に命懸け

12話 冒険は常に命懸け

12話 冒険は常に命懸け

「……え…?」

 外に出たジャスティスは村の違和感に思わず声を洩らした。

(…誰も…、いない……?)

 ――そう。

 村には、来た時とは違い『誰も』いなかった。

 それは人だけではなく、家畜である山羊(やぎ)や鶏ですら姿がないのだ。

「…どう…、して……?」

 ジャスティスは困惑と呆気に取られたような複雑な顔をし、戸惑いながら目を瞬かせる。

 老人宅から

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11話 その村の名は

11話 その村の名は

11話 その村の名は

 ――ジャスティスはまたファルフォム丘道を東に進む。朝日が目の前にあり少し眩しいくらいだ。

「…いつになったら港に着くんだろ」
 ある程度の舗装された道を眺めつつひたすら歩く。太陽が頭上に来る頃ジャスティスはその村に到着した。

 丘道を登りきったあたりの丘の中腹にシエンタ村はある。

「こんな所にも村があったんだ…」
 村の簡素な木の門をくぐるジャスティス。辺りを物珍し

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